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[学校保健体育-B-01]エージェンシー概念の実践化プロセスの解明(教,政)中学校保健体育教師が直面した課題に着目して

*Kohei Kusatsu1 (1. Ikisa elementary school)
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OECD “Education 2030”で提唱された「エージェンシー」は、未来を見据えた学びの方向性として衆目を集めている。だが、体育の授業においてその概念がどれほど実現されているかについては、現場レベルでの導入には依然として困難が伴っている。本研究では、中学校保健体育におけるエージェンシーの実践化プロセスを明らかにすることを目的に、同概念に初めて触れた3名の教師に対し半構造化インタビューを行い、SCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて質的分析を行った。
 その結果、教師たちは共通して、①エージェンシーを抽象的かつ難解なものと捉えながらも、②既存の実践と接続可能な点(AARサイクル、役割分担、権限の譲渡、振り返り等)を手がかりに導入を試み、③一部の生徒における変容を通じてその意義を実感していた。さらに、教師自身も授業実践を「言語化」する過程で、エージェンシーの再解釈と授業構成の再設計に至るなど、受容・適用・再構成のプロセスを歩んでいた。
 本研究は、教育概念の実装において「教師自身の納得解の獲得」や「既存実践との媒介的接続」が重要であることを示唆する。今後は、教師の現場知を尊重しつつ、教育概念の「翻訳」と「内在化」を支援する仕組みの構築が求められるだろう。

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