Presentation Information
[S03-10]An Attempt to Detect Transient Crustal Deformation from Ocean Bottom Pressure Gauge Data Using Principal Component Analysis
*Tomoki Yamada1, Ryota Hino1, Tatsuya Kubota2, Hideto Otsuka1,3, Yusaku Ohta1 (1. Graduate school of science, Tohoku University, 2. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience, 3. Seiko Gakuin Junior and Senior High School)
海底水圧計(Ocean Bottom Pressure gauge;以下,OBP)は海底に設置してその場の水圧を連続的に計測する装置で,OBPを用いた観測によって海域で発生するテクトニックな現象に伴う海底の鉛直変動が検知されることが期待されている.しかしながら,OBPデータには地殻変動の他に潮汐成分や気象・海洋変動に起因する非潮汐変動成分(以下,海洋ノイズ),さらには機器内部の変化に依存する機器ドリフトなどのノイズ成分が含まれており,地殻変動による水圧変動を測定するにはこれらのノイズを適切に除去する必要がある.特に海洋ノイズについては,その変動の時間スケールがスロースリップイベント(Slow Slip Event;以下,SSE)などで期待される非定常地殻変動の時間スケールと近いため,両者を適切に分離することが課題となっている.これまで海洋ノイズの除去についてはさまざまな手法が試みられており,例えば Inazu et al. (2012) や Sakamoto et al. (2019) に代表されるように海洋変動数値モデルによって得られる海底での水圧変動を海洋ノイズの予測値とみなして,観測データから除去する手法がしばしば用いられている.Otsuka et al. (2023) は,南海トラフに設置されたDONETで得られたOBPデータに対して主成分分析(Principal Component Analysis;以下,PCA)を適用し,第1主成分に各観測点に共通するコモンモードな変動が現れるなど,海洋ノイズに特徴的な変動パターンを示す変動成分を低次の主成分として抽出できることを示した.さらにOtsuka et al. (2023) は,テクトニックな変動のような過渡的な水圧変化が観測データに含まれた場合にはPCAの結果に時間的なゆらぎが生じることに着目し,OBPデータに対するPCAを活用した非定常地殻変動の検知手法を提案した.この手法のパフォーマンスの検証には,実際に海底地殻変動をOBP観測により捉えた事例への適用が必要だが,そうした観測事例は限られている.
本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震に先行して発生した非定常地殻変動を捉えたOBPデータに対してこの手法を適用し,既知の過渡的な変動を検出できるか評価した. 本研究ではリアルタイムでのSSEの検知への応用も視野に入れて,潮汐成分の除去には潮汐除去フィルタ(Tide Killer フィルタ)を用い,海洋ノイズ低減に海洋数値モデルによる予測値はあえて用いずに,PCAだけで処理することを試みた.東北沖のOBPデータのうち,地殻変動の発生が報告されていない期間のデータに対して,数値モデル出力を差し引いた後にPCAを行うことにより海洋ノイズ低減を行って得られた海底水圧時系列と,モデル出力の除去は行わずPCAのみで海洋ノイズ低減を行った時系列とを比較してみた.その結果,数値モデル出力による処理を行っても,行わなくても,第3主成分までを海洋ノイズとして元のOBP時系列から差し引くと,すべての観測点で同等の水圧時系列を得ることができた.このことは,PCAにより海洋変動ノイズの特徴を推定することが可能で,海洋数値モデルを利用した場合と同程度のパフォーマンスでその除去を実現できることを意味する.
次に,先行研究により非定常地殻変動の発生が報告されている東北沖地震の発生前の約4か月間のOBPデータを短い時間窓で切り出してPCAを行い,時間窓を移動させることにより,各時間窓内でのOBPデータを構成する主成分の時間変化を調べてみた.主成分の変化は,各主成分に対応する固有ベクトルの方向の違いを反映した量(正規化内積,Normalized Inner Product;NIP,Otsuka et al. 2023)を用いて評価した.時間窓の長さを50日および60日に設定した場合,第1・第2成分のNIPが時間的に安定しているのに対して,第3・第4主成分のNIPは,移動時間窓が2011年2月に差し掛かる時期から低下しはじめ,その後およそ40日間,第3主成分はおよそ0.6程度で,第4主成分はおよそ0.2程度で推移していた.Ito et al. (2013) は,同じOBPのデータを含めた複数の地震・測地学データの総合解析から,SSEが2011年2月からおよそ40日間継続したと報告しており,本研究で得られたNIPの変化はこのSSEに起因する水圧変動に対応している可能性がある.今後,NIPの低下が見られた第3・第4主成分に着目して,検知された水圧変動の特徴を分析することを通してその要因を考察し,NIPの時間変化に着目した非定常地殻変動の検出手法の実用性について議論する.
本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震に先行して発生した非定常地殻変動を捉えたOBPデータに対してこの手法を適用し,既知の過渡的な変動を検出できるか評価した. 本研究ではリアルタイムでのSSEの検知への応用も視野に入れて,潮汐成分の除去には潮汐除去フィルタ(Tide Killer フィルタ)を用い,海洋ノイズ低減に海洋数値モデルによる予測値はあえて用いずに,PCAだけで処理することを試みた.東北沖のOBPデータのうち,地殻変動の発生が報告されていない期間のデータに対して,数値モデル出力を差し引いた後にPCAを行うことにより海洋ノイズ低減を行って得られた海底水圧時系列と,モデル出力の除去は行わずPCAのみで海洋ノイズ低減を行った時系列とを比較してみた.その結果,数値モデル出力による処理を行っても,行わなくても,第3主成分までを海洋ノイズとして元のOBP時系列から差し引くと,すべての観測点で同等の水圧時系列を得ることができた.このことは,PCAにより海洋変動ノイズの特徴を推定することが可能で,海洋数値モデルを利用した場合と同程度のパフォーマンスでその除去を実現できることを意味する.
次に,先行研究により非定常地殻変動の発生が報告されている東北沖地震の発生前の約4か月間のOBPデータを短い時間窓で切り出してPCAを行い,時間窓を移動させることにより,各時間窓内でのOBPデータを構成する主成分の時間変化を調べてみた.主成分の変化は,各主成分に対応する固有ベクトルの方向の違いを反映した量(正規化内積,Normalized Inner Product;NIP,Otsuka et al. 2023)を用いて評価した.時間窓の長さを50日および60日に設定した場合,第1・第2成分のNIPが時間的に安定しているのに対して,第3・第4主成分のNIPは,移動時間窓が2011年2月に差し掛かる時期から低下しはじめ,その後およそ40日間,第3主成分はおよそ0.6程度で,第4主成分はおよそ0.2程度で推移していた.Ito et al. (2013) は,同じOBPのデータを含めた複数の地震・測地学データの総合解析から,SSEが2011年2月からおよそ40日間継続したと報告しており,本研究で得られたNIPの変化はこのSSEに起因する水圧変動に対応している可能性がある.今後,NIPの低下が見られた第3・第4主成分に着目して,検知された水圧変動の特徴を分析することを通してその要因を考察し,NIPの時間変化に着目した非定常地殻変動の検出手法の実用性について議論する.
