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[S21-02][Invited]From the Dawn of Planetary Seismology in Japan to the Future Challenges Ahead

*Satoshi TANAKA1, Hitoshi MIZUTANI1 (1. Institute of Space and Astronautical Science, Japan Aerospace Exploration Agency)
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日本の惑星地震探査の歴史は、宇宙科学研究所に「固体惑星分野」が創設されたこととともに幕を開けた。惑星の内部構造を直接知る手段は限られており、その中でも地震観測は最も確実で本質的な情報をもたらす手法である。しかし、それを地球以外の天体で実施するには、極限環境に耐える計測機器、そして着陸や埋設のための特殊な技術が必要であった。こうした背景のもと構想されたのが、LUNAR-A計画である。

LUNAR-Aは、秒速300mという高速で月面に突入するペネトレータを用い、その内部に高感度地震計を搭載して月震や隕石衝突を観測し、内部構造を解明するという、世界的にも前例のない挑戦的なミッションだった。当初は、後に2007年に打ち上げられる月周回探査機「かぐや(KAGUYA)」によるリモートセンシング観測と組み合わせ、地表と内部の双方から月を総合的に探査する計画であったが、LUNAR-A計画が先行して採択された。しかしながら開発の難易度は極めて高く、予算や技術成熟度の制約もあり、LUNAR-Aは2007年に中止の決定が下された。

それでもプロジェクトは完全に終わったわけではない。ペネトレータ技術の開発は2010年まで続けられ、最終的に技術的完成に漕ぎ着けた。地震計の性能は当初目標とした1Hz帯域において、アポロ計画時代に月面に設置された地震計の数倍の感度を達成することができた。

2013年からは、新たに設けられた公募型小型ミッション枠において、このペネトレータ技術を活かした「APPROACH」計画が3度にわたり提案された。しかし、競争の激しい選考の中でいずれも採択には至らなかった。それでも開発体制を維持すべく、地球環境での利用を見据えたペネトレータの研究開発が継続された。この粘り強い活動が思わぬ形で実を結ぶ。米国が進めるタイタン着陸ミッション「Dragonfly」から、ペネトレータ搭載の打診が寄せられたのである。極低温環境でも確実に作動するよう温度耐性のロバスト性を強化し、現在はフライトモデルの提供段階にまで進んでいる。

一方、2010年頃からは「かぐや」の後継として月面着陸機SELENE-2の構想が動き出した。この計画では、従来の地震計を超える高感度と広帯域を実現するため、レーザー干渉方式による計測技術の導入が検討され、開発が着手された。SELENE-2はミッション定義審査(MDR)まで進むも、予算やミッション優先度の問題からプロジェクト化には至らず中止となった。しかし、2021年に国際宇宙探査の機運が世界的に高まり、NASAのアルテミス計画をはじめとする多国間協力の枠組みが拡大する中、「月の三科学」構想が提示された。これは月サンプルリターン、月面天文台、そして月面地震観測を三本柱とするもので、SELENE-2で培われた高感度地震計の開発はこの機運を背景に復活を果たす。現在はDragonfly搭載の短周期地震計にレーザー干渉システムを組み込み、極限環境での耐久性を保証しつつ、月震をパッシブ観測できるシステムの完成を目指して開発が進められている。

さらに、日本独自の人工地震発生装置も世界的注目を集めており、米国やフランスと共同でアルテミス計画への参加が検討されている。人工的に月面で地震波を発生させ、その伝播を計測することで、自然地震だけでは得られない精緻な内部浅部構造モデルを構築できることは、科学的な意義だけでなく、将来の月面開発・資源利用にも有用である。

近年、月や火星、小惑星など、さまざまな天体探査において内部構造解明への関心が高まり、地震観測の重要性が改めて注目されている。LUNAR-Aが構想された当時は、時代を大きく先取りしていた一方で、技術は未成熟であり、ミッションの実現には至らなかった。しかし、数十年にわたる着実な技術開発、月惑星地震学の継続的な研究、そして次世代を担う研究者・技術者の育成が、今ようやく実を結びつつある。日本の月惑星地震学は、幾度もの挫折を乗り越え、いま再び新たな挑戦の局面に立っている。