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[III-OR33-01]QRS-T Angleが示す小児心筋炎の未来:ECMO導入率とPICU滞在日数における予測的価値

鹿島田 渉1, 森本 健司1, 吉田 周平1, 佐野 海斗1, 三森 宏昭1, 木下 彩希1, 山田 浩之2, 渡邉 伊知郎1, 大崎 真樹1, 前田 潤2, 齊藤 修1 (1.東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部 集中治療科, 2.東京都立小児総合医療センター 循環器科)
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Keywords:

心筋炎,QRS-T Angle,ECMO

【背景】心筋炎における心電図変化は予後予測因子となる。QRS-T Angle(QT-A)の拡大は成人では予後不良と関連するが、小児心筋炎での有用性は十分に検討されていない。【目的】QT-Aと心筋炎の臨床経過の関連性を後方視的に検討する。【方法】2011-2024年に当院 PICU に入室した心筋炎患者の患者背景、入室時心電図、臨床経過を後方視的に解析した。12誘導心電図の自動解析によるfrontal QT-Aを用い、100°以上/未満で高値群(H群)/低値群(L群)に分類した。初回心電図が非洞調律、新生児、先天性心疾患合併、川崎病、慢性心筋炎は除外した。両群間で体外式膜型人工肺(ECMO)率、PICU滞在期間、致死性不整脈(FA)率、転帰等をFisherの正確確率検定、t検定、Mann-Whitney U検定を用いて比較した。【結果】対象は H群 5例(男3):L群 13例(男6)の18例で、QT-AはH群 162±9.67°:L群 54.1±27.1°(平均±標準偏差、以下同様同順)であった。QRS時間 117±13.2:81.7±12.8ms(p<0.01)と差を認めたが、補正QT時間、ST上昇率、左室駆出率、乳酸値、トロポニンT値に差はなかった。ECMO率は80.0%(4/5):15.4%(2/13)(p = 0.02)で、導入契機はH群ではポンプ不全(PF)3例、FA2例、L群ではPF 2例であった。PICU滞在期間や心室頻拍発症率に差はなく、死亡退院は60%(3/5):7.3%(1/13)(p=0.04)とH群で高かった。【考察】QT-Aの拡大はECMO導入率および死亡退院率と相関した。また、FAを伴うECMO例との関連も示され、QT-Aの拡大と不整脈死との関連を示した既報と同様に、本検討でもFAの予測因子となる可能性が示唆された。QRS時間にも群間差を認めたが、120ms超の症例はH群の2例のみで、予後予測の指標としてはQT-Aの方が有用と考えられた。【結論】QT-Aは小児心筋炎における予後予測因子として有用である可能性があり、さらなる大規模研究が必要である。