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[14介-口-06]高齢者の日常生活・社会活動と嚥下機能との関連
*Eri Fujita1, Shiho Hiraku2, Kikuko Yokozawa2 (1. Teikyo University, 2. Tokyo Woman’s Christian University)
人生100年時代を迎え、高齢者の生活の質向上に向けた健康維持・障害予防の実践的手法の開発が求められている。本研究の目的は、高齢者の日常生活や社会活動が嚥下機能に与える影響を明らかにすることである。嚥下機能低下は食事の困難、意欲低下、疾病、生活の質の低下を引き起こす要因であり、予防的介入の必要性が高まっている。しかしながら、嚥下機能と社会活動、特に会話・運動・趣味活動などの関係を検討した研究は少ない。本研究では、東京都内の高齢者140名を対象に質問紙調査を行い、有効回答135名(平均年齢77.3±6.1歳、男性49名、女性85名)を分析した。嚥下障害リスク評価尺度(深田ら)を用いて評価した結果、嚥下障害リスクありと判断された高齢者は50名(37.0%)であった。嚥下障害リスクと健康状態・生活習慣・社会活動との関係についてχ²検定で分析した結果、嚥下に影響する疾患の有無に加え、「食事を楽しいと感じている」「外出の頻度」「楽器の演奏」の3項目で有意差が認められた(p<0.05またはp<0.01)。特に、楽器を演奏する者では嚥下障害リスクが有意に低く、ピアノやギターなどの演奏が神経-筋協調性を高め、嚥下機能の維持に寄与している可能性が示唆された。楽器演奏は、複雑な随意運動を必要とし、運動神経と感覚神経のフィードフォワード・フィードバック作用が求められることから、嚥下運動に共通する神経-筋の調整能力が向上すると考えられる。本研究は、日常生活や社会的活動が嚥下機能に与える影響を実証的に示したものであり、楽器演奏や外出機会の確保、食事の楽しさなど、生活の質向上を通じた嚥下機能低下の予防が今後の介入において重要であることを示唆している。
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