Presentation Information
[S02-06]Evaluation of the initial recordings of pressure gauges deployed in the Nankai Trough
*Hiroyuki Matsumoto1, Eiichiro Araki1, Shuhei Nishida1, Keisuke Ariyoshi1, Yuya Machida1 (1. JAMSTEC)
海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、南海トラフ巨大地震の想定震源域に設置した「地震・津波観測監視システム(DONET)」や「長期孔内観測システム(LTBMS)」などにより、広域の海底地殻変動やスロースリップイベント(SSE)を観測して、巨大地震発生に至る過程を理解する取り組みを行っている。この取り組みの一環で、海底地殻変動の上下成分を高精度に計測するために、2024年に南海トラフの2観測点に圧力計を設置した。2台の圧力計は、1B-S1観測点と2F-S2観測点にそれぞれ2024年2月と同年12月に設置して、DONETに接続した(図1)。両観測点の圧力計は海底広域研究船「かいめい」で運用される無人探査機「KM-ROV」で設置した(図2)。海底圧力計の観測データは、DONETを経由してリアルタイムで陸上へ伝送されている。沖合に設置された海底圧力計は、津波の早期検知や海洋変動の観測に貢献してきた一方、長期運用における課題の一つに機器ドリフトがある。本発表では、南海トラフに設置した海底圧力計の観測データを解析して、機器ドリフトについて考察する。また圧力計は、海底への設置前に加圧実験をしたので、室内実験で観測された機器ドリフトとの比較を行い、長期安定性の評価手法の妥当性を検証する。
本予稿では、紀伊水道沖に設置した2F-S2観測点に設置した圧力計のデータ解析について紹介する。2F-S2観測点で観測を開始した2024年12月3日から2025年7月31日までの約8か月間の観測データを解析する。観測データに潮汐解析プログラムBAYTAP-G(Tamura et al., 1991)を適用して、潮汐成分とトレンド成分(非潮汐成分)に分離する。BAYTAP-Gで解析して、観測データから分離された潮汐成分と非潮汐成分を図3に示す。非潮汐成分を機器ドリフトとみなし、指数関数と線形関数を組み合わせてモデル化した関数(Kajikawa & Kobata, 2019)でフィットさせた近似曲線を図3(c)にプロットする。非潮汐成分をフィットさせた近似関数の線形成分によれば、機器ドリフトは1日あたり+0.0309 cm、1年間では+11 cmの傾きで変化することを示唆する。
BAYTAP-Gでは、海洋変動や地殻変動などに起因する長周期の圧力変動の寄与は、非潮汐成分として取り扱われる。長周期の圧力変動が共通して観測される近傍のDONET観測点の海底圧力計の観測データの差分を計算して、長周期の圧力変動を除去することを試みた。2F-S2観測点から約3 km西にDONETのMRF25観測点がある。両観測点の観測データおよび差分を計算してプロットしたものを図4に示す。機器ドリフトは、1日あたり+0.0095 cmに相当すると推定された。BAYTAP-Gによる推定とは約3倍の差異があるが、圧力計が上向きの機器ドリフトを示す特性は一致した。
海底に設置した圧力計は、事前に室内実験において重錘形圧力天びんを利用して連続加圧して機器ドリフトの特性を評価した。具体的には、圧力計の設置水深に近い水深2,000 mに相当する20 MPaを圧力天びんで発生させる。さらに海底の温度環境を再現するため、2 ℃に設定した恒温槽内に圧力計をセットして、圧力計の圧力ポートに加圧する。圧力計には20日間連続で、20 MPaを加圧した。室内実験による加圧は、1日あたり+0.0490 cmに相当する機器ドリフトが観測されたので、室内実験での機器ドリフトは過大評価される結果となった。ただし、圧力計の機器ドリフトの向きは、室内実験と現場観測とで調和的であった。圧力天びんによる連続加圧が機器ドリフトの特性を予測するのに有効な手法であることを示唆する。
本予稿では、紀伊水道沖に設置した2F-S2観測点に設置した圧力計のデータ解析について紹介する。2F-S2観測点で観測を開始した2024年12月3日から2025年7月31日までの約8か月間の観測データを解析する。観測データに潮汐解析プログラムBAYTAP-G(Tamura et al., 1991)を適用して、潮汐成分とトレンド成分(非潮汐成分)に分離する。BAYTAP-Gで解析して、観測データから分離された潮汐成分と非潮汐成分を図3に示す。非潮汐成分を機器ドリフトとみなし、指数関数と線形関数を組み合わせてモデル化した関数(Kajikawa & Kobata, 2019)でフィットさせた近似曲線を図3(c)にプロットする。非潮汐成分をフィットさせた近似関数の線形成分によれば、機器ドリフトは1日あたり+0.0309 cm、1年間では+11 cmの傾きで変化することを示唆する。
BAYTAP-Gでは、海洋変動や地殻変動などに起因する長周期の圧力変動の寄与は、非潮汐成分として取り扱われる。長周期の圧力変動が共通して観測される近傍のDONET観測点の海底圧力計の観測データの差分を計算して、長周期の圧力変動を除去することを試みた。2F-S2観測点から約3 km西にDONETのMRF25観測点がある。両観測点の観測データおよび差分を計算してプロットしたものを図4に示す。機器ドリフトは、1日あたり+0.0095 cmに相当すると推定された。BAYTAP-Gによる推定とは約3倍の差異があるが、圧力計が上向きの機器ドリフトを示す特性は一致した。
海底に設置した圧力計は、事前に室内実験において重錘形圧力天びんを利用して連続加圧して機器ドリフトの特性を評価した。具体的には、圧力計の設置水深に近い水深2,000 mに相当する20 MPaを圧力天びんで発生させる。さらに海底の温度環境を再現するため、2 ℃に設定した恒温槽内に圧力計をセットして、圧力計の圧力ポートに加圧する。圧力計には20日間連続で、20 MPaを加圧した。室内実験による加圧は、1日あたり+0.0490 cmに相当する機器ドリフトが観測されたので、室内実験での機器ドリフトは過大評価される結果となった。ただし、圧力計の機器ドリフトの向きは、室内実験と現場観測とで調和的であった。圧力天びんによる連続加圧が機器ドリフトの特性を予測するのに有効な手法であることを示唆する。

