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[競技スポーツ-A-17]栗山英樹監督のコーチングにみるアスリートセンタードと4つのコーチングアプローチの統合的活用(哲,コ)

*Nao Sato1, Shigeki Sarodo2 (1. Nippon Sport Science University Graduate School, 2. Nippon Sport Science Univ.)
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選手の自律性・人間的成長を促すアスリートセンタードコーチング(ACC)は、現代コーチング学で重視される (Kidman, L. 2005)。ACCは選手の主体性を尊重し、「指示・提案・質問・委譲」の4つのアプローチが有効とされる (Kim et al., 2021; Mesquita & Rosado, 2023)。特に「質問・委譲」は内発的動機付けとパフォーマンス向上に寄与する (Mageau & Vallerand, 2003)。本研究は、日本プロ野球で顕著な実績を持つ栗山英樹監督のコーチングを、ACC理念と4つのアプローチから分析することを目的に進めた。栗山氏は、日本ハムでリーグ優勝・日本一、侍ジャパンでWBC世界一を達成した。彼のコーチング哲学は、コーチング理論と実践の橋渡しとなる貴重な事例であり、Côté & Gilbert (2009) のコーチングの有効性にも資する。本研究は、成功事例を理論的枠組みで解明し、普遍的・実践的知見獲得を目指す。 本研究は文献研究法を採用する。主要分析対象は、栗山氏の『監督の財産』(栗山, 2024)と『栗山ノート』(栗山, 2019)である。これらの著作に対し質的記述分析を適用し、栗山氏の言動・思考プロセスから、4つのコーチングアプローチ活用事例、ACC理念に合致するコーチング哲学を抽出する。特に、選手の内発的動機付けや主体性を引き出す「質問」や「委譲」アプローチに焦点を当て、その実践的意義を深く掘り下げる。  本研究で得られる知見は、栗山氏の成功が現代コーチング学の理論的枠組みと深く関連することを実証し、理論と実践の乖離を埋める一助となる。彼のコーチングが選手の主体性を育み、チームパフォーマンスを最大化した過程を示すことで、スポーツ指導者に対し、多様なコーチングアプローチとコーチング哲学の重要性に関する具体的な示唆を提供する。

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