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【シンポジウム35】いま高齢者介護の現場で何が起きているか~持続可能な介護保険システムに向けて~

Thu. Oct 30, 2025 1:00 PM - 2:30 PM JST
Thu. Oct 30, 2025 4:00 AM - 5:30 AM UTC
Room 3 (Conference Hall)
座長:新開 省二(女子栄養大学 栄養学部)
   岸 恵美子(東京医療保健大学 大学院看護学研究科)
指定発言者:藤原 佳典(東京都健康長寿医療センター研究所)
高齢者介護の現場は今、大きな転換点に直面している。急速な高齢化の進展により、在宅介護や施設介護の需要は増大の一途をたどる一方、介護人材の不足と定着困難、地域間格差、家族介護者の高齢化など、現場の課題は複雑かつ深刻化している。現場の最前線では、利用者の生活を支えるために専門職が奮闘しているが、その努力を支える制度基盤は必ずしも十分とはいえない。介護報酬の仕組み、医療・介護連携の不十分さ、地域包括ケアシステムの実効性など、制度と現場の齟齬が浮き彫りになっている。
 とりわけ、サービスの提供を現場で担う人材の確保と育成、そして財政の持続可能性という2点において、深刻な危機に直面しており、早急にこれら2つの課題への実効性ある対応を進める必要がある。介護人材不足や家族介護者の高齢化、財政制約の強まりは深刻な課題であるが、これを契機に「次世代にふさわしい介護のあり方」を展望することが求められている。制度創設から25年を経た今こそ、介護保険を単なる持続のための制度としてではなく、人々の暮らしを支える社会基盤として再構築する転機と捉える必要がある。
 本シンポジウムでは、施設介護サービスの現場、在宅介護・看護サービスの現場、それぞれにおける実態に精通しているサービス提供者と有識者、そして、介護保険の経済的課題に精通している有識者からの報告を通して、介護人材確保と介護保険財政について現状と課題を整理する。そして、サービスの提供側および受給側の双方が、「国民が、望む時に、望むところで、適正な負担で必要なサービスを利用できる」ことを実感できる介護の現場を維持するための取り組みを探る。「国民がこれ以上の負担に耐えられるか」という問いを超えて、「国民が安心して老いを迎え、必要なときに必要なサービスを受けられる仕組みをどう構築するか」という未来志向の課題設定を行う。
 議論では、ICTの活用、人材育成の新しい仕組み、多職種連携、地域資源の活用など、多方面の実践を取り上げる。介護を「負担」や「コスト」としてだけではなく、社会全体の持続性と豊かさを高める投資と捉える視点を提示し、現場と政策の双方から持続可能で希望ある介護保険制度の姿を描く。本企画は本学会理事会の高齢者保健医療福祉に関する委員会によるものであり、未来に向けた建設的な議論の場としたい。

[シンポジウム35-1]Working Title: SHIRAYURI Group's Approach to Challenges in Community-Based Integrated Care

*Fumihiko Sato (Medical Chateau Corp.)

[シンポジウム35-2]在宅介護・看護の現状と課題ー高齢者を孤立させないサービスとはー

*Emiko Kishi (Graduate School of Nursing, Tokyo Healthcare University)

[シンポジウム35-3]Effectiveness of introducing care assistants in long-term care facilities: Findings from nationwide survey data

*Hiroshi Murayama (Research Team for Social Participation and Healthy Aging, Tokyo Metropolitan Institute for Geriatrics and Gerontology)

[シンポジウム35-4]Issues surrounding the sustainability of the long-term care insurance system

*Tatsuaki TAKANO (TOYO University,Faculty of Design for Welfare Society)