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[S20-03][Invited]Elucidation of diversity of fault slip phenomena in subduction zones, and their international collaborations

*Yuji Itoh1 (1. Earthquake Research Institute, the University of Tokyo)
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沈み込み帯のプレート境界断層における通常の地震やスロー地震の発生が知られている。断層すべりと固着のサイクルは地球を絶え間なく変形させ、その変形を観測することで、変動の力源(断層すべり等)と地球内部の媒質特性を推定できる。発表者は、沈み込み帯の地震発生メカニズムの理解に資するべく、測地観測により得られる地表面での地殻変動の時空間変化を解析し、多様なプレート境界断層すべり過程を明らかにする研究に取り組んできた。

2003年十勝沖地震(Mw 8.0)の解析ではGNSSデータとJAMSTECの設置した海底圧力計の連続観測データを解析し、粘弾性緩和を考慮したモデリングにより、プレート境界の固着、地震時すべり、余効すべりを推定した。余効変動の解析では両データセットの同時インバージョンにより、両データセットを統一的に説明するモデルを構築し、7年半に亘る海底圧力計観測データが余効すべりを捉えていたことを示した。推定された十勝沖地震の余効すべりは海溝軸に到達しておらず、プレート境界の浅部の断層に固着があるとするならば、それは余効すべりで解消されていないことを明らかにした。次に、本震前5年半の平均的な固着分布の推定のために地殻変動解析をしたところ、火山弧付近に海溝直行方向の短縮歪が集中していることがわかった。この歪集中を上盤プレートの弾性不均質構造として表現し、かつマントルの粘弾性緩和を考慮して地震間の固着による大局的な変形をモデル化した。その結果、観測された歪集中を説明するには地震波速度低下では説明しきれない顕著に小さな弾性定数が必要であった。これは塑性歪みの発現を示唆している。更にこの構造モデルを用いて固着分布をインバージョンにより推定することで、従来の弾性均質構造モデルを用いた固着分布の推定結果にみられた物理的に不合理ないくつかの特徴を解決した。推定された固着分布は本震のすべり分布の一部と重なっておらず、本震に先駆けて固着分布が縮小していた可能性を指摘した。

先述の研究を含むGNSSを用いた典型的な地殻変動研究では1日間隔のデータを用いるが、1日以下の時間間隔(以下ではHRGNSSと呼ぶ)で地殻変動解析を実施することも可能である。ただ、そのノイズレベルが1日間隔のデータより1桁上がる(cm級になる)こと等を理由に、その適用は盛んには行われていない。この短い時間スケールにおける非地震性すべりと地震性すべりの相互作用が、震源過程の複雑さを解明する上で重要と考え、HRGNSS特有のノイズ低減手法を行なった上で、様々なすべりイベントの解析に適用した。その際、ノイズ低減してなお1日毎の解よりもノイズレベルが高いことから、イベントの有無を議論することを避け、イベント発生が概ね確信できる期間を解析した。言い換えると、既知のスロースリップイベント(SSE)や余効変動の過程を、従前よりも詳細に議論することを当座目指した。SSEへの適用では、最初にCascadiaにおいて大規模なSSEに伴う数mm程度の変位の検出と、30分間隔でのすべりの時空間発展の推定に成功した。続いて、Cascadiaの大規模なSSEの初期段階において、微動活動の加速よりもSSEのすべりのモーメントの加速が1日程度遅れることを示した。初期余効変動への適用では、HRGNSSと地震活動を合わせて解釈し、プレート境界断層のクリープ領域が2014年Iquique地震(M 8.1)の破壊を止め、そのクリープ領域に生じた初期余効すべりが27時間後に、隣接領域で発生した最大余震(M 7.6)の発生を促進した可能性を示した。また、2024年日向灘地震後1週間の余効すべり分布を余震活動と組み合わせることで、余効すべりの過程が沈み込んだ九州・パラオ海嶺に影響されていた可能性を指摘した。2017年Valparaiso地震の解析では、群発的な前震活動から本震、余震までの一連の過程が一つのSSEによって駆動されていたことを示し、測地観測による先行すべりを直接本震の核形成過程と解釈できないことを提案した。これらの研究により、従前よりも短い時間スケールでの地震性・非地震性イベントの相互作用や、構造的な特徴から示唆される断層の不均質な力学特性が震源過程に与える影響を示した。

上述の研究以外を含むすべての論文数を元にすると、発表者は出版済みの研究の約半数を国際共同研究として実施した。講演ではその経緯も多少紹介する予定である。