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[スポーツ文化-B-10]嘉納治五郎は絞技と関節技をいかに考えていたか(人)

*Ikuko Inagawa1,2 (1. Nippon Sport Science University, 2. All Japan Judo Federation Medical Science Committee)
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柔道は、嘉納治五郎(以下「嘉納」)により、柔術から危険な要素を取り除き教育に活かせるよう再編、創出されたものである。一方で嘉納は、柔道の武術性も重視し、殺傷の技術としての柔道を放棄することはなかった。嘉納は、危険度の高い当身技については「形」にいわば封印したが、固技から絞技と関節技を排除することはしなかった。嘉納は「咽喉を絞めて一時気絶することがあるを嫌うものがあれど、活さえ入れれば、すぐ平生の通りになるもの」「関節の傷んだのは内臓に故障が出来たのと違い、療治をして少し注意さえすれば、癒るもの」と述べる。さらに嘉納は「絞業〔ママ〕の場合は実際絞っているのに合図をせぬことがあり、関節業〔ママ〕の場合にもそれ以上我慢すれば怪我をするという場合に、合図がなくも審判者の見込で勝負を決定することが出来るようにしてある」と述べ、「見込」による勝負判定を是とし修行者の安全に配慮している。また嘉納は「固勝負」について、投技と異なり「負け方の修行をことさらにする必要がない」と述べている。つまり、柔道修行者は、投技への対処として「受身」を習得するが、固技については「負け方の修行」に相当するものがないと主張する。本研究では嘉納による絞技や関節技に関する言及を手がかりとしながら、嘉納がこれらの技術に対しどのような思想を持っていたかについて考察した。

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