Presentation Information
[S22-07][Invited]Simulation-based Machine Learning and its Applications to Disaster Science
*Naonori Ueda1 (1. RIKEN Center for Advanced Intelligence(RIKEN AIP))
本講演では、自然科学研究において主流である「モデルベースアプローチ」と計算科学や人工知能において発展してきた「データ駆動アプローチ」を融合した新たな枠組みである「シミュレーションベース機械学習」の研究とその応用について紹介する。
モデルベースアプローチは、第一原理や支配方程式に基づいた演繹的な解析を特徴とし、説明性や将来予測に優れる一方で、複雑な現象への対応には限界がある。対照的に、データ駆動アプローチは観測データからの帰納的学習により柔軟なモデリングが可能だが、説明性や外挿性能に欠ける傾向がある。これら両者の長所を補完的に活かすべく、筆者は2016年に「シミュレーションベース機械学習」と命名し、本アプローチの研究を開始した。
代表的応用例として、都市型地震における地震動予測がある。東京大学地震研究所との共同研究では、スーパーコンピュータ「京」による有限要素法ベースの従来手法に代わり、深層学習を導入することで、膨大なシミュレーション回数を削減し、約3,000倍の高速化を実現した。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて震度分布を分類問題として扱い、従来の数値シミュレーションと同等の精度を達成している。さらに、スーパーコンピュータ「富岳」全系を用いた断層-都市連成の超高詳細地震解析では、テラ自由度級の非構造有限要素法とデータ駆動手法を融合することで、世界初の超大規模非線形動的解析を実現した。これにより、地震による被害想定や震源メカニズムの解明に大きく寄与する可能性が示されている。
同様の技術は津波浸水被害のリアルタイム予測にも応用されている。東日本大震災後に整備された日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の観測データと深層ニューラルネットワーク(DNN)を組み合わせることで、津波発生後の浸水深をリアルタイムで予測する技術を開発した。従来は30分を要した物理モデルによる予測が、瞬時に得られるようになり、迅速な避難判断を支援する技術として高く評価されている。
続いて、AI for Scienceの観点から、物理法則に整合する深層学習モデルの進展について紹介する。Neural ODE、Hamiltonian Neural Network(HNN)、Physics-Informed Neural Network(PINN)、Neural Operator(NO)などは、エネルギー保存則などの物理制約を学習に組み込むことで、従来のブラックボックス的AIとは一線を画す信頼性と汎化性能を実現している。関連する研究として筆者らは、Symplectic Spectrum Gaussian Processes(SSGP)を用いて、ノイズが多くスパースな観測データからでもハミルトニアン構造を学習可能な新手法を提案した。また、エネルギー保存則を損失関数に組み込んだEnergy-consistent Neural Operator(ENO)を開発し、物理的整合性を保持した高精度予測を可能にしている。関連技術として、筆者らは、Symplectic Spectrum Gaussian Processes(SSGP)を用いて、ノイズが多くスパースな観測からでもハミルトニアン構造を学習可能とする新手法を提案した。また、エネルギー保存則を損失関数に組み込んだEnergy-consistent Neural Operator(ENO)を開発し、物理的整合性を高めた予測を可能にしている。
さらにPINNを地殻変動解析に応用し、従来の有限要素法に必要とされた精緻なメッシュ生成を不要としながら、連続的かつ自然な地殻変動予測を実現した。これにより、断層構造の急激な変化や地形の曲率にも柔軟に対応でき、逆解析の定式化においても自然な拡張が可能となった。
本講演では、深層学習と物理モデリングの融合によって、地震・津波・地殻変動といった複雑な自然現象の理解・予測・応用が新たな次元に到達しつつある現状を紹介する。こうしたアプローチは、防災科学への貢献にとどまらず、データ駆動と物理法則の調和という観点から、自然科学および工学における研究の在り方そのものを刷新する可能性を秘めている。今後の科学技術の展開を展望するうえで、本講演が新たな学術的探究への契機となれば幸いである。
モデルベースアプローチは、第一原理や支配方程式に基づいた演繹的な解析を特徴とし、説明性や将来予測に優れる一方で、複雑な現象への対応には限界がある。対照的に、データ駆動アプローチは観測データからの帰納的学習により柔軟なモデリングが可能だが、説明性や外挿性能に欠ける傾向がある。これら両者の長所を補完的に活かすべく、筆者は2016年に「シミュレーションベース機械学習」と命名し、本アプローチの研究を開始した。
代表的応用例として、都市型地震における地震動予測がある。東京大学地震研究所との共同研究では、スーパーコンピュータ「京」による有限要素法ベースの従来手法に代わり、深層学習を導入することで、膨大なシミュレーション回数を削減し、約3,000倍の高速化を実現した。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて震度分布を分類問題として扱い、従来の数値シミュレーションと同等の精度を達成している。さらに、スーパーコンピュータ「富岳」全系を用いた断層-都市連成の超高詳細地震解析では、テラ自由度級の非構造有限要素法とデータ駆動手法を融合することで、世界初の超大規模非線形動的解析を実現した。これにより、地震による被害想定や震源メカニズムの解明に大きく寄与する可能性が示されている。
同様の技術は津波浸水被害のリアルタイム予測にも応用されている。東日本大震災後に整備された日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の観測データと深層ニューラルネットワーク(DNN)を組み合わせることで、津波発生後の浸水深をリアルタイムで予測する技術を開発した。従来は30分を要した物理モデルによる予測が、瞬時に得られるようになり、迅速な避難判断を支援する技術として高く評価されている。
続いて、AI for Scienceの観点から、物理法則に整合する深層学習モデルの進展について紹介する。Neural ODE、Hamiltonian Neural Network(HNN)、Physics-Informed Neural Network(PINN)、Neural Operator(NO)などは、エネルギー保存則などの物理制約を学習に組み込むことで、従来のブラックボックス的AIとは一線を画す信頼性と汎化性能を実現している。関連する研究として筆者らは、Symplectic Spectrum Gaussian Processes(SSGP)を用いて、ノイズが多くスパースな観測データからでもハミルトニアン構造を学習可能な新手法を提案した。また、エネルギー保存則を損失関数に組み込んだEnergy-consistent Neural Operator(ENO)を開発し、物理的整合性を保持した高精度予測を可能にしている。関連技術として、筆者らは、Symplectic Spectrum Gaussian Processes(SSGP)を用いて、ノイズが多くスパースな観測からでもハミルトニアン構造を学習可能とする新手法を提案した。また、エネルギー保存則を損失関数に組み込んだEnergy-consistent Neural Operator(ENO)を開発し、物理的整合性を高めた予測を可能にしている。
さらにPINNを地殻変動解析に応用し、従来の有限要素法に必要とされた精緻なメッシュ生成を不要としながら、連続的かつ自然な地殻変動予測を実現した。これにより、断層構造の急激な変化や地形の曲率にも柔軟に対応でき、逆解析の定式化においても自然な拡張が可能となった。
本講演では、深層学習と物理モデリングの融合によって、地震・津波・地殻変動といった複雑な自然現象の理解・予測・応用が新たな次元に到達しつつある現状を紹介する。こうしたアプローチは、防災科学への貢献にとどまらず、データ駆動と物理法則の調和という観点から、自然科学および工学における研究の在り方そのものを刷新する可能性を秘めている。今後の科学技術の展開を展望するうえで、本講演が新たな学術的探究への契機となれば幸いである。
