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[S04-06]A hypothesis on the variability of P-axis direction and degree of coupling between PHS slab and terrestrial plate around Ise Bay

*Taku KOMATSUBARA1 (1. Lake Biwa Museum)
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1.はじめに
 伊勢湾周辺では,南北性逆断層(伊勢湾断層帯,養老-桑名-四日市断層帯など)と東西性逆断層(白子-野間断層,多度撓曲など)が,共に後期更新世以降活動している(たとえば岡田・東郷,2000;小松原・佐藤,2025).当地でP軸方位が大きく異なる応力場を反映した活断層が共存する要因に関する作業仮説を提案する.
 2.地殻内地震のP軸方位,PHSスラブ深度および南海トラフ巨大地震前後の内陸地震
 この3つの点から,伊勢湾周辺(近畿三角帯東南縁)の地球物理的特徴や特異性を列挙する.
・Uchide et al. (2022),産総研地質調査総合センター(2025)は,深さ約20km以浅で生じた地震の起震応力を示している.それによると伊勢湾周辺の地殻内地震では,P軸方位が北東-南西ないし東西方向,運動センスは逆断層ないし横ずれ断層のものが卓越しており,南北方向のP軸をもつ逆断層型の地震は観測されていない.このP軸方位はPHSプレートの進行方向と大きく斜交する.また南海トラフ周辺を俯瞰すると,P軸方位がPHSプレート進行方向と平行に近い地殻内地震は,日向沖や紀伊半島南部周辺などスラブ深度20km以浅の場で多く,スラブ深度が30km以深の陸域地下ではP軸方位がPHSプレート進行方向と平行する地震は少ない.
・伊勢湾周辺(近畿三角帯東部)におけるPHSスラブ上面深度は,30km前後であり(三好・石橋,2004;長谷川ほか,2010;Zhao et al., 2021など),日本列島陸域との中ではスラブ深度が浅い本州~四国南岸においても,特に内陸奥までスラブの浅い部分が尾根状に伸びている場所に相当する.
・1944年の昭和東南海地震の約1か月後に深溝断層と横須賀断層を起震断層とする三河地震(M=6.8)が発生した.深溝断層は外帯の活断層のうち最も海溝近く(活断層フロント)に位置し,平均変位速度は0.1m/1000年以下と小さい(岡田,2006).南海トラフ巨大地震の前後に活断層フロントの低活動度断層が活動した事例は,この他に安政東南海地震の約半年前に木津川断層で生じた安政伊賀地震(M=7.5前後)の例が知られている.2つの地震は,共に逆断層成分を伴う右ずれ断層運動で,北側地塊が東に移動した.
 3.伊勢湾周辺に2方向の逆断層が存在する理由と,そのテクトニクスに関する作業仮説
 伊勢湾東部(近畿三角帯南東部)において地形・地質学的時間尺度(1000~100万年程度の時間スケール)で見ると同時に2つの異なるP軸方位の断層運動が生じる機構について,上記の地震学的・構造的特徴を基に説明することを試みる.
 PHSプレートの北西進と,陸側プレート(特にアムールプレート)の東進が重複する場では,両者間の媒質に南北方向の短縮を伴うねじれ変形が生じうる.このため,①PHSスラブと陸側プレートの結合(カップリング)が弱い状態では,陸側プレートの地殻内には,陸側プレート単独の動きを反映した東西短縮が,②両プレートの結合が強い状態では,両者間の媒質で両プレートの動きを反映した南北短縮を伴うねじれ変形が,それぞれ生じてもおかしくないのではないだろうか.特にスラブ上面深度が30km程度と比較的浅い伊勢湾周辺では,プレート間巨大地震前後のようなプレート間結合が弱い(≒媒質の粘性が低い?)状態で地殻内の東西短縮が,逆にプレート間結合が強い(≒媒質の粘性が強い?)状態でPHSスラブの動きに引きずられて南北短縮が,それぞれ生じやすくなる可能性があるのではないだろうか.
 もしこの仮説が成り立つなら,伊勢湾周辺では両プレート間の結合が時間とともに変化すること,東西走向逆断層は現在(巨大地震前?)と異なってプレート間の結合が強化された状態(アセノスフェアの粘性が高い状態?)で活動するのではないだろうか?
 以上は,普段地球物理学から離れた領域(地形学)を学んでいる演者の妄想であろうか.批判を仰ぎたい.

 文献
長谷川ほか (2010) 地学雑誌,119,190-204.
小松原・佐藤 (2025) 海陸シームレス地質情報集 S-8 (7).
三好・石橋 (2004) 地震,57,139-152.
岡田 (2006) 活断層研究,26,163-191.
岡田・東郷 (2000) 近畿の活断層.東京大学出版会,408p.
産総研地質調査総合センター (2025) 地殻応力場データベース.(https://gbank.gsj.jp/crstress/)
Uchide et al. (2022) JGR, doi.org/10.1029/2022JB0240
Zhao et al. (2021) Tectonophysics, 802,228743.