Presentation Information
[03心-ポ-17]運動学習の“非一様地形”とその安定・発展を読み解く筆跡図形の部分構造と軌道エントロピーの関係
*Hiroki Murakamai1, Norimasa Yamada2 (1. Kinjo Univ., 2. Chukyo Univ.)
鏡映描写課題は、運動学習における視覚−運動変換の適応過程を検討する代表的課題であり、運動時間や誤差数などの従来指標に加え、近年ではエントロピー指標を用いた動作の複雑性・安定性の分析が注目されている。筆者らの先行研究(Murakami & Yamada, 2025)では、鏡映描写課題を12セグメントに分割し、セグメントごとの軌道のエントロピーを算出し、その変化を分析することで、学習過程における“つまずき”の分布と制御戦略の変化を可視化した。その結果、運動学習は全体的に一様に進むのではなく、局所的な困難を乗り越えながら部分的に安定・発展していく段階的プロセスであることが示唆された。本研究ではこの知見を発展させ、辺の数と長さを固定しつつ、角度構成を操作した複数の図形を用いて、運動方向や角度の違いがエントロピーに与える影響を定量的に検討する。また、各セグメントの方向ベクトルに基づく独自の難易度スコアを導入し、それとエントロピー値の変動との関係を分析する。本研究は、視覚−運動変換における運動困難性の空間的構造をエントロピー指標によって可視化し、運動学習が空間的、段階的に安定・発展していく過程であることを明らかにすることを目的とする。このような非一様な学習過程の理解は、これまでプラトー現象など時間的停滞として捉えられてきた運動学習の非線形性を、空間的構造の観点から補完・拡張するものであり、効果的な課題設計や個別化された指導法の構築に資する可能性がある。詳細な分析結果およびモデルの妥当性については、当日の発表にて報告する予定である。
Comment
To browse or post comments, you must log in.Log in
