Session Details

【グループワーク4】実用的な抽出調査を自ら企画してみよう ~途上国での方法を日本に活用するには~

Wed. Oct 29, 2025 1:10 PM - 2:40 PM JST
Wed. Oct 29, 2025 4:10 AM - 5:40 AM UTC
Room 8 (910)
座長:磯 博康(国立健康危機管理研究機構 グローバルヘルス政策研究センター)
   蜂矢 正彦(国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局)
演者:駒田 謙一(国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局)
   細澤 麻里子(国立健康危機管理研究機構 グローバルヘルス政策研究センター)
ファシリテーター:市村 康典(国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局)
         本田 真梨(国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局)
何らかの保健政策を提案したいが、そのためのエビデンスが不足していると感じるケースはよくあります。自治体関係者や若手研究者が自ら調査したいと思っても、実施に向けて足踏みされている方も多いのではないでしょうか。意外かもしれませんが、途上国で政府主導の疫学調査行う場合、回答率が高く、比較的厳密な研究デザインを組めることがあります。これに対し日本ではインフラ等の研究環境が整っている一方で回答率が低くなりがちで、実施するうえでの工夫が必要とされています。本セッションでは日本と途上国で疫学研究を実施している専門家が、それぞれどのように実施してきたか、実例をあげて説明します。またグループワークでは、参加者の皆さんが日本と途上国で研究を実施する想定で、具体的な研究方法や工夫についてディスカッションしていただきます。
 前半では、無作為抽出調査の概要やその有用性について、途上国における一般住民を対象とした有病率調査の事例を紹介します。ラオスでは全国から約2000名を抽出し、B型肝炎の有病率や麻疹・風疹に対する抗体保有率を推定し、得られた知見が同国の保健政策にフィードバックされました。これらを通して、研究デザイン、住民台帳の使い方、日本に応用する際の留意点を共有します。続くグループワークでは、参加者が仮想の調査目的を設定し、それに適した研究デザインを検討することで、実践的な理解を深めていただきます。
 後半では、日本国内で新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に関して、自治体と共同して実施した住民調査の事例を紹介します。本事例では、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)に基づき感染者を抽出し、自治体が保有する住民情報から感染者と性別や年齢をあわせた非感染者を抽出し、質問紙調査を実施しました。5歳から79歳までの約3万人を対象とした本研究では、初回調査の回答率が34%、1年後の追跡調査の回答率は66%、2年後調査では90%でした。自治体との連携や回答率向上の工夫、小児を対象とした研究の留意点など、研究を実施した人にしか分からないポイントを共有します。続くグループワークでは、前半で設計した調査を実施する際の課題と対応策を検討し、実践的な視点からの議論を行います。
 このセッションへの参加を通して、少しでも実際の研究実施に繋がればと思います。