Presentation Information
[S20-04][Invited]Unveiling submarine volcanic phenomena through seismic and tsunami waveform analysis and modeling
*Osamu SANDANBATA1 (1. Earthquake Research Institute, The University of Tokyo)
海底火山は時に大規模な変動現象を引き起こし,噴火や津波の発生を通して周辺海域や地球規模にも大きな被害をもたらしうる.それらの多くが地理的,技術的に観測困難な環境にあることから,地球科学におけるフロンティアの一つである.著者は,津波・地震波データを軸とした分野横断的な視点から遠隔的に海底火山の変動現象を探り,世界各地の海底火山における大規模変動現象の解明に取り組んできた.
伊豆諸島に位置する海底火山・スミスカルデラにおいては,1980年代以降,マグニチュード(M)5規模の地震が約10年ごとに繰り返し発生し,そのたびに波高が1メートルにも迫る津波を伴ってきた.その発生要因については,地震波および津波の波形解析がそれぞれ独立に行われてきたものの,長らく明確な結論は得られず,議論が続いていた.著者は,2015年のM5.7地震による津波と地震波のデータを複合的に解析し,カルデラ内の曲がった断層のすべり現象と,マグマを溜め込んだ空洞(マグマだまり)が連動的に動いたことを,データから定量的に推定した.モデルが示す変動現象は,ガラパゴス諸島の陸上火山で測地的に観測されていた「トラップドア断層破壊 (trapdoor faulting)」と呼ばれるカルデラ隆起現象とよく似ていた.本研究は,同様の現象が海底カルデラで発生したことを初めて立証し,それを新たな火山性津波の発生要因として位置づけた.これにより,約40年来議論が続いていたスミスカルデラにおける津波発生要因に具体的な描像を与えることに成功した.
この研究を端緒として,著者は世界各地の海底カルデラでの「トラップドア断層破壊」を相次いで報告してきた.ニュージーランドのカーティス島,小笠原諸島・北硫黄島の海底カルデラ,さらにはトンガ王国の海底火山(末次ほか,本大会)においても,同様の現象が繰り返し発生していることを明らかにした.すなわち,この現象が海底カルデラに特徴的な火山活動の一形態として普遍性をもち,津波リスク要因としての海底カルデラの重要性を改めて浮き彫りにしたと言える.さらに,著者はこの現象の発生が継続的なマグマ蓄積度合いの指標となることに着目し,津波および地震の規模とマグマだまりの圧力を結びつける力学モデルを開発し,海底火山直下の火山活動度の定量化の指針も示した.加えて,津波振幅にして1–2 mmという超微弱な津波を海底圧力計のアレー観測記録から抽出する技術の開発によって,津波観測網から遠く離れた海底カルデラの隆起現象の震源特性を明らかにした.
2023年10月に伊豆諸島の孀婦(そうふ)海山周辺で突如発生した際には,いち早く解析を行った.この津波は,先述のスミスカルデラの事例よりもさらに小規模な,マグニチュード4〜5程度の地震が孀婦海山周辺で連続的に発生した後で観測された,極めて謎の多い津波であった.津波観測網DONETで観測された津波データを詳細に解析した結果, 14回の小・中規模地震が連続的に津波を励起し,それらが重なり合って大きな津波に成長したことを突き止めた.これは過去に観測事例のない津波発生様式であり,その後の複数期間の調査によって海底火山の大規模噴火活動との関連が明らかとなった.
以上のように,海底火山活動に伴う地震・津波は,通常の構造性地震に基づく知見を直接適用できないケースが多く,とりわけ現象の解釈および定量的予測が困難である.このような難題に対して,浅部の変動現象に対して感度の高い津波データを主軸とし,地震波データと火山学的知見を統合的に用いることで,新たな知見を切り拓いてきた.今後は,さらに多様なデータセットや数理モデルを融合させ,複合的かつ俯瞰的な視点から海底火山活動を中心に,広範な海底変動現象の解明と予測に挑んでいきたい.そして,遠隔観測の限界を超えるべく,海底火山近傍での直接観測にも積極的に取り組み,未解明のフロンティアを開拓していきたい.
伊豆諸島に位置する海底火山・スミスカルデラにおいては,1980年代以降,マグニチュード(M)5規模の地震が約10年ごとに繰り返し発生し,そのたびに波高が1メートルにも迫る津波を伴ってきた.その発生要因については,地震波および津波の波形解析がそれぞれ独立に行われてきたものの,長らく明確な結論は得られず,議論が続いていた.著者は,2015年のM5.7地震による津波と地震波のデータを複合的に解析し,カルデラ内の曲がった断層のすべり現象と,マグマを溜め込んだ空洞(マグマだまり)が連動的に動いたことを,データから定量的に推定した.モデルが示す変動現象は,ガラパゴス諸島の陸上火山で測地的に観測されていた「トラップドア断層破壊 (trapdoor faulting)」と呼ばれるカルデラ隆起現象とよく似ていた.本研究は,同様の現象が海底カルデラで発生したことを初めて立証し,それを新たな火山性津波の発生要因として位置づけた.これにより,約40年来議論が続いていたスミスカルデラにおける津波発生要因に具体的な描像を与えることに成功した.
この研究を端緒として,著者は世界各地の海底カルデラでの「トラップドア断層破壊」を相次いで報告してきた.ニュージーランドのカーティス島,小笠原諸島・北硫黄島の海底カルデラ,さらにはトンガ王国の海底火山(末次ほか,本大会)においても,同様の現象が繰り返し発生していることを明らかにした.すなわち,この現象が海底カルデラに特徴的な火山活動の一形態として普遍性をもち,津波リスク要因としての海底カルデラの重要性を改めて浮き彫りにしたと言える.さらに,著者はこの現象の発生が継続的なマグマ蓄積度合いの指標となることに着目し,津波および地震の規模とマグマだまりの圧力を結びつける力学モデルを開発し,海底火山直下の火山活動度の定量化の指針も示した.加えて,津波振幅にして1–2 mmという超微弱な津波を海底圧力計のアレー観測記録から抽出する技術の開発によって,津波観測網から遠く離れた海底カルデラの隆起現象の震源特性を明らかにした.
2023年10月に伊豆諸島の孀婦(そうふ)海山周辺で突如発生した際には,いち早く解析を行った.この津波は,先述のスミスカルデラの事例よりもさらに小規模な,マグニチュード4〜5程度の地震が孀婦海山周辺で連続的に発生した後で観測された,極めて謎の多い津波であった.津波観測網DONETで観測された津波データを詳細に解析した結果, 14回の小・中規模地震が連続的に津波を励起し,それらが重なり合って大きな津波に成長したことを突き止めた.これは過去に観測事例のない津波発生様式であり,その後の複数期間の調査によって海底火山の大規模噴火活動との関連が明らかとなった.
以上のように,海底火山活動に伴う地震・津波は,通常の構造性地震に基づく知見を直接適用できないケースが多く,とりわけ現象の解釈および定量的予測が困難である.このような難題に対して,浅部の変動現象に対して感度の高い津波データを主軸とし,地震波データと火山学的知見を統合的に用いることで,新たな知見を切り拓いてきた.今後は,さらに多様なデータセットや数理モデルを融合させ,複合的かつ俯瞰的な視点から海底火山活動を中心に,広範な海底変動現象の解明と予測に挑んでいきたい.そして,遠隔観測の限界を超えるべく,海底火山近傍での直接観測にも積極的に取り組み,未解明のフロンティアを開拓していきたい.
