Presentation Information
[S03-04]Spatiotemporal Evolution of the 2014–2016 Long-term Slow Slip Event in the Kii Channel: Slow Slip Propagation and LFE Activation
*Nozomi Okada1, Yuta Mitsui1, Aitaro Kato2 (1. Shizuoka University, 2. Earthquake Research Institute, the University of Tokyo)
南海トラフの大半の領域では、微動や(超)低周波地震(LFE)、短期的スロースリップイベント(SSE)を含むEpisodic Tremor and Slip (ETS)が、沈み込むフィリピン海プレートの上面深さ30–40 kmで走向方向に連なって発生し、その浅い側の一部で長期的SSEが発生している(e.g., Obara, 2010)。しかし、紀伊水道においてはETSが観測されない空白域が存在することが知られている。この空白域の浅い側を埋めるように長期的SSEが発生している可能性が指摘されており(Kobayashi, 2014)、南海トラフの他地域と空間的な特徴が異なる。紀伊水道における長期的SSEのすべり分布推定はKobayashi (2014, 2017)等で行われ、さらにOzawa et al. (2024)では時間依存インバージョンによる推定が行われているが、すべり領域の伝播は不明瞭であると報告されている。
本研究では、2014年から2016年にかけて発生したと報告されている長期的SSE (国土地理院, 2016; Kobayashi, 2017)に焦点を当て、スパース性を考慮したすべりインバージョンを行い、時空間発展の推定を行う。また、すべり分布とETS空白域、さらに近隣領域のLFEとの関係性について、議論を行う。
Global Navigation Satellite System (GNSS)時系列データの前処理として、定常トレンドおよび人為的・地震時オフセットの除去後、指数・対数関数を用いたフィッティングにより、2011年東北地方太平洋沖地震の余効変動補正を行った。GNSS時系列データにみられる共通誤差成分(e.g., Wdowinski et al., 1997)は、Ming et al. (2017)の手法を参考に、独立成分分析を用いて除去した。最後に、STL (Cleveland et al., 1990; Bandara et al., 2021)を用いて、平滑化されたトレンド成分を抽出した。
この前処理済データに基づいて、3か月の時間分解能で水平変位ベクトルを抽出し、ハミルトニアンモンテカルロ(HMC)法によるすべりインバージョンを行った。事前分布としてhorseshoe prior (Carvalho et al., 2009; 2010)を用いることで、HMC法に適した形でスパース正則化を導入することができ、従来よりも局所的なすべりを推定できる。今回は、より柔軟にパラメータを制御できるhorseshoe+ prior (Bhadra et al., 2017)を用いた。
結果は次のようになった。まず2014年1月ごろから紀伊水道ですべりが開始し、2014年10月ごろから南東方向(紀伊半島南西沖)に伝播し始めた。その後、2015年4月ごろにもっとも大きなすべりが生じ、2016年3月ごろにすべりが終了した。すべり速度が大きくなった2015年4月から2015年6月にかけて、すべり領域より若干深い側でLFE活動 (Kato and Nakagawa, 2020)の活発化が確認できた。これは、豊後水道で報告されている長期的SSEによる微動活動の活発化(Hirose et al., 2010)と同様の現象と考えられる。
今回推定されたすべり開始領域は、Ohta et al. (2023)が紀伊水道を挟む領域の微動活動から示唆した「無微動すべり」(tremorless slip)の領域と重なる。「無微動すべり」は、微動パッチを臨界応力に至らせない程度の低速なすべり(Wech and Bartlow, 2014)と考えられる。本研究で推定された長期的SSEに先行して2013年11月には四国東部で短期的SSEが発生しており(Okada et al., 2022)、これによる応力変化が紀伊水道での「無微動すべり」、さらには紀伊半島南西沖でのすべり速度増加とLFE活発化につながったことが示唆される。
本研究では、2014年から2016年にかけて発生したと報告されている長期的SSE (国土地理院, 2016; Kobayashi, 2017)に焦点を当て、スパース性を考慮したすべりインバージョンを行い、時空間発展の推定を行う。また、すべり分布とETS空白域、さらに近隣領域のLFEとの関係性について、議論を行う。
Global Navigation Satellite System (GNSS)時系列データの前処理として、定常トレンドおよび人為的・地震時オフセットの除去後、指数・対数関数を用いたフィッティングにより、2011年東北地方太平洋沖地震の余効変動補正を行った。GNSS時系列データにみられる共通誤差成分(e.g., Wdowinski et al., 1997)は、Ming et al. (2017)の手法を参考に、独立成分分析を用いて除去した。最後に、STL (Cleveland et al., 1990; Bandara et al., 2021)を用いて、平滑化されたトレンド成分を抽出した。
この前処理済データに基づいて、3か月の時間分解能で水平変位ベクトルを抽出し、ハミルトニアンモンテカルロ(HMC)法によるすべりインバージョンを行った。事前分布としてhorseshoe prior (Carvalho et al., 2009; 2010)を用いることで、HMC法に適した形でスパース正則化を導入することができ、従来よりも局所的なすべりを推定できる。今回は、より柔軟にパラメータを制御できるhorseshoe+ prior (Bhadra et al., 2017)を用いた。
結果は次のようになった。まず2014年1月ごろから紀伊水道ですべりが開始し、2014年10月ごろから南東方向(紀伊半島南西沖)に伝播し始めた。その後、2015年4月ごろにもっとも大きなすべりが生じ、2016年3月ごろにすべりが終了した。すべり速度が大きくなった2015年4月から2015年6月にかけて、すべり領域より若干深い側でLFE活動 (Kato and Nakagawa, 2020)の活発化が確認できた。これは、豊後水道で報告されている長期的SSEによる微動活動の活発化(Hirose et al., 2010)と同様の現象と考えられる。
今回推定されたすべり開始領域は、Ohta et al. (2023)が紀伊水道を挟む領域の微動活動から示唆した「無微動すべり」(tremorless slip)の領域と重なる。「無微動すべり」は、微動パッチを臨界応力に至らせない程度の低速なすべり(Wech and Bartlow, 2014)と考えられる。本研究で推定された長期的SSEに先行して2013年11月には四国東部で短期的SSEが発生しており(Okada et al., 2022)、これによる応力変化が紀伊水道での「無微動すべり」、さらには紀伊半島南西沖でのすべり速度増加とLFE活発化につながったことが示唆される。

