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【ランチョンセミナー6】なぜワクチンを打たないのか。~歴史と心理から読み解く「接種控え」~

Thu. Oct 30, 2025 11:50 AM - 12:50 PM JST
Thu. Oct 30, 2025 2:50 AM - 3:50 AM UTC
Room 3 (Conference Hall)
座長:相馬 和平(アイブリッジ株式会社)
演者:町田 征己(東京医科大学公衆衛生学分野/東京医科大学病院感染制御部)
共催:アイブリッジ株式会社
近年、予防接種の接種控え:Vaccine hesitancyは世界的な問題となっている。Vaccine hesitancyはワクチン忌避と訳されることも多いが、Vaccine hesitancyにはワクチン接種を拒否・拒絶(忌避)している状態だけではなく、接種を迷っている状態等も含まれる。よって最近では、忌避よりもワクチン躊躇や接種控えという言葉が使われるようになってきている。接種控えは新型コロナウイルス感染症パンデミックにより社会的な注目を集めたが、その歴史は古く、日本においても過去にインフルエンザワクチンやHPVワクチンなど、様々なワクチンで課題となってきた。接種控えには様々な要因が影響するが代表的な概念モデルとして、ワクチンや政府関係機関への信頼(Confidence)、個人が認識している罹患可能性・疾病危険性(Complacency)、予防接種の物理的・心理的利便性(Convenience)からなる3Csモデルがある。また、世界保健機関(WHO)が開発した「予防接種の行動的・社会的促進要因(BeSD)フレームワーク」も対策を検討する際のモデルとして活用されている。最近では、行動経済学の観点から理解を深めるアプローチも進められている。また、パンデミック以降は、誤情報による影響も従来に増して大きくなってきており、その要因などについて研究が進められている。接種控えの対策立案においては、接種のモチベーションを高める対策と接種したい人が接種できるようにする対策を分けて考えることが重要である。海外では様々な介入研究が行われ、有効性に関するエビデンスが蓄積されつつある一方、本邦における介入研究は乏しいのが現状である。日本の文化・予防接種制度の下で有効な介入は明確ではないものの、①未接種者へのリマインダー、②接種券配布、③費用負担削減、④医療従事者の推奨、⑤情報提供の工夫、などは効果が期待される。本発表では接種控えに関するこれらの知見を、歴史的背景、要因、国内外の対策事例から包括的に概説する。
 
【略歴】
2015年3月 東京医科大学 医学部医学科 卒業
2015年4月 東京都立墨東病院 初期臨床研修医
2017年4月 東京医科大学病院 感染制御部 後期臨床研修医
2018年6月 東京医科大学 公衆衛生学分野 助教(大学病院感染制御部 兼務)
2021年4月 同 講師
2025年3月 同 准教授(現在に至る)