Presentation Information
[S08-10]Numerical modeling of recurrence of Kanto earthquakes and the effect on the Boso slow slip events
*Takanori MATSUZAWA1, Bunichiro Shibazaki2 (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience, 2. Building Research Institute)
1.はじめに
関東地方では,フィリピン海プレートと陸側プレートの境界で200~300年程度の間隔で大地震(関東地震)が繰り返し発生するとともに,房総半島南東沖ではスロースリップイベント(SSE)が発生している.こうした大地震のうち,1923年の関東地震(大正関東地震)では小田原および三浦半島付近で大きなすべりが発生したが, 1703年の関東地震(元禄関東地震)ではさらに安房沖でも大きなすべりが発生したと推定されている.後者のタイプの地震(以下,元禄型地震)の発生間隔は,前者のタイプの地震(以下,大正型地震)に比べ,長い発生間隔を示す(e.g., Komori et al., 2021).近年,Saito and Noda (2023)は,GNSSデータから直接応力蓄積レートを推定することで,関東地方に沈み込むフィリピン海プレートと陸側プレートの境界における応力蓄積レートを推定し,小田原,三浦半島,安房沖,房総沖付近に,それぞれ応力蓄積レートの高い領域が存在することを示した.本発表では,これに基づいて摩擦パラメターを設定し,二種類の関東地震および房総沖で発生するスロースリップイベント(以下,房総SSE)の発生をシミュレーションし,房総SSEの発生挙動に与える影響の議論を試みた.
2.計算手法・モデル
数値シミュレーションにおいては,Matsuzawa et al. (2010, 2013)と同様にカットオフ速度を考慮したすべり速度・状態依存摩擦則を仮定し,各要素上でのすべり速度および摩擦の時間発展を計算した.計算領域は伊豆半島から房総半島沖の範囲とし,沈み込むフィリピン海プレートと陸側プレートの境界面の形状を約73,000個の三角形要素で表現した.すべり速度・状態依存摩擦則の(a-b)値については,Saito and Noda (2023)に基づき,応力蓄積レートの高い領域付近で(a-b)が負となるように設定し,それ以外の領域は正となるよう設定した.房総沖SSE領域においては,Matsuzawa et al. (2010)と同様に,同じ深さの周囲の箇所に比べ,有効法線応力が低くなるよう設定した.さらに,大正・元禄関東地震のすべり域を比較すると,安房沖の領域は大正型地震においてバリアー的にふるまうことが考えれる.これを考慮するため,安房沖に周囲より4倍高い有効法線応力をもった領域を導入した場合(モデル1)と,それが無い場合(モデル2)を設定し,数値シミュレーションを行った.
3.結果・議論
数値計算結果においては,両モデルにおいて,応力蓄積レートの高い領域付近で,大地震およびSSEがそれぞれ200~300年間隔および6~7年間隔で繰り返し発生した.しかしながら,モデル2においてはほとんどの地震が元禄型となる一方,モデル1では元禄型と大正型の両方の地震が発生し,その繰り返しはそれぞれ1000年程度および200~300年程度であった.元禄型の地震の発生間隔については,モデル1の方が観測や歴史記録に整合的であるが,例えばKomori et al. (2021)は地質学的な調査から1300-2000年の発生間隔を推定しており,やや短い結果となっている. こうしたパラメターの設定については,今後さらなる検討が必要である.
房総SSEは7~8年間隔で繰り返し発生しており,モデル2では元禄型地震の発生サイクル後半に間隔が短くなる傾向がみられた.これは既往の研究(Matsuzawa et al., 2010)と整合的な結果である.一方モデル1の場合,この傾向はそれほど明瞭でない.これは大地震の強い固着域とSSEのパッチが近接して位置していることによる影響と考えられる.
謝辞:本研究は科研費補助金(JP21H05206)によって補助されました.また数値計算については,東京大学地震研究所共同利用(2025-S-B103)の補助をうけました.
関東地方では,フィリピン海プレートと陸側プレートの境界で200~300年程度の間隔で大地震(関東地震)が繰り返し発生するとともに,房総半島南東沖ではスロースリップイベント(SSE)が発生している.こうした大地震のうち,1923年の関東地震(大正関東地震)では小田原および三浦半島付近で大きなすべりが発生したが, 1703年の関東地震(元禄関東地震)ではさらに安房沖でも大きなすべりが発生したと推定されている.後者のタイプの地震(以下,元禄型地震)の発生間隔は,前者のタイプの地震(以下,大正型地震)に比べ,長い発生間隔を示す(e.g., Komori et al., 2021).近年,Saito and Noda (2023)は,GNSSデータから直接応力蓄積レートを推定することで,関東地方に沈み込むフィリピン海プレートと陸側プレートの境界における応力蓄積レートを推定し,小田原,三浦半島,安房沖,房総沖付近に,それぞれ応力蓄積レートの高い領域が存在することを示した.本発表では,これに基づいて摩擦パラメターを設定し,二種類の関東地震および房総沖で発生するスロースリップイベント(以下,房総SSE)の発生をシミュレーションし,房総SSEの発生挙動に与える影響の議論を試みた.
2.計算手法・モデル
数値シミュレーションにおいては,Matsuzawa et al. (2010, 2013)と同様にカットオフ速度を考慮したすべり速度・状態依存摩擦則を仮定し,各要素上でのすべり速度および摩擦の時間発展を計算した.計算領域は伊豆半島から房総半島沖の範囲とし,沈み込むフィリピン海プレートと陸側プレートの境界面の形状を約73,000個の三角形要素で表現した.すべり速度・状態依存摩擦則の(a-b)値については,Saito and Noda (2023)に基づき,応力蓄積レートの高い領域付近で(a-b)が負となるように設定し,それ以外の領域は正となるよう設定した.房総沖SSE領域においては,Matsuzawa et al. (2010)と同様に,同じ深さの周囲の箇所に比べ,有効法線応力が低くなるよう設定した.さらに,大正・元禄関東地震のすべり域を比較すると,安房沖の領域は大正型地震においてバリアー的にふるまうことが考えれる.これを考慮するため,安房沖に周囲より4倍高い有効法線応力をもった領域を導入した場合(モデル1)と,それが無い場合(モデル2)を設定し,数値シミュレーションを行った.
3.結果・議論
数値計算結果においては,両モデルにおいて,応力蓄積レートの高い領域付近で,大地震およびSSEがそれぞれ200~300年間隔および6~7年間隔で繰り返し発生した.しかしながら,モデル2においてはほとんどの地震が元禄型となる一方,モデル1では元禄型と大正型の両方の地震が発生し,その繰り返しはそれぞれ1000年程度および200~300年程度であった.元禄型の地震の発生間隔については,モデル1の方が観測や歴史記録に整合的であるが,例えばKomori et al. (2021)は地質学的な調査から1300-2000年の発生間隔を推定しており,やや短い結果となっている. こうしたパラメターの設定については,今後さらなる検討が必要である.
房総SSEは7~8年間隔で繰り返し発生しており,モデル2では元禄型地震の発生サイクル後半に間隔が短くなる傾向がみられた.これは既往の研究(Matsuzawa et al., 2010)と整合的な結果である.一方モデル1の場合,この傾向はそれほど明瞭でない.これは大地震の強い固着域とSSEのパッチが近接して位置していることによる影響と考えられる.
謝辞:本研究は科研費補助金(JP21H05206)によって補助されました.また数値計算については,東京大学地震研究所共同利用(2025-S-B103)の補助をうけました.
