The 84th Annual Meeting of Japanese Society of Public Health

世話人：田宮 菜奈子

「法医公衆衛生学」とは、私たちが提唱する新たな学際的分野であり、法医学的データや知見を公衆衛生の視点から分析し、予防・介入・政策立案へとつなげることを目的としています。本自由集会では、この法医公衆衛生学の紹介を行うともに、その意義と可能性について多角的に議論します。
現代社会では、小児・高齢者虐待、高齢者の孤独死、防ぎ得た外因死など、「人の死」をめぐる複雑な社会的課題が顕在化しています。こうした死の背景には、医療や福祉の支援が十分に届かなかった実態や、社会的孤立、制度の狭間で見過ごされたリスクなど、可視化されにくい構造的な問題が潜んでいます。しかし、これらの死の実態を客観的かつ体系的に把握するための制度やデータ基盤、分析の枠組みは、いまだ発展途上にあり、科学的根拠に基づいた対策や政策形成が進みにくい状況にあります。法医公衆衛生学の発展は、こうした課題の解決に向けた新たな糸口となる可能性を秘めています。
本集会では、制度や仕組みの構築、法医学的データや死亡情報を含む公的統計の利活用、分析手法の整備、行政・医療・福祉の連携のあり方など、さまざまな視点から情報・意見交換を行い、法医公衆衛生学の今後の展望について参加者とともに考えていきます。