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[03心-ポ-56]トラウマを抱えながら生きる異なる行為形態の対人暴力被害による複雑性PTSDの発現リスク
*Hayato Toyoda1,2, Yasuhiro Omi3 (1. The University of Tokyo, 2. Japan Society for the Promotion of Science, 3. University of Yamanashi)
指導者による対人暴力の防止を筆頭に、今日、セーフスポーツの実現に向けた動きが学術と社会の双方で加速している。そして近年では、日本においても、対人暴力被害者の精神健康問題の同定を試みる知見が蓄積されつつある。本研究の目的は、国内外の先行研究の課題点を踏まえ、性的暴力の実態とネガティブライフイベントの関与可能性を考慮した上で、いかなる対人暴力の行為形態が心的外傷後ストレス症(PTSD)および複雑性PTSD(CPTSD)の該当リスクを説明するのかを明らかにすることであった。スクリーニング抽出した18歳から30歳までの閾値に基づく対人暴力被害者391名(M=25.04, SD=3.13)を分析対象とした。本研究は山梨大学大学院総合研究部教育学域研究倫理委員会の承認を得て実施された。個人属性や競技レベル、出来事チェックリスト(ECL:金, 2001)、対人暴力の目撃経験を統制変数、身体的暴力、心理的暴力・ネグレクト、性的暴力の被害経験頻度(VTAQ-Coach:Parent et al., 2019)を独立変数、国際トラウマ質問票(ITQ:Cloitre et al., 2018)に基づくPTSDとCPTSDのカットオフを従属変数としたロバスト標準誤差によるロジスティック回帰分析を行った。その結果、競技レベルやECLの該当有無を統制してもなお、身体的暴力と性的暴力の被害経験頻度がPTSDおよびCPTSDの該当リスクを正方向に説明していた。両モデルの分散説明率は中程度の効果量を示し、多重共線性も認められなかった。これらの結果は、対人暴力の行為形態のうち,特に身体的暴力と性的暴力がトラウマ発現のリスクを独立して高めることを示したとともに、日本では実証知見が極めて乏しかった性的暴力によるトラウマの症状形成への言及を可能にした点で、今後の被害者支援の具体化に寄与すると考えられる。
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