Presentation Information
[S22-09]Bayesian seismic tomography using active- and passive-source travel-time data based on physics-informed neural networks
*Ryoichiro AGATA1, Kazuya Shiraishi1, Gou Fujie1, Dan Bassett2 (1. JAMSTEC, 2. Earth Sciences New Zealand)
地震発生帯の速度構造推定は、地震の発生パターンに影響を及ぼす構造的要因の解明に不可欠である。さらに速度構造モデルは、地震波数値計算など、後続する解析の基礎的データとしても重要な役割を担う。地下の速度構造を推定する方法の一つとして、走時データを用いたトモグラフィ解析がある。人工地震探査での能動震源による走時データは一般に浅部速度の推定に有効であり、自然地震の受動震源による走時データは制御震源からの地震波が到達しない深部構造の推定に有用である。深部から浅部に至るまでの構造をよく解像するモデルを得るためには、これらのデータを統合したトモグラフィ解析が不可欠である。
他方、推定された速度構造の利用目的を踏まえると、その推定結果の信頼性を把握することは極めて重要である。ベイズ推定は、対象パラメータを確率変数として扱い、事後確率分布を定式化する枠組みの下で、推定結果の不確実性定量化を可能とする。能動走時データのみを用いる場合には、震源・受信点位置が正確にわかっているため、推定対象は速度構造に限定される。これに対し、震源位置が解析領域内にあり、かつ位置情報が不正確な受動震源の走時データを用いる場合には、震源位置もデータから再推定されることが望ましい。決定論的なトモグラフィの場合には、そのような速度構造と震源位置の同時推定がしばしば行われる。しかしベイジアントモグラフィの場合、速度構造だけでなく震源位置も推定変数に含めると、パラメータ次元の増大やスケール差により、ベイズ推定は難しくなる。
そこで本研究では、受動震源の位置を直接推定することは避け、その不確実性を考慮してベイジアントモグラフィを行う手法について検討する。手法の要点は、ベイズの定理に基づき、速度構造と震源の位置の同時事後確率分布をいったん定式化し、この式を震源位置について周辺化することで震源位置を式から消去する点にある。この時、震源位置の事前分布が、事前に見当をつけられた不確実性の幅を表現する。震源位置が消去された後の事後確率は、震源位置の不確実性を加味しつつも形式上速度構造のみに関するものとなり、ベイズ推定が比較的容易となる。この周辺化計算は事後確率の積分となるが、一般には解析的に実行できない。そこで、ここでは震源位置の事前分布をガウス分布と仮定したうえで、ガウス・エルミート数値積分により積分を近似的に計算する。発生時刻を未知数から消去できるとすると、各震源位置は3次元パラメータとなるため、積分点を5点とっても必要な確率の評価回数は125回と比較的少なくて済み、このような数値積分は実用的である。この手法の採用により、震源位置を初期推定値に固定することによる結果への悪影響を排除しつつ、速度構造のベイズ推定に専念できる。速度構造のベイズ推定には、著者らが先行研究(Agata+2023, 2025)で提案した物理情報深層学習(Physics-informed neural network; PINN, Raissi+2019)に基づく手法を用いる。PINN は偏微分方程式(PDE)で記述される物理法則を深層学習に組み込み、PDE解およびパラメータ分布をニューラルネットワーク(NN)で表現することにより、トモグラフィのような逆問題をメッシュレスで解くことを可能にする。NNは3次元速度構造をグリッドやメッシュ形式と比べて高いデータ効率で表現できる。
提案手法の有効性検証のため、能動震源データと自然地震の受動震源データを併用した3次元走時トモグラフィの数値実験を行った。真の速度構造は、水平成層構造を基本とし、浅部に比較的短波長、深部に比較的長波長の構造擾乱を導入した。能動震源が多く存在する領域と、自然地震による受動震源のみ利用可能である領域を分けて数値データを作成した。受動震源位置には一定の不確実性を与え、その幅の中に真の震源を設定した。解析の結果、受動震源位置の不確実性を事後確率の周辺化により考慮した場合は、真値とよく一致した平均モデルと妥当な不確実性が得られた。推定結果の不確実性は、能動震源が利用可能な領域でより小さかった。震源位置を間違った場所に固定した場合には、誤った震源位置に起因する平均モデルの真値からのずれが確認された。これらの結果は、受動震源の位置が不確実な場合においても、本手法が速度構造を高精度に推定可能であることを示唆する。当日の発表では、提案手法を紀伊半島沖の3次元P波速度構造の推定に適用した例も併せて紹介する予定である。
他方、推定された速度構造の利用目的を踏まえると、その推定結果の信頼性を把握することは極めて重要である。ベイズ推定は、対象パラメータを確率変数として扱い、事後確率分布を定式化する枠組みの下で、推定結果の不確実性定量化を可能とする。能動走時データのみを用いる場合には、震源・受信点位置が正確にわかっているため、推定対象は速度構造に限定される。これに対し、震源位置が解析領域内にあり、かつ位置情報が不正確な受動震源の走時データを用いる場合には、震源位置もデータから再推定されることが望ましい。決定論的なトモグラフィの場合には、そのような速度構造と震源位置の同時推定がしばしば行われる。しかしベイジアントモグラフィの場合、速度構造だけでなく震源位置も推定変数に含めると、パラメータ次元の増大やスケール差により、ベイズ推定は難しくなる。
そこで本研究では、受動震源の位置を直接推定することは避け、その不確実性を考慮してベイジアントモグラフィを行う手法について検討する。手法の要点は、ベイズの定理に基づき、速度構造と震源の位置の同時事後確率分布をいったん定式化し、この式を震源位置について周辺化することで震源位置を式から消去する点にある。この時、震源位置の事前分布が、事前に見当をつけられた不確実性の幅を表現する。震源位置が消去された後の事後確率は、震源位置の不確実性を加味しつつも形式上速度構造のみに関するものとなり、ベイズ推定が比較的容易となる。この周辺化計算は事後確率の積分となるが、一般には解析的に実行できない。そこで、ここでは震源位置の事前分布をガウス分布と仮定したうえで、ガウス・エルミート数値積分により積分を近似的に計算する。発生時刻を未知数から消去できるとすると、各震源位置は3次元パラメータとなるため、積分点を5点とっても必要な確率の評価回数は125回と比較的少なくて済み、このような数値積分は実用的である。この手法の採用により、震源位置を初期推定値に固定することによる結果への悪影響を排除しつつ、速度構造のベイズ推定に専念できる。速度構造のベイズ推定には、著者らが先行研究(Agata+2023, 2025)で提案した物理情報深層学習(Physics-informed neural network; PINN, Raissi+2019)に基づく手法を用いる。PINN は偏微分方程式(PDE)で記述される物理法則を深層学習に組み込み、PDE解およびパラメータ分布をニューラルネットワーク(NN)で表現することにより、トモグラフィのような逆問題をメッシュレスで解くことを可能にする。NNは3次元速度構造をグリッドやメッシュ形式と比べて高いデータ効率で表現できる。
提案手法の有効性検証のため、能動震源データと自然地震の受動震源データを併用した3次元走時トモグラフィの数値実験を行った。真の速度構造は、水平成層構造を基本とし、浅部に比較的短波長、深部に比較的長波長の構造擾乱を導入した。能動震源が多く存在する領域と、自然地震による受動震源のみ利用可能である領域を分けて数値データを作成した。受動震源位置には一定の不確実性を与え、その幅の中に真の震源を設定した。解析の結果、受動震源位置の不確実性を事後確率の周辺化により考慮した場合は、真値とよく一致した平均モデルと妥当な不確実性が得られた。推定結果の不確実性は、能動震源が利用可能な領域でより小さかった。震源位置を間違った場所に固定した場合には、誤った震源位置に起因する平均モデルの真値からのずれが確認された。これらの結果は、受動震源の位置が不確実な場合においても、本手法が速度構造を高精度に推定可能であることを示唆する。当日の発表では、提案手法を紀伊半島沖の3次元P波速度構造の推定に適用した例も併せて紹介する予定である。
