Presentation Information
[P25-07]Low Frequency characteristics of DAS with optic fiber cable at Sakurajima: Analysis of the 2025 Kamchatka Peninsula, Russia, Earthquake
*Kentaro EMOTO1, Hisashi Nakahara2, Takeshi Nishimura2, Haruhisa Nakamichi3, Takashi Hirose2, Kimiko Taguchi2, Bin Abdul Rahman Bin Abdul Rahman1, Kohei Yonemori1 (1. Kyushu University, 2. Tohoku University, 3. Kyoto University)
光ファイバーケーブルを用いたDAS(Distributed Acoustic Sensing)は,数十kmの光ファイバーケーブルに沿って,数m間隔で歪時系列を計測することができる超高密度観測が一番の特徴である.通信用の既存光ファイバーケーブルを利用できることから,都市部において浅部速度構造を詳細に推定可能であることが,世界中で報告されている(例えば,Hamanaka and Emoto, 2024).もう一つのDASの特徴としては,低周波側は原理的には静的変化まで記録することが可能な周波数特性が挙げられる(Lindsey et al., 2020).しかし,低周波ではレーザーの安定性の問題に加え,温度変化による屈折率の変化やケーブルの歪の影響も存在する(Ide et al., 2021).一般に,DAS観測では,0.1 Hz以上を対象としている場合が多く,0.01 Hz以下を扱う研究事例は少ない.Li et al. (2025)では,アイスランドにおいて,0.01 Hz以下のDAS記録を解析し,捉えた地殻変動からマグマ貫入の時空間分布の推定に成功している.低周波まで正しく記録することができれば,DASを広帯域地震計の超高密度観測と同様に扱うことが可能となる.2025年カムチャツカ半島地震は,マグニチュード8.8の巨大地震であり,0.01 Hz以下の地震波も十分なエネルギーを持つ.我々は桜島においてDAS観測を行なっており,カムチャツカ半島地震による地震波を記録することができた.本発表では, 記録された低周波成分の特徴について,広帯域地震計と比較して報告する.
我々は2024年9月から桜島においてDASの連続観測を行なっている.計測装置であるインテロゲーター(Sintela社ONYX)は,桜島の南西側にある国土交通省桜島砂防出張所に設置し,海岸沿いに島内を一周する全長39 km,野尻川に沿って山頂側に伸びる全長4.4 kmの2本の光ファイバーケーブルに接続されている.両ケーブルに沿って5 m間隔,サンプリング周波数250 Hzで歪時系列を計測している.データの安定性のため,0.01 Hzのハイパスフィルターがかけられた歪時系列を記録している.カムチャツカ半島地震に伴う地震波は,両ケーブルに沿った計測点(チャネル)において明瞭に見ることができた.震央距離は約3,300 kmである.周回道路と野尻川沿いの下流部分では,車の通行に伴う振動が含まれているため,野尻川沿い上流部のチャンネルを用いて広帯域地震計との比較を行うこととした.
野尻川上流における,ほぼ東西方向に向いたケーブルの20チャネルのDAS記録を比較に用いた.シグナル・ノイズ比(S/N)を大きくするため,この20チャネルでの歪波形をスタックした.広帯域地震計として,この区間から約2 km離れた場所に設置されている基盤的火山観測網(V-net)赤水観測点の東西成分の速度波形を用いた.平面波入射を仮定すると,歪波形と速度波形は,見かけ速度を比例係数とした相似形となる.地震発生後約200秒から20分間の波形を用いて,DASと広帯域地震計とのコヒーレンスを計算したところ,0.001~0.07 Hzにおいて0.8以上であった.このうち,0.03 Hz付近以外では,コヒーレンスは0.9を超えていた.この時間窓には,P波やS波のほかに表面波も含まれる.P波到達前をノイズ波形とし,それぞれの観測点でS/Nを計算したところ,0.1 Hz以上では両者はほぼ等しかったものの,0.1 Hz以下では広帯域地震計の方が10倍程度大きかった.
次に,0.002~0.01 Hzにおいて,地震発生後5時間の歪波形を全国の広帯域地震観測網(F-net)と比較した.震央距離毎に波形を並べると,実体波のフェイズに加えて,地球を周回するレイリー波(R3)やラブ波(G3)もDASで確認することができた.
DASは,広帯域地震計と比較すると,0.1 Hz以下の低周波ではノイズが大きい.しかし,カムチャツカ半島地震のような巨大地震の場合には,DASでも0.001 Hz程度までは低周波成分を解析することは可能である.高周波成分を用いた浅部構造の詳細なイメージングだけではなく,DASの低周波成分を用いたより深部の構造解明等にも使用できる可能性が示された.
謝辞:DAS観測では国土交通省の光ファイバーを借用しました.観測に当たって国土交通省 九州地方整備局大隅河川国道事務所の方々に便宜を図っていただきました.
我々は2024年9月から桜島においてDASの連続観測を行なっている.計測装置であるインテロゲーター(Sintela社ONYX)は,桜島の南西側にある国土交通省桜島砂防出張所に設置し,海岸沿いに島内を一周する全長39 km,野尻川に沿って山頂側に伸びる全長4.4 kmの2本の光ファイバーケーブルに接続されている.両ケーブルに沿って5 m間隔,サンプリング周波数250 Hzで歪時系列を計測している.データの安定性のため,0.01 Hzのハイパスフィルターがかけられた歪時系列を記録している.カムチャツカ半島地震に伴う地震波は,両ケーブルに沿った計測点(チャネル)において明瞭に見ることができた.震央距離は約3,300 kmである.周回道路と野尻川沿いの下流部分では,車の通行に伴う振動が含まれているため,野尻川沿い上流部のチャンネルを用いて広帯域地震計との比較を行うこととした.
野尻川上流における,ほぼ東西方向に向いたケーブルの20チャネルのDAS記録を比較に用いた.シグナル・ノイズ比(S/N)を大きくするため,この20チャネルでの歪波形をスタックした.広帯域地震計として,この区間から約2 km離れた場所に設置されている基盤的火山観測網(V-net)赤水観測点の東西成分の速度波形を用いた.平面波入射を仮定すると,歪波形と速度波形は,見かけ速度を比例係数とした相似形となる.地震発生後約200秒から20分間の波形を用いて,DASと広帯域地震計とのコヒーレンスを計算したところ,0.001~0.07 Hzにおいて0.8以上であった.このうち,0.03 Hz付近以外では,コヒーレンスは0.9を超えていた.この時間窓には,P波やS波のほかに表面波も含まれる.P波到達前をノイズ波形とし,それぞれの観測点でS/Nを計算したところ,0.1 Hz以上では両者はほぼ等しかったものの,0.1 Hz以下では広帯域地震計の方が10倍程度大きかった.
次に,0.002~0.01 Hzにおいて,地震発生後5時間の歪波形を全国の広帯域地震観測網(F-net)と比較した.震央距離毎に波形を並べると,実体波のフェイズに加えて,地球を周回するレイリー波(R3)やラブ波(G3)もDASで確認することができた.
DASは,広帯域地震計と比較すると,0.1 Hz以下の低周波ではノイズが大きい.しかし,カムチャツカ半島地震のような巨大地震の場合には,DASでも0.001 Hz程度までは低周波成分を解析することは可能である.高周波成分を用いた浅部構造の詳細なイメージングだけではなく,DASの低周波成分を用いたより深部の構造解明等にも使用できる可能性が示された.
謝辞:DAS観測では国土交通省の光ファイバーを借用しました.観測に当たって国土交通省 九州地方整備局大隅河川国道事務所の方々に便宜を図っていただきました.
