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[01史-口-03]日本の卓球競技におけるカット打法の変化と採用過程に関する研究(1902-1942)
*Naoto Kimura1 (1. KOBE Univ.)
本研究では、日本で卓球が認知された1902年から1942年の間に、卓球競技者間において取り組まれた守備的打法であるカット打法について、具体的な変化と採用過程について明らかにすることを目的とする。方法として、当時出版された卓球に関する技術書を中心とし、大会記録や当時の記録が残る年史等の記述内容から検討を実施した。研究結果は以下のようにまとめられる。初期においては守備的打法としては主にショート打法が採用され、自滅を避け、相手の返球が高くなった場合にのみ強打をする戦法が採用されていた。その後は、攻撃的打法とショート打法、カット打法の3打法を基本打法としてそれらを組み合わせ、競技が行われていた。しかし、ドライブ打法といった攻撃技術を中心とした戦法で1924年の全日本選手権にて優勝した鈴木貞雄の台頭と、同氏が執筆した日本初の卓球競技に焦点を当てた技術書の出版により、攻撃的技術への認識が改まり、攻撃主体のプレースタイルが急速に発展した。このドライブ打法主体のプレースタイルに対抗する形で、カット打法を主体とするプレースタイルが広まった。1924年の鈴木の書籍においてカット打法は下回転のみならず横回転も含めた打球の進行方向に影響を弾道が変化する打法として紹介されているが、1936年に山田孝次郎が執筆した『卓球競技法』ではカット打法は下回転をボールに与える守備的な打法として紹介され、ドライブに対してのカット打法の優位性やドライブに対するカットの用い方、カット打法による持久戦についても言及がなされている。以降、カット打法は守備を主体とする選手にのみならず、攻撃を主体とする選手にも積極的に採用され、相手の攻撃を凌ぎ、反撃機会の創出にも用いられた。結果として、カット打法は、急速に発展した攻撃打法に対抗する為に発展、普及したのち、基本打法の1つとして、広く用いられ続けることになったものと考えられる。
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