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【ランチョンセミナー2】健診・レセプトデータを活用した健保組合向け医療費ベンチマークの開発および健康増進に向けた日本生命の取組み

Wed. Oct 29, 2025 11:45 AM - 12:45 PM JST
Wed. Oct 29, 2025 2:45 AM - 3:45 AM UTC
Room 2 (Reception Hall)
座長:高本 洵(日本生命保険相互会社)
演者:五十嵐 中(東京大学大学院薬学系研究科/横浜市立大学データサイエンス研究科)
   衣川 潤(日本生命保険相互会社)
共催:日本生命保険相互会社
【目的】健康保険組合の医療費について最新の状況を分析した。最近のトレンドの要因と、健保組合間の医療費の差の要因を分析した。
【方法】日本生命が所有するレセプト・特定健診データベースであるWellness-Star☆を用いて分析した。これは全国のさまざまな業種の健保組合のデータから成るデータべ―スであり、2011年分から収納されている。これを用いて次の2つの分析を行った:2017~2023事業年度における年齢性別調整後の1人当単月医療費(PMPM)のトレンドとその要因、年齢性別調整後のPMPMを用いたベンチマークの検討及びPMPMが比較的低い健保(以下「G健保」)と比較的高い健保(以下「B健保」)との医療費の差の要因。
【結果】データベースには200健保組合が含まれていた。2017~2023事業年度のPMPMは、2020年に10,027円となり最小となり、その後2023事業年度まで平均年率4.99%で増加していた。疾患別に見ると、平均年率の大きいものは「女性不妊症」(35.9%)、「過多月経/月経前症候群/月経困難症」(16.1%)、「子宮内膜症」(15.5%)、「その他の呼吸器系の疾患」(15.3%)、「感染症及び寄生虫症」(11.5%)であった。これは2022年4月より、不妊治療が公的医療保険の対象となったこと、COVID-19対策の緩和と予防行動の後退に伴うものと思われる。続いて、健保組合別のPMPMを用いて、健保向けベンチマークの検討、PMPMの差が大きい健保間の比較を行った。 G健保としてPMPMが全体の29パーセンタイルに位置する機械器具製造業の健保を、B健保としてPMPMが全体の88パーセンタイルに位置する公務員の健保を選んだ。両者のPMPMの差は、「感染症及び寄生虫症」、「皮膚および皮下組織の疾患」、「骨粗鬆症」、「脂質異常症」、「睡眠障害」、「うつ病」、「便秘」に起因していた。また健診値を持つ被保険者に限ると、G健保の優位性は女性では薄れるが、男性の40~59歳では顕著なままであった。健診値の平均値を比較すると、BMI、収縮期血圧、喫煙、飲酒はG健保がより大きく、運動習慣や睡眠はG健保がより小さいという結果になった。
【結論】最近の健保組合のPMPMのトレンドの要因と健保組合間の医療費の差の要因について分析した。
 
【略歴】
五十嵐 中
2002年 東京大学薬学部薬学科卒業
2008年 東京大学大学院薬学系研究科博士後期課程修了
東京大学大学院薬学系研究科特任助教、特任准教授
2019年 横浜市立大学医学群健康社会医学ユニット准教授
2024年 東京大学大学院薬学系研究科 特任准教授
横浜市立大学医学群データサイエンス研究科 客員准教授
として現在に至る