Presentation Information
[S02-11]Low frequency whale calls and its sound source migration detected with OBSs of N-net and DONET
*Ryoichi IWASE1 (1. JAMSTEC)
東日本の太平洋沿岸海域に設置されているケーブル型海底地震観測網では、これまでにヒゲクジラの一種であるナガスクジラの鳴音が検出されている(Iwase, 2015)。ナガスクジラは、低周波(20 Hz前後)の特徴的な鳴音を発出することが知られており、世界各地の海域に広く分布している。特に北海道沖から房総半島沖までの千島・日本海溝沿いに設置されている防災科学技術研究所のS-netでは、例年8月頃から3月頃にかけて、観測網全体の広い範囲で高頻度で鳴音が検出されている(Mochizukiet al., 2025)。
ところが、東海地域より西側の日本の南岸沖の海域においては、これまで海底地震計網による鯨類鳴音の検出事例はほとんどなかった。
今回、防災科学技術研究所が2024年に南海トラフ海域に設置したN-net沖合システムのほか、運用開始から10年以上が経過しているDONETを構成する地震計の波形データを調査した結果、鯨類鳴音と推定される信号を新たに検出した。
使用した波形データは、2025年3月8日から13日までの6日間のN-net沖合システムの3成分速度計及びDONETの広帯域地震計鉛直成分の観測データである。N-netのデータは速度計に併設されている加速度計で計測される重力の方向を基に鉛直成分を算出して使用した。重力成分は、3月8日00:00 JSTから3時間の加速度計データを時間平均して求めた。データ解析は、全観測点の速度計鉛直成分波形について1時間ごとにスペクトログラムを作成し、各スペクトログラムについて、鯨類鳴音の特徴を有する信号の存否を目視により確認した。
鯨類鳴音の特徴を有する信号の存在を確認したスペクトログラムの代表例を図1及び図2に示す。図1は、3月9日午前7時JSTから1時間のN-netのNAE15観測点におけるスペクトログラムであり、図2は3月12日午前6時JSTから1時間のDONETのMRD15観測点におけるスペクトログラムである。いずれも横軸は各正時からの経過時間(秒)を示し、縦軸は周波数(Hz)を示す。図の全体にわたって、15 Hzから30 Hz程度の周波数帯域を占める縦の筋状の信号が見られる。これらが鯨類鳴音と推定される信号である。
3月8日11時頃よりN-netの西側の観測点で鳴音を検出し始め、10日18時頃まで断続的にN-netの東端の観測点にかけて鳴音を検出した。その翌日の3月11日の11時JST頃よりDONETの西側の観測点で鳴音を検出し始め、翌12日の6時JST頃にはDONETの中央付近で検出し、13日の0時JST頃のDONETの東側の観測点での検出を最後に鳴音が検出されなくなった(図3)。
これらが同一個体の鳴音とすれば、音源がN-net及びDONETの観測網を西から東に6日間で移動した様子を捉えていることになる。
今後さらに詳細な解析を進める。
謝辞
本研究の実施に際し防災科学技術研究所の公開データ及びGEBCOの海底地形データ並びにGeneric Mapping Tools (GMT)を利用しました。ここに記して謝意を表します。また本研究の一部はJST経済安全保障重要技術育成プログラム(JPMJKP23D1)によるものです。
参考文献
Iwase, Jpn. J. Appl. Phys., 54, 07HG03, 2015.
Mochizuki et al., JpGU2025, SCG55-P26, 2025.
ところが、東海地域より西側の日本の南岸沖の海域においては、これまで海底地震計網による鯨類鳴音の検出事例はほとんどなかった。
今回、防災科学技術研究所が2024年に南海トラフ海域に設置したN-net沖合システムのほか、運用開始から10年以上が経過しているDONETを構成する地震計の波形データを調査した結果、鯨類鳴音と推定される信号を新たに検出した。
使用した波形データは、2025年3月8日から13日までの6日間のN-net沖合システムの3成分速度計及びDONETの広帯域地震計鉛直成分の観測データである。N-netのデータは速度計に併設されている加速度計で計測される重力の方向を基に鉛直成分を算出して使用した。重力成分は、3月8日00:00 JSTから3時間の加速度計データを時間平均して求めた。データ解析は、全観測点の速度計鉛直成分波形について1時間ごとにスペクトログラムを作成し、各スペクトログラムについて、鯨類鳴音の特徴を有する信号の存否を目視により確認した。
鯨類鳴音の特徴を有する信号の存在を確認したスペクトログラムの代表例を図1及び図2に示す。図1は、3月9日午前7時JSTから1時間のN-netのNAE15観測点におけるスペクトログラムであり、図2は3月12日午前6時JSTから1時間のDONETのMRD15観測点におけるスペクトログラムである。いずれも横軸は各正時からの経過時間(秒)を示し、縦軸は周波数(Hz)を示す。図の全体にわたって、15 Hzから30 Hz程度の周波数帯域を占める縦の筋状の信号が見られる。これらが鯨類鳴音と推定される信号である。
3月8日11時頃よりN-netの西側の観測点で鳴音を検出し始め、10日18時頃まで断続的にN-netの東端の観測点にかけて鳴音を検出した。その翌日の3月11日の11時JST頃よりDONETの西側の観測点で鳴音を検出し始め、翌12日の6時JST頃にはDONETの中央付近で検出し、13日の0時JST頃のDONETの東側の観測点での検出を最後に鳴音が検出されなくなった(図3)。
これらが同一個体の鳴音とすれば、音源がN-net及びDONETの観測網を西から東に6日間で移動した様子を捉えていることになる。
今後さらに詳細な解析を進める。
謝辞
本研究の実施に際し防災科学技術研究所の公開データ及びGEBCOの海底地形データ並びにGeneric Mapping Tools (GMT)を利用しました。ここに記して謝意を表します。また本研究の一部はJST経済安全保障重要技術育成プログラム(JPMJKP23D1)によるものです。
参考文献
Iwase, Jpn. J. Appl. Phys., 54, 07HG03, 2015.
Mochizuki et al., JpGU2025, SCG55-P26, 2025.

