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[スポーツ文化-B-12]蹴鞠未経験者を対象とした「蹴鞠技術習得」までのプロセスに関する研究(人)

*Koya Ara1 (1. National Institute of Technology, Asahikawa College)
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これまでの蹴鞠研究は渡辺融氏、桑山浩然氏の「蹴鞠の研究-公家鞠の成立-」によってまとめられている。そこには貴族の蹴鞠「公家鞠」が成立した背景やその技術、施設・用具といった全体像が記されている。大衆の蹴鞠「地下鞠」についても村戸弥生氏が外郎右近政光著『中撰実又記』を翻刻したことによって町人層が愛好した蹴鞠の様態も明らかとされた。貴族と大衆によってその技術構造が異なることは蹴鞠の特徴であるが、蹴鞠技術を身につけるまでの記録や研究は蓄積されていない。そこで本研究の目的は、蹴鞠未経験者が蹴鞠技術の習得するまでのプロセスを明らかにすることである。まず、紙風船のような特徴的な構造を持つ蹴鞠の持ち方について。蹴鞠の「ふくら」と呼ばれる部分を押しつぶし、蹴鞠を蹴り上げる前に鞠が変形する事象が多く現れた。蹴鞠の「とり革」と呼ばれる突起を掴む変形させない持ち方指導と鞠構造の理解は、鞠を蹴り上げる以前に必要不可欠であった。次に、蹴鞠を持ち自ら蹴り上げる「1足目」では、鞠を手から大きく投げ上げ足を振る様子が見られた。蹴鞠は110-120gとサッカーボールと比較しても軽いため、屋外で実施される蹴鞠は風の影響も受けやすく投げ上げた鞠は揺れ動くことになる。さらに目測の難易度も上がるため1足目が右足に当たらない。鞠は胸の前で肘をやや伸ばした状態で抱え、鞠を離すのみ。落下地点に足を送り込むことで安定した1足目となった。また、サッカーのリフティングのように足の甲で鞠を捉える様子も多く見られた。表面積の大きい足の甲で鞠を捉える蹴り方では、紙風船構造の蹴鞠は凹みやすい。足のつま先、つまり点で捉えることによってこの凹み問題は解決することができた。このように蹴鞠技術習得にはまず、蹴鞠の「鞠」構造に関する知識・理解が必要不可欠であり、蹴鞠技術書に記載されている内容を元にした技術習得も有効であることが明らかとなった。

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