Presentation Information
[P06-17]Redefinition of Low-Frequency Earthquakes Considering Seismic Wave Attenuation and Site Effects
*Seiya Yano1, Satoshi Ide1, Makoto Matsubara2 (1. Department of Earth and Planetary Science, The University of Tokyo, 2. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)
低周波地震(LFE)は、通常の地震に比べて2-8 Hzの周波数成分が10-20 Hzの成分より卓越する地震現象として定義される。火山地域以外で発生するLFEは、プレート境界で発生するtectonic LFEと、地殻内で発生するcrustal LFEに大別できる(e.g., Katsumata & Kamaya, 2003)。Tectonic LFEはプレートの沈み込み方向と調和的な逆断層型のメカニズムを示し、しばしばスロースリップと同期して発生することが知られている(e.g., Shelly et al., 2006; Ide et al., 2007)。しかし、房総沖のようにスロースリップが繰り返し発生しているにもかかわらず、tectonic LFEが報告されていない地域も存在する(e.g., Ozawa et al., 2003; Fukuda, 2018)。一方、crustal LFEは地殻内地震の震源域や第四紀火山の分布とある程度の対応関係を示すことから、流体の関与が提案されているものの、詳細なメカニズムは不明である(e.g., Ohmi & Obara, 2002; Aso et al., 2013)。
LFEを通常の地震から区別する既存の手法では、スペクトルの形状や周波数領域の特徴量が用いられてきた。Nakajima & Hasegawa (2021)は、低周波成分と高周波成分の比およびコーナー周波数に基づいて日本の地殻内地震を分類し、LFEの再定義を試みた。Yano & Ide (2024)もまた、震源の深さと継続時間に加えて、周波数領域から抽出した平均振幅や高周波成分と低周波成分の振幅比といった特徴量を用いることで、tectonic tremorからtectonic LFE、さらにはcrustal LFEまでを包括的に検出できることを示した。しかし、観測されるスペクトルは震源スペクトルを直接反映しているわけではなく、地震波の伝播に伴う減衰や観測点のサイト特性による影響を強く受けている。先行研究の多くは観測スペクトルをそのまま使用しており、これらの効果を適切に評価・補正する必要がある。一方、LFEをはじめとするスロー地震では、通常の地震に比べて二桁程度低い応力降下量を示すことが知られている(e.g., Ito et al., 2006; Thomas et al., 2016)。応力降下量は震源を直接反映する物理量であり、観測スペクトルから適切に補正して求めることで、より本質的なLFEの分類基準となり得る。そこで本研究では、地震波の減衰とサイト特性を考慮したスペクトルインバージョンを実施し、応力降下量の観点からLFEの再定義を試みる。
解析は主に二つのパートで構成される。前半では、気象庁カタログに掲載されており、F-net解が求められている、2004年から2023年までに発生した地震を用いてS波のQ値とサイト特性を推定する。Matsubara et al. (2022) の三次元S波速度構造に基づき、震源から観測点までの伝播経路をFast Marching Method(Sethian, 1996; White et al., 2020)とpseudo-bending法(Um & Thurber, 1987)で計算し、走時を求めたうえで、S波の速度スペクトルに対して、震源スペクトル、放射パターン、幾何減衰の効果を補正する。ここでは、地震モーメントと震源メカニズムはF-net解で固定し、震源スペクトルは応力降下量3.0 MPaのオメガ二乗モデルを仮定する。複数のイベント・観測点ペアを用いて、周波数に依存するQ値の三次元構造とサイト特性を推定する。解析の後半では、得られたQ値構造とサイト特性を用いて観測スペクトルを補正し、応力降下量と地震モーメントを未知パラメータとして推定する。今回の発表では、crustal LFEが多数発生している島根県東部や大阪湾周辺、スロースリップが報告されているにもかかわらずtectonic LFEが検出されていない房総沖、LFEカタログの不整合が大きい北海道北部などに本手法を適用した結果について報告する。
LFEを通常の地震から区別する既存の手法では、スペクトルの形状や周波数領域の特徴量が用いられてきた。Nakajima & Hasegawa (2021)は、低周波成分と高周波成分の比およびコーナー周波数に基づいて日本の地殻内地震を分類し、LFEの再定義を試みた。Yano & Ide (2024)もまた、震源の深さと継続時間に加えて、周波数領域から抽出した平均振幅や高周波成分と低周波成分の振幅比といった特徴量を用いることで、tectonic tremorからtectonic LFE、さらにはcrustal LFEまでを包括的に検出できることを示した。しかし、観測されるスペクトルは震源スペクトルを直接反映しているわけではなく、地震波の伝播に伴う減衰や観測点のサイト特性による影響を強く受けている。先行研究の多くは観測スペクトルをそのまま使用しており、これらの効果を適切に評価・補正する必要がある。一方、LFEをはじめとするスロー地震では、通常の地震に比べて二桁程度低い応力降下量を示すことが知られている(e.g., Ito et al., 2006; Thomas et al., 2016)。応力降下量は震源を直接反映する物理量であり、観測スペクトルから適切に補正して求めることで、より本質的なLFEの分類基準となり得る。そこで本研究では、地震波の減衰とサイト特性を考慮したスペクトルインバージョンを実施し、応力降下量の観点からLFEの再定義を試みる。
解析は主に二つのパートで構成される。前半では、気象庁カタログに掲載されており、F-net解が求められている、2004年から2023年までに発生した地震を用いてS波のQ値とサイト特性を推定する。Matsubara et al. (2022) の三次元S波速度構造に基づき、震源から観測点までの伝播経路をFast Marching Method(Sethian, 1996; White et al., 2020)とpseudo-bending法(Um & Thurber, 1987)で計算し、走時を求めたうえで、S波の速度スペクトルに対して、震源スペクトル、放射パターン、幾何減衰の効果を補正する。ここでは、地震モーメントと震源メカニズムはF-net解で固定し、震源スペクトルは応力降下量3.0 MPaのオメガ二乗モデルを仮定する。複数のイベント・観測点ペアを用いて、周波数に依存するQ値の三次元構造とサイト特性を推定する。解析の後半では、得られたQ値構造とサイト特性を用いて観測スペクトルを補正し、応力降下量と地震モーメントを未知パラメータとして推定する。今回の発表では、crustal LFEが多数発生している島根県東部や大阪湾周辺、スロースリップが報告されているにもかかわらずtectonic LFEが検出されていない房総沖、LFEカタログの不整合が大きい北海道北部などに本手法を適用した結果について報告する。
