Presentation Information
[S08-28]Source fault reconstruction of the 2025 Myanmar earthquake from teleseismic wavefields
*Daisuke Sato1, Ryo Okuwaki2, Yuji Yagi2, Yukitoshi Fukahata3 (1. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 2. Tsukuba University, 3. Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University)
2025年3月28日、ミャンマー、マンダレー近郊にてマグニチュード7.7の地震が発生した。その破壊は、22.011°N, 95.936°E, 深さ10kmを震源とする右横ずれ型(USGS, 2025)である。主破壊域のひとつとなったメイッティーラセグメントは地震準備過程にあるサイスミックギャップとして破壊自体は予期されていた(Hurukawa & Maung Maung, 2011)が、今回の地震は同セグメントを破壊した後更に南下しており、400kmに及ぶその破壊過程は想定されていたより複雑である(Mai et al., 2025)。破壊開始点や破壊エピソードは断層地形や地形特徴を反映した断層セグメントと相関しており(e.g., Hla Hla Aung, 2025; Inoue et al., 2025)、断層形状と破壊過程の関係性は一層の検討の余地がある。ごく最近、我々は、震源球分布から三次元断層形状を再構成する手法を提案した(Sato et al., arXiv:2506.14082)。同手法をポテンシー密度テンソルインバージョン(PDTI; Kikuchi & Kanamori, 1991)に組み合わせ、本研究はミャンマー地震の震源断層再構成を図る。
解析は、最新型のPDTI (Shimizu et al., 2020; 2021; Yamashita et al., 2022)と、上記のポテンシー分布からの断層形状の再構成からなる。PDTI計算ルーチンは、モデルパラメターへのグリーン関数誤差の伝播を加味するYagi & Fukahata (2011)の手法に基づいたスキーム(Shimizu et al., 2020)が素案であり、時空間スムージングが時間アダプティブになるよう改善が加えられている(Yamashita et al., 2022)。求解は、形状を固定したポテンシー密度レートの推定とポテンシー密度レートを固定した形状再構成の交互反復である(Shimizu et al., 2021)。このフレームワークに上述の形状再構成法を組み込み、三次元断層形状を推定した。形状再構成は、震源球節面から期待される断層法線ベクトル場を最もよく説明する面を構成するよう設計されている。つまり、ここでいう断層形状とは、推定された非弾性歪(ポテンシー)の分布を変位不連続場として最もよく近似する疑似曲面である。データ処理及びデータセレクションは現行PDTIで同地震の遠地P波の鉛直成分を解析したInoue et al. (2025)を踏襲し、形状再構成だけが彼らとの違いである。
Inoue et al. (2025)で示された通り、破壊は南下し、断層セグメントと相関する3エピソードに分かれる。サガインセグメントを壊した第1エピソード、メイッティーラセグメントを壊した第2エピソード、そしてネピドーセグメントを壊した第3エピソード。今回の形状再構成によると、これらが属する南サガイン断層系は南下するにつれ時計回りに回転するスクリュー状の形状をなし、各セグメントは異なる傾斜角を持っている。個々のセグメントを平面で近似することによって、Tin et al. (2022)は地震間の測地解析で同様の形状特徴を報告しており、これに我々の結果は整合する。震源以南約50kmにあるサガイン・メイッティーラセグメントジャンクションで、傾斜角は約60度から約80度へ遷移し、西に分岐断層が伸び始めるメイッティーラ・ネピドーセグメントジャンクションで微小ながら東傾斜は西傾斜へ転じる。より以南のピューセグメントは、比較的滑り量の小さい領域であって形状の精度は高くないが、再度東に傾斜している。
Melgar et al. (2025)は、鉛直平面断層とTin et al. (2022)に準拠したスクリュー状断層の波形適合性を比較し、残差に明瞭な優劣がないことを指摘したが、P波極性からは明らかに走向変化に伴う断層傾斜角の変化が見て取れる。このような形状の特徴量である震源球に基づいて断層形状を再構成したからこそ、期待された通りの断層傾斜を捉えることができたと考えられる。一方、波形単体から再構成される断層の地表形状は地表断層で見えるよりうねっていて、これはおそらく断層走向より断層傾斜に感度があるという遠地波形の性格からくる課題と解釈される。浅部の形状のうねりを抑える拘束を課すことで、測地観測や地表断層とより整合的な形状が構成された。
セグメント境界での走向角異常の研究事例に比べ、セグメント境界での傾斜角の急変の報告は限られており、今回検出したスクリュー状の断層形状が破壊停止に果たした役割は改めて力学的な考察を必要とする。個々のセグメントは弓なりになってセグメントジャンクションは東に張り出しており、これをrestraining bendとみれば各破壊エピソードの破壊フロントがセグメント南端でせき止められたのと整合する。しかし、走向角の変化は傾斜角のそれに比べて顕著ではなく、上の必ずしも地表断層から支持されない再構成走向の挙動を踏まえるに、検出精度も含めて精査が必要である。Lozos (2021)は滑らかな非平面断層を解析し、二次元的な断層曲げだけでなく三次元的な断層ねじれも破壊停止を生じうることを横ずれ断層の動的破壊シミュレーションで観察し、広域応力からの斜交と破壊進展方向の変化によるエネルギー収支の崩れからこれを解釈している。滑らかな断層での捩率に関する彼らの結果は今回の形状と破壊の相関について無理のない説明を与えるが、サガイン断層系のセグメントはジャンクションに断層地形を生じており、セグメント境界は高解像度には裂けていると見たほうが適切かもしれない。それがスムージングでつながって滑らかに見えているのが我々の推定結果だとすれば、セグメント境界近辺で傾斜角が急変したという今回の結果も無理なく解釈でき、ここで破壊が何度となく止まりかけたというのも自然である。データによって震源断層形状が再構成されたことで、何が地震を止めたのかという力学的問により踏み込んで答える事ができそうに見える。
解析は、最新型のPDTI (Shimizu et al., 2020; 2021; Yamashita et al., 2022)と、上記のポテンシー分布からの断層形状の再構成からなる。PDTI計算ルーチンは、モデルパラメターへのグリーン関数誤差の伝播を加味するYagi & Fukahata (2011)の手法に基づいたスキーム(Shimizu et al., 2020)が素案であり、時空間スムージングが時間アダプティブになるよう改善が加えられている(Yamashita et al., 2022)。求解は、形状を固定したポテンシー密度レートの推定とポテンシー密度レートを固定した形状再構成の交互反復である(Shimizu et al., 2021)。このフレームワークに上述の形状再構成法を組み込み、三次元断層形状を推定した。形状再構成は、震源球節面から期待される断層法線ベクトル場を最もよく説明する面を構成するよう設計されている。つまり、ここでいう断層形状とは、推定された非弾性歪(ポテンシー)の分布を変位不連続場として最もよく近似する疑似曲面である。データ処理及びデータセレクションは現行PDTIで同地震の遠地P波の鉛直成分を解析したInoue et al. (2025)を踏襲し、形状再構成だけが彼らとの違いである。
Inoue et al. (2025)で示された通り、破壊は南下し、断層セグメントと相関する3エピソードに分かれる。サガインセグメントを壊した第1エピソード、メイッティーラセグメントを壊した第2エピソード、そしてネピドーセグメントを壊した第3エピソード。今回の形状再構成によると、これらが属する南サガイン断層系は南下するにつれ時計回りに回転するスクリュー状の形状をなし、各セグメントは異なる傾斜角を持っている。個々のセグメントを平面で近似することによって、Tin et al. (2022)は地震間の測地解析で同様の形状特徴を報告しており、これに我々の結果は整合する。震源以南約50kmにあるサガイン・メイッティーラセグメントジャンクションで、傾斜角は約60度から約80度へ遷移し、西に分岐断層が伸び始めるメイッティーラ・ネピドーセグメントジャンクションで微小ながら東傾斜は西傾斜へ転じる。より以南のピューセグメントは、比較的滑り量の小さい領域であって形状の精度は高くないが、再度東に傾斜している。
Melgar et al. (2025)は、鉛直平面断層とTin et al. (2022)に準拠したスクリュー状断層の波形適合性を比較し、残差に明瞭な優劣がないことを指摘したが、P波極性からは明らかに走向変化に伴う断層傾斜角の変化が見て取れる。このような形状の特徴量である震源球に基づいて断層形状を再構成したからこそ、期待された通りの断層傾斜を捉えることができたと考えられる。一方、波形単体から再構成される断層の地表形状は地表断層で見えるよりうねっていて、これはおそらく断層走向より断層傾斜に感度があるという遠地波形の性格からくる課題と解釈される。浅部の形状のうねりを抑える拘束を課すことで、測地観測や地表断層とより整合的な形状が構成された。
セグメント境界での走向角異常の研究事例に比べ、セグメント境界での傾斜角の急変の報告は限られており、今回検出したスクリュー状の断層形状が破壊停止に果たした役割は改めて力学的な考察を必要とする。個々のセグメントは弓なりになってセグメントジャンクションは東に張り出しており、これをrestraining bendとみれば各破壊エピソードの破壊フロントがセグメント南端でせき止められたのと整合する。しかし、走向角の変化は傾斜角のそれに比べて顕著ではなく、上の必ずしも地表断層から支持されない再構成走向の挙動を踏まえるに、検出精度も含めて精査が必要である。Lozos (2021)は滑らかな非平面断層を解析し、二次元的な断層曲げだけでなく三次元的な断層ねじれも破壊停止を生じうることを横ずれ断層の動的破壊シミュレーションで観察し、広域応力からの斜交と破壊進展方向の変化によるエネルギー収支の崩れからこれを解釈している。滑らかな断層での捩率に関する彼らの結果は今回の形状と破壊の相関について無理のない説明を与えるが、サガイン断層系のセグメントはジャンクションに断層地形を生じており、セグメント境界は高解像度には裂けていると見たほうが適切かもしれない。それがスムージングでつながって滑らかに見えているのが我々の推定結果だとすれば、セグメント境界近辺で傾斜角が急変したという今回の結果も無理なく解釈でき、ここで破壊が何度となく止まりかけたというのも自然である。データによって震源断層形状が再構成されたことで、何が地震を止めたのかという力学的問により踏み込んで答える事ができそうに見える。
