Presentation Information
[S15-06]Ground motion model for crustal earthquakes evaluated from a database that combines observational data and simulation data
*Yusuke TOMOZAWA1, Tomoki HIKITA1, Junki YAMAGUCHI1, Yangyang LI1, Toshihide SAKA1 (1. Kajima Technical Research Institute)
1.はじめに
地震動予測モデル (GMM) の課題はいくつかあるが,伝播経路特性の不均質性や震源特性の空間変動のNonergodic成分の考慮による高精度化や,観測記録が少ないまたはない領域での予測の説明性向上は地震動ハザード評価の高度化に重要である。後者の課題については観測データのみからでは改善が困難であるため,観測データとシミュレーションデータを融合し拡充したデータセットに基づきGMMの構築を試みた(図1)。シミュレーションデータには観測データと同等の特性が反映されていることが重要であると考える。そこで,まず観測データを用いて経験的特性を抽出し,経験的特性を反映したシミュレーションデータを作成し,観測データを融合させてGMM構築に利用した。
2.観測データに基づく経験的特性の評価
K-NET,KiK-netの観測開始から2024年12月末までの観測データを用いて振幅特性と経時特性の経験的特性を評価する。振幅特性としてはGeneralized Inversion Technique (GIT) (例えば,友澤・引田, 2025; JpGU)に基づき日本全国の不均質減衰構造,各観測点の経験的サイト増幅率,応力降下量の空間分布を推定する。経時特性としてはConditional Generative Adversarial Networks (cGAN) に基づく観測点固有の経験的特性 (Yamaguchi et al., 2024; 山口・他,本大会) を推定する。
3.経験的特性を反映したシミュレーションデータの拡充
K-NET,KiK-net観測点の地表を評価位置としたシミュレーションを行ってデータの拡充を行う。全国にランダムに配置したMw 5.0~6.4の点震源を仮定した仮想の地震と,J-SHISから公開されているMw 6.3~7.9の想定地震を対象とした。断層最短距離200 kmまでの観測点を対象とし,仮想の地震は1000地震・58494記録を評価し,想定地震はJ-SHISから断層パラメータが公開されている217断層を評価する。断層によってはアスペリティー位置や破壊開始点等をばらつかせた複数ケースが公開されているため,それらを独立の地震として扱う。前節で推定した経験的特性,つまり,フーリエ振幅スペクトルにはGITから評価したM0-fc関係の空間変動,不均質Q値構造,観測点ごとの経験的特性を考慮し,経時特性にはcGANに基づく経験的特性を考慮して仮想の地震の評価を行い,想定地震では波形合成手法のグリーン関数にこれらの経験的特性を考慮する。
4.観測データとシミュレーションデータの融合
観測データは強震動データフラットファイル2024年版 (Morikawa et al., 2024) のうち地殻内地震の241,477記録を用いた。シミュレーションデータは時刻歴波形で出力されているが,ここでは最大加速度や応答スペクトル等の地震動指標へ変換して融合する。観測データとシミュレーションデータの比較のため,地震規模 (Mw) ‐ 断層最短距離 (Xsh) 空間を小領域(以降,メッシュと呼ぶ)に離散化し,各メッシュに含まれる地震動強さの分布を比較する。なお,メッシュ分割はMwを0.1刻み,Xshは1オーダー当たり10分割とした。あるメッシュを例に最大加速度の分布を比較した結果を図2に示す。多数の地震による多数の観測点のデータを比較しているためばらつきは大きいが,平均値と標準偏差が概ね整合している。なお,シミュレーションは地盤が線形と仮定した場合の結果である。地点固有の時刻歴波形を評価しているため,地盤モデルに基づき工学的基盤相当までひきもどし,非線形特性を仮定した地盤応答解析により地盤の非線形化の影響も今後検討予定である。
5.予測モデルの構築
伝播経路特性の関数形を仮定せずメッシュごとの地震動指標を予測する項 μ(Mw, Xsh),震源励起特性の空間変動を表す項δL2L,伝播経路特性の空間的な不均質性を表す項δP2P,観測点ごとの揺れやすさの違いを表す項δS2Sでモデル化する。μ(Mw, Xsh) は,メッシュごとの地震動強さの中央値,地震間誤差δBmと地震内誤差δWmnに分離する手法 (友澤・他, 2022, JpGU) を参考に,δP2Pも考慮するように修正する。ここで,δP2PはGITにより推定したブロックごとのQ値と全領域均質な減衰構造を仮定したQ値の単位距離あたりのフーリエ振幅の差分を先験情報として与え,ブロックごとの伝播距離と掛け合わせた量(つまり,全国平均の伝播経路特性からの偏差)に比例するようにモデル化する。分離したδBmとGITにより推定した応力降下量には明瞭な関係性がみられ,応力降下量が大きいほどδBmが大きい傾向があった。予測モデルへは応力降下量を直接入力パラメータとするのではなく,地理的荷重回帰を用いて震源位置と応力降下量の推定値を関連付け,震源位置をパラメータとしてδL2Lをモデル化する。評価に用いた既知の観測点(K-NET,KiK-net)では経験的サイト係数が推定されているが,観測記録がない任意地点のサイト特性は地盤条件を介して予測する。李・他(2025,本大会)を参照し,任意地点の地盤条件を入力として,既知観測点の経験的サイト係数との類似度を確率値として出力し,その重み付き平均をその任意地点のサイト係数とする。
謝辞
防災科学技術研究所K-NET,KiK-netの観測記録とF-netのメカニズム解を活用させていただきました。記して感謝します。
地震動予測モデル (GMM) の課題はいくつかあるが,伝播経路特性の不均質性や震源特性の空間変動のNonergodic成分の考慮による高精度化や,観測記録が少ないまたはない領域での予測の説明性向上は地震動ハザード評価の高度化に重要である。後者の課題については観測データのみからでは改善が困難であるため,観測データとシミュレーションデータを融合し拡充したデータセットに基づきGMMの構築を試みた(図1)。シミュレーションデータには観測データと同等の特性が反映されていることが重要であると考える。そこで,まず観測データを用いて経験的特性を抽出し,経験的特性を反映したシミュレーションデータを作成し,観測データを融合させてGMM構築に利用した。
2.観測データに基づく経験的特性の評価
K-NET,KiK-netの観測開始から2024年12月末までの観測データを用いて振幅特性と経時特性の経験的特性を評価する。振幅特性としてはGeneralized Inversion Technique (GIT) (例えば,友澤・引田, 2025; JpGU)に基づき日本全国の不均質減衰構造,各観測点の経験的サイト増幅率,応力降下量の空間分布を推定する。経時特性としてはConditional Generative Adversarial Networks (cGAN) に基づく観測点固有の経験的特性 (Yamaguchi et al., 2024; 山口・他,本大会) を推定する。
3.経験的特性を反映したシミュレーションデータの拡充
K-NET,KiK-net観測点の地表を評価位置としたシミュレーションを行ってデータの拡充を行う。全国にランダムに配置したMw 5.0~6.4の点震源を仮定した仮想の地震と,J-SHISから公開されているMw 6.3~7.9の想定地震を対象とした。断層最短距離200 kmまでの観測点を対象とし,仮想の地震は1000地震・58494記録を評価し,想定地震はJ-SHISから断層パラメータが公開されている217断層を評価する。断層によってはアスペリティー位置や破壊開始点等をばらつかせた複数ケースが公開されているため,それらを独立の地震として扱う。前節で推定した経験的特性,つまり,フーリエ振幅スペクトルにはGITから評価したM0-fc関係の空間変動,不均質Q値構造,観測点ごとの経験的特性を考慮し,経時特性にはcGANに基づく経験的特性を考慮して仮想の地震の評価を行い,想定地震では波形合成手法のグリーン関数にこれらの経験的特性を考慮する。
4.観測データとシミュレーションデータの融合
観測データは強震動データフラットファイル2024年版 (Morikawa et al., 2024) のうち地殻内地震の241,477記録を用いた。シミュレーションデータは時刻歴波形で出力されているが,ここでは最大加速度や応答スペクトル等の地震動指標へ変換して融合する。観測データとシミュレーションデータの比較のため,地震規模 (Mw) ‐ 断層最短距離 (Xsh) 空間を小領域(以降,メッシュと呼ぶ)に離散化し,各メッシュに含まれる地震動強さの分布を比較する。なお,メッシュ分割はMwを0.1刻み,Xshは1オーダー当たり10分割とした。あるメッシュを例に最大加速度の分布を比較した結果を図2に示す。多数の地震による多数の観測点のデータを比較しているためばらつきは大きいが,平均値と標準偏差が概ね整合している。なお,シミュレーションは地盤が線形と仮定した場合の結果である。地点固有の時刻歴波形を評価しているため,地盤モデルに基づき工学的基盤相当までひきもどし,非線形特性を仮定した地盤応答解析により地盤の非線形化の影響も今後検討予定である。
5.予測モデルの構築
伝播経路特性の関数形を仮定せずメッシュごとの地震動指標を予測する項 μ(Mw, Xsh),震源励起特性の空間変動を表す項δL2L,伝播経路特性の空間的な不均質性を表す項δP2P,観測点ごとの揺れやすさの違いを表す項δS2Sでモデル化する。μ(Mw, Xsh) は,メッシュごとの地震動強さの中央値,地震間誤差δBmと地震内誤差δWmnに分離する手法 (友澤・他, 2022, JpGU) を参考に,δP2Pも考慮するように修正する。ここで,δP2PはGITにより推定したブロックごとのQ値と全領域均質な減衰構造を仮定したQ値の単位距離あたりのフーリエ振幅の差分を先験情報として与え,ブロックごとの伝播距離と掛け合わせた量(つまり,全国平均の伝播経路特性からの偏差)に比例するようにモデル化する。分離したδBmとGITにより推定した応力降下量には明瞭な関係性がみられ,応力降下量が大きいほどδBmが大きい傾向があった。予測モデルへは応力降下量を直接入力パラメータとするのではなく,地理的荷重回帰を用いて震源位置と応力降下量の推定値を関連付け,震源位置をパラメータとしてδL2Lをモデル化する。評価に用いた既知の観測点(K-NET,KiK-net)では経験的サイト係数が推定されているが,観測記録がない任意地点のサイト特性は地盤条件を介して予測する。李・他(2025,本大会)を参照し,任意地点の地盤条件を入力として,既知観測点の経験的サイト係数との類似度を確率値として出力し,その重み付き平均をその任意地点のサイト係数とする。
謝辞
防災科学技術研究所K-NET,KiK-netの観測記録とF-netのメカニズム解を活用させていただきました。記して感謝します。

