Presentation Information
[S08-16]Near-trench rupture of the 2011 Tohoku earthquake: along-strike stress variation by in-situ tsunami data and 3-D subsurface structure
*Tatsuya Kubota1, Tatsuhiko Saito1 (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)
2011年東北地震では,宮城県沖のプレート境界の浅部で50 mを超える大すべりが生じ,巨大な津波を引き起こした (e.g. Kodaira et al. 2020).浅部すべりは津波を効率的に励起するため津波データは浅部すべりに関する有用な情報を持つ.このことからKubota et al. (2022) は,震源域直上の津波データを活用して東北地震の断層すべりとその駆動源である応力の解消 (応力降下) の分布を推定し,浅部すべりの生じたメカニズムを議論した.一方で,Kubota et al. (2022) における変位や応力変化の計算においては,半無限の均質構造 (Meade 2005)を仮定しており,構造の不均質性や海底地形などの3次元構造を考慮していなかった.これらの3次元構造が,津波の励起やすべり・応力降下の推定に影響を与えることが従来から指摘されており (e.g. Williams & Wallace, 2018; Zhu et al., 2025),Kubota et al. (2022)で推定されたすべりや応力降下も正しく推定できていない可能性がある.本研究では,より現実的な3次元構造を解析に組み込むことで,従来のKubota et al. (2022) よりも現実的な応力降下分布を推定し,均質構造を仮定した従来結果との違いを考察する.
本研究では,有限要素法によるフォワード計算 (Aagaard et al., 2013) に基づいてプレート境界面上の応力変化を計算する.有限要素計算の入力となる地震時すべり分布には,半無限均質構造を仮定して推定されたKubota et al. (2022) のものを用いる.有限要素計算に用いる構造モデルでは,沈み込む海洋性プレートと大陸地殻,それらの下のマントル,および海溝軸近傍の堆積層付加体 (Tsuru et al. 2002; Ma 2023) を考慮した.構造の物性値 (P波速度,S波速度,密度) には,Koketsu et al. (2012) の値を参考にした.
本計算により得られた海面上下変位分布について,隆起は海溝軸付近に集中し,最大隆起量は約10 mであった.この分布パターンと最大隆起量は均質構造を仮定した場合 (Kubota et al. 2022) でも同様であることから,3次元構造が海面の変位すなわち津波励起に与える影響は限定的であると考えられる (Zhu et al. 2025).Kubota et al. (2022) のすべり分布の推定ではおもに津波データを使用したことを踏まえると,Kubota et al. (2022) のすべり推定に対して3次元構造が与える影響は有意ではないと解釈される.
また,応力は,宮城沖のプレート境界において,主に深部で解放され (> 5 MPa,最大約10 MPa,深さ約15 km),浅部では有意な応力解消はみられなかった (< 3 MPa,深さ < 10 km).この深部と浅部の応力降下空間パターンの違いは,剛性率を一定と仮定したKubota et al. (2022) のものと同様であった.この結果は,宮城沖 (約38°N) の海溝近傍の大すべりは,深部で生じたひずみエネルギーの解放が引き起こされたとするKubota et al. (2022) の解釈を支持する.いっぽうで,応力降下分布は南北方向で違いがみられた.三陸沖 (約39.5°N) では,海溝軸近傍の堆積層付加体の影響により,わずか数MPaの小さな応力降下でも10 mを超える大きな浅部すべりが生じていた.これは,5 MPaを超える応力降下を必要としたKubota et al. (2022) の結果と対照的であった.福島沖 (約37°N) では,プレート境界浅部 (深さ10km以浅) で5MPaを超える有意な応力降下が生じたが,これは均質構造を仮定した場合にはみられないものであった.現実的な3次元構造を考慮することにより,応力降下分布の南北方向の違いが確認されたが,これは,プレート境界全体にわたる応力の蓄積過程が,南北方向に沿ってセグメント化されていることを示唆しているのかもしれない.
本研究では,有限要素法によるフォワード計算 (Aagaard et al., 2013) に基づいてプレート境界面上の応力変化を計算する.有限要素計算の入力となる地震時すべり分布には,半無限均質構造を仮定して推定されたKubota et al. (2022) のものを用いる.有限要素計算に用いる構造モデルでは,沈み込む海洋性プレートと大陸地殻,それらの下のマントル,および海溝軸近傍の堆積層付加体 (Tsuru et al. 2002; Ma 2023) を考慮した.構造の物性値 (P波速度,S波速度,密度) には,Koketsu et al. (2012) の値を参考にした.
本計算により得られた海面上下変位分布について,隆起は海溝軸付近に集中し,最大隆起量は約10 mであった.この分布パターンと最大隆起量は均質構造を仮定した場合 (Kubota et al. 2022) でも同様であることから,3次元構造が海面の変位すなわち津波励起に与える影響は限定的であると考えられる (Zhu et al. 2025).Kubota et al. (2022) のすべり分布の推定ではおもに津波データを使用したことを踏まえると,Kubota et al. (2022) のすべり推定に対して3次元構造が与える影響は有意ではないと解釈される.
また,応力は,宮城沖のプレート境界において,主に深部で解放され (> 5 MPa,最大約10 MPa,深さ約15 km),浅部では有意な応力解消はみられなかった (< 3 MPa,深さ < 10 km).この深部と浅部の応力降下空間パターンの違いは,剛性率を一定と仮定したKubota et al. (2022) のものと同様であった.この結果は,宮城沖 (約38°N) の海溝近傍の大すべりは,深部で生じたひずみエネルギーの解放が引き起こされたとするKubota et al. (2022) の解釈を支持する.いっぽうで,応力降下分布は南北方向で違いがみられた.三陸沖 (約39.5°N) では,海溝軸近傍の堆積層付加体の影響により,わずか数MPaの小さな応力降下でも10 mを超える大きな浅部すべりが生じていた.これは,5 MPaを超える応力降下を必要としたKubota et al. (2022) の結果と対照的であった.福島沖 (約37°N) では,プレート境界浅部 (深さ10km以浅) で5MPaを超える有意な応力降下が生じたが,これは均質構造を仮定した場合にはみられないものであった.現実的な3次元構造を考慮することにより,応力降下分布の南北方向の違いが確認されたが,これは,プレート境界全体にわたる応力の蓄積過程が,南北方向に沿ってセグメント化されていることを示唆しているのかもしれない.
