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[15政-口-04]トランスジェンダー女子選手の参加資格ルールと競技の公平性
*Yan Jing Wang1, Hirohisa Mori2 (1. Graduate School of Daito Bunka University, 2. Daito Bunka University)
【背景・目的】近年、トランスジェンダー女子選手の女子競技への参加に関して様々な議論が起こっている。例えば、トランス女子選手が自身の性別アイデンティティに基づき、競技に参加する権利を尊重すべきであるとか、参加によって多様性が広がり女子選手全体の競技力向上につながる可能性があるといった賛成意見がある。他方で、女子選手の安全性が脅かされる恐れがあることや、競技の公平性が損なわれるといった批判的な指摘がある。IOCは2004年に性別適合手術とホルモン療法を条件としてトランス選手の五輪参加を認めた。2015年には女性競技への参加基準として、血清テストステロン値を10nmol/L未満に保ち、12か月以上維持することを定めた。多くの国際競技団体は、2021年まではこのIOCルールを採用していたが、競技の公平性を確保するために各団体が競技の特性に応じたルールの見直しを進めてきた。2022年に国際水泳連盟は思春期を男性として過ごしたトランス女子選手の女子競技への参加を認めず、血清テストステロン値を2.5nmol/L以下にする基準を導入した。2023年、国際陸上競技連盟は男性として思春期を経験したトランス女子選手の参加を禁じ、血清テストステロン値を24か月以上連続で2.5nmol/L以下に維持する基準を設けた。2024年のパリ五輪ではトランス女子選手の参加を認めず、現在遺伝子検査の導入を含むルール改正の検討を開始している。このように各団体は競技の公平性を確保するため、ルールの厳格化を進めている。【目的】本研究の目的は、①トランスジェンダー女子選手の女子競技への参加をめぐるルールの変化とその背景を明らかにすること、②競技における公平性の概念を整理し、その確保のあり方について検討すること、③トランスジェンダー女子選手の競技参加に関するルールのあり方について考察することである。
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