Chair's Message
令和8年度 土木学会全国大会を迎えて
「インフラを市民の手に〜共創が拓くインフラの未来〜」

- 岡下 淳OKASHITA Atsushi
- 令和8年度土木学会全国大会実行委員会
- 委員長
- (国土交通省 北海道開発局長)
令和8年度土木学会全国大会を8月31日(月)から9月4日(金)までの5日間、北海道札幌市で開催いたします。北海道での開催は平成30年に札幌市で開催して以来8年ぶりとなります。
北海道は、カロリーベースで全国の約24%を占める高い食料供給力や旅行者を魅了する四季折々の観光資源、カーボンニュートラルに貢献する豊富な再生可能エネルギーなど高いポテンシャルを有しています。
これら多くは「生産空間」と呼ばれる地方部に存在しており、そこに住み続ける、そこに行くというリアルを前提に、先人たちの手によるさまざまなインフラに支えられて成立しています。
近年、地球温暖化による気候変動の影響が顕在化していますが、ここ北海道においても昨年9月の初めて線状降水帯が発生した大雨、昨年2月の帯広市における12時間降雪量が国内観測史上最大となる120cmを記録する大雪など、災害が頻発化・激甚化しています。
気候変動による影響については、北海道の降雨量の増加が全国に比べても大きいと予測されており、洪水時の流量がより一層増えることが懸念されます。また、近年の降雪は、「局所化」、「頻発化」が顕著になってきており、過去の記録を塗り替えるような大雪を観測することが増えています。
さらには、巨大地震および最大クラスの津波の発生が切迫しており、千島海溝・日本海溝周辺における海溝型地震への対応など、適切な対応を行わなければ、社会経済システムが機能不全に陥る恐れがあり、間断なく対策を進めていく必要があります。
北海道では、人口減少と少子高齢化がいち早く進んでいます。担い手が不足していく中、激甚化する気象災害や巨大地震への対応 、加速するインフラ老朽化など多くの課題に直面しており、こうした状況に対し、市民が主体的に地域課題の解決に参画できる共創による仕組みづくりが不可欠となっています。
さらに、デジタル技術やオープンデータの活用により、イノベーションを創出し、新たな社会を創造していく必要があります。
第9期北海道総合開発計画では、地方部に存在する「食」、「観光」、「脱炭素化」という北海道の強み・価値を生み出す「生産空間」を守り、安全・安心に住み続けられる強靱な国土づくりに取り組むことを掲げています。
計画の実効性を高める方策のひとつとして、国、地方公共団体、住民、NPO、企業、教育機関などとの連携・協働の促進を図り、官民の垣根を越えた「共創」により、地域の課題を解決することとしております。
本大会では、「インフラを市民の手に~共創が拓くインフラの未来~」をテーマとしております。最新の研究成果による活発な議論が展開され、これまでの歴史を振り返りつつ、インフラの未来に、世界に向けて日本の土木が担うべき役割を考えるきっかけとなる大会になりますことを期待します。
この大会テーマも踏まえ、小澤一雅会長による基調講演では、「インフラを市民の手に」と題してお話をいただきます。特別講演では伊藤亜由美氏(CREATIVE OFFICE CUE 代表取締役)より「ストーリーあるプロデュース~北海道におけるヒト、モノ、コト、地域創り」というタイトルでご講演いただきます。
北海道では、国内外で経験を積んできた土木技術者や、札幌農学校で土木を学んだ学生らが、積雪寒冷地という厳しい条件の下でインフラの整備を進め、これまで、治水、防災、 交通・物流、農林水産や観光を支える基盤整備など、わが国の土木技術の進展においてさまざまな役割を担ってきました。
土木学会では、平成12年(2000年)から歴史的に価値ある土木構造物を貴重な財産として後世に伝えようと「選奨土木遺産」を認定しており、これまでに北海道内では57件が認定されております。
記念すべき第1回に認定された土木遺産の1つは「小樽港北防波堤」(明治41年(1908年)完成)です。これは、「日本近代港湾建設の父」とも称される廣井勇が手掛けたもので、完成後100年以上を経た今なお、建設当時からの姿で小樽の港を守り続けています。
パネル展示や見学会、映画会では、こうした土木遺産で使われた技術の紹介を通じて、大会に参加する研究者、技術者だけでなく、広く学生、市民の皆さまにも興味をもって見ていただけることと思います。
大会の合間や前後には、ぜひ本物も見て先人の技術とチャレンジ精神を感じていただきたいと思います。
開催地となる札幌市は、明治2年(1869年)に開拓使によって本格的な街づくりが始まり、以来、北海道の政治、経済、文化の中心地として、都市機能の高度化と自然との共生を両立させつつ、四季の多様性を生かした暮らしと産業を育んできた都市です。
会場となる「札幌市教育文化会館」は市内中心部大通公園の西側に隣接している、芸術文化活動の拠点施設です。また、「北海学園大学豊平キャンパス」および「北海商科大学」は、豊平川にほど近く、豊かな自然環境の中、地下鉄東豊線「学園前」駅直結と札幌都心からの利便性も非常に高く、約7,000人の学生が学んでいます。
本大会は、土木学会の7つの研究部門が一堂に会する唯一の機会であり、最大かつ最重要行事です。
全国から一人でも多くの学会員に参加いただき、学術・技術の研さんを積んでいただくとともに会員相互の交流、情報交換を通じて、実り多い大会になりますことを祈念し、土木学会全国大会(北海道大会)の開催にあたってのご挨拶とさせていただきます。
