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[本部企画-S2-2]Is “Success” the only right answer?Nonlinear science of skill acquisition

*Masahiro Okano1 (1. Kobe University)
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<演者略歴>
東京大学大学院総合文化研究科、修了。博士(学術)。立命館大学グローバル・イノベーション研究機構、同大学総合科学技術研究機構、日本学術振興会特別研究員を経て、現職。専門は、認知科学、パフォーマンス科学。
「非線形科学」とは、物理学や数学のいわゆる「複雑系」「カオス」などの研究に端を発する領域である。非線形科学ではしばしば、システムの構成要素が相互に作用し合うことを通して、複雑でありながら秩序だった振る舞いがシステム全体として生じるという現象(パターン形成、自己組織化)が扱われる。
 人間(他の生き物も)の身体運動も言うまでもなく、筋骨格系、神経系、呼吸器系、循環器系、内分泌系、さらには外部環境といった、相互作用し合う構成要素からなるシステムである。したがって、身体運動が「うまくいく」とは、これらの要素間の相互作用の結果として、システム全体が、目的を果たすのに適した振る舞いをしている状態と言い換えることができる。
 非線形科学というメガネを通して熟達化のプロセスを眺めると、熟達化とは身体・環境システムが現在示している秩序が、さらに目的に適した別の秩序に移り変わる過程だという捉え方ができる。この秩序が移り変わる過程では「臨界ゆらぎ」という、システムの状態が不安定になる局面が観察されることが知られている。
 これらを踏まえると、既存の秩序を維持し続けようとする、すなわち「うまくいく」状態を維持し続けようとすることは、長期的に見て正解といえるのだろうか、という疑問が湧く。このような観点から、冗長性・不可視性を手がかりに、身体性について議論を深めるきっかけとなる話題を提供できれば幸いである。

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