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[S20-02][Invited]Resarch on fundamental mathematics of earthquake source physics and inverse analysis

*Daisuke Sato1 (1. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)
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典型的な地震像は、応力載荷によって生じる岩盤中の既存弱面の繰り返し破壊である (Reid, 1910)。これを記述し測定する、フック則に基づく弾性論、アモントン・クーロン則に基づく摩擦論、観測値と理論値の適合を指針とする逆理論は、前世紀に大きく塗り替えられた(Burgers, 1939; Dieterich, 1979; Akaike, 1980)。今回受賞対象となった研究で、我々は、これら現代的な地震学の基礎数理において長年未解決とされていた問題に取り組んだ。本発表では、講演者のこれまでの研究活動を振り返りつつ、下記の成果を紹介して今後の展望につなげたい。

積分核と滑りの畳み込みで地殻の変形を記述する境界積分方程式法(BIEM)は、地震学の中核的手法である。BIEMの課題の一つに非平面断層での計算負荷があり、断層応力を評価する(例えばシミュレーションを1 ステップ進める)とき、レシーバ要素ごとに全ソース要素の全時刻歴の積分を評価することになる。この、素朴には要素数Nの2~3乗に比例した計算を、我々はおおよそNの1乗まで低減した(Sato & Ando, 2021)。手法は、断層面を再帰的に細分化し、セグメント間距離とセグメント長の比に関する級数展開によって断層相互作用を多点震源近似する、階層行列法(Hackbusch, 1999)の動弾性的拡張である。従来の階層行列法の動問題への適用を阻んでいた、波面を表すデルタ関数に作用する低ランク近似を回避すべく、波の時間積分(力積)と走時とを個別に近似する多平面波近似を考案し、それに則った計算アルゴリズムを開発した。

BIEMによる断層計算は、亀裂の応力源は変位不連続の勾配(転位)であるという物理(Burgers, 1939)を裏付ける、特異応力の計算手法に拠っている。弾性変位は点力源に対する弾性変位(グリーン関数)の微分と地震モーメントの畳み込みであり、グリーン関数の微分は震源直上で発散する。この発散(e.g., 1/x)は積分内で打ち消されるセンスにある(コーシーの主値, e.g., ∫dx/x=0)が、歪や応力は変位の微分(e.g., 1/x^2)であり、積分はみかけ発散する(超特異性)。この超特異な項を除く部分積分操作(アダマール正則化)により、平面断層では転位が応力源になることが示される(Burgers, 1939)。しかし、滑らかな屈曲断層での一定滑り(e.g., 沈み込み帯)はゼロ転位だが、これを微小平面断層で離散化すると無数の転位が生じ、応力源が転位だとすると離散化で解が変わってしまう(Tada & Yamashita, 1996)。我々は、従来理論は平面/離散でのみ正しいことを示し(Sato et al., 2020)、非平面では面に沿った滑りの勾配の意味での転位は唯一の力源ではないことを示した: 屈曲面は滑るだけで応力を蓄積するという曲率項がこれまで見逃されていた (Romanet et al., 2020)。

今日の断層運動の記述において、速度状態依存摩擦(RSF; Dieterich, 1979)が標準的に用いられている。RSFの核心は、滑り速度の対数値が載荷応力と摩擦強度の差に比例するという摩擦構成則の発見にあり、これは静止面の応力が強度を超えると滑りが開始するという降伏規準の精密化である(Nakatani, 2001)。しかし、停止と破壊を同等に表現するというRSFの枠組みは、静摩擦的な時間回復と動摩擦的な滑り弱化はどう整合的に記述されるのかという新たな問を提起する (Ruina, 1983)。この問は、自身が根拠とする実験事実を十分に再現できないという、RSFの長年の課題を生じていた(Beeler et al., 1994; Bhattacharya et al., 2015)。我々は、室内実験で観察される摩擦強度の三種の正典的挙動(時間回復・滑り弱化+強化・動摩擦の速度依存)を整理し、これらを同時に満たすことが原理的に不可能であることを示したうえで、観察範囲内でのみ正典的挙動を再現する強度発展則を提案した。速度レベル(静止・運動)ではなく応力レベル(載荷・除荷)で静・動摩擦的な時間発展の切り替えが起きることが理論的に予測される(Sato et al., 2025)。

地表の有限回の観測で地下の無限自由度の断層運動を推定する逆解析は、原理的にデータから断層運動(モデルパラメター)を拘束するだけの能力を持たない。データへのオーバーフィットを避けるべく、短波長カットオフ(グリッディング、平滑化、etc.)といった補助的な拘束で解ける問題に置き換えるのが常套的だが、これは広く先験的拘束と呼ばれるものの例である(Jackson, 1979)。先験的拘束、またその有無の良し悪しはデータが決めるという立場で、なるべく広い先験的拘束の族を考え、先験的拘束の具体的関数形を表す超パラメターを同時推定する(フル)ベイズ解析(Yabuki & Matsu'ura, 1992; Fukuda & Johnson, 2008)が昨今の震源インバージョンの主流である。しかし、超パラメター同時推定では、それなりに確率の高いサブドメインを調べれば代表となる解が見つかるといった、確率の高さに基づく最適化・サンプリング戦略が破綻しうるという隠れた問題があった。我々は、モデルパラメターと超パラメターの同時事後分布を解析し、超パラメターとモデルパラメターの同時事後分布やそれを超パラメターについて積分したモデルパラメターの周辺事後分布が、良い解を無限小の確率でしか出現させないという極めて病的な分布になっていることを高次元モデルにおいて明らかにした。その上で、近似手法とみなされてきた赤池情報量規準(Akaike, 1980)による推定が、実は適切な解を導く処方であることを理論・数値実験の両面から示した(Sato et al., 2022)。