Presentation Information
[S23-11]Rupture complexity of moderate earthquakes during swarm activities off the east coast of Izu Peninsula, Japan
Yukako TANAKA1, *Takuji YAMADA2 (1. Kagoshima Meteorological Office, Japan Meteorological Agency, 2. Ibaraki University)
1. はじめに
20世紀後半から2011年頃にかけて、伊豆半島東方沖では地下からの火山性流体の貫入に伴う群発地震が断続的に発生していた(Aoki et al., 1997; Hayashi and Morita, 2003; Morita et al., 2006)。本研究では、2006年および2009年に発生した同地域の群発地震のうち、規模の大きい6地震(Mw 3.9-5.6)について震源時間関数の解析を行った。さらに、その特徴と過去の群発地震活動との位置関係、b値の空間分布との関連を議論した。
2. 震源時間関数解析
本研究では、まず解析対象地震付近で発生した複数個の小地震(Mw3.4-3.9)の波形を経験的グリーン関数計算の候補として選定した。これらの小地震には、解析対象地震と異なるメカニズム解を持つものを意図的に含めている。これらの小地震の観測波形に幾何減衰の効果を考慮して振幅補正を行った波形を、経験的グリーン関数とした。なお、これらの小地震の規模を考慮すると、破壊継続時間は0.2秒前後であると推測される。次に、各観測点での解析対象地震の東西・南北成分波形に対して、S波到着の前1秒〜後9秒の計10秒間を切り出し、0.1Hzから1.0Hzのバンドパスフィルターをかけて解析対象波形を準備し、0.05秒ずつずらした40個の時間窓を用いて、震源時間関数の解析を行った。使用した観測点数は地震ごとに異なるが、最小でも8観測点(16成分)あり、相模湾内の観測波形も用いているため、震源の周りを囲む観測点配置となっている。
3. 破壊の複雑性と過去の群発地震活動
震源時間関数の解析結果をFig. 1aに示す。解析した6地震のうち、2006年に発生した2地震は複雑な破壊過程を持っていた一方、残りの4地震は比較的単純な破壊であったことが明らかになった。さらに、複雑な破壊過程を示した2地震は、過去数十年間において群発地震が発生していない領域で起こった地震であるのに対し、単純な破壊過程を示した4地震は、過去の群発地震領域に隣接する、または内部に含まれることが明らかとなった。これらの事実は、破壊の複雑性が過去の群発地震活動に伴う破砕の成熟度に依存していることを示唆している。なお、意図的に解析対象地震と異なるメカニズム解を持つ地震波形から準備された経験的グリーン関数を用いると、解析対象地震の観測波形が再現できないこと、また、複雑な破壊過程を示した2地震が単純な破壊過程を持っていたと仮定してsynthetic waveformを計算すると、variance reductionが大幅に悪化することも確認できた。これらの事実は、本研究の解析結果の信頼性を示している。
一般に、詳細な物理的背景はまだ未解明な点が残るものの、地震活動のb値と破砕度に相関があることが報告されている(例えば、Wyss et al., 1997)。本研究では、解析対象6地震の破壊の複雑性とb値の空間分布の関係についても議論を試みた。Fig. 1bは、1995年から2010年に伊豆半島東方沖で発生したMj2.0以上、30km以浅の地震を用いて、領域を緯度経度0.02度ごとに区切り(以後、セルと表記する)求めたb値の空間分布を示している。なお、地震数が少ないと信頼性の高いb値を求められないため(Marzocchi et al., 2020)、80個以上の地震が含まれるセルのみ、値を色を付けて表記している。地震活動が活発なセルほど低いb値を示し、過去の研究結果と調和的な特徴が見られたが、解析6地震の破壊の複雑性との明瞭な相関は見られなかった。
謝辞:本研究では、防災科学技術研究所の運用するK-net観測点の地震波形データと、気象庁の一元化震源およびP, S検測値を使用しました。また、科研費20K04078および東京海上各務記念財団の補助を受けています。
参考文献:
- Aoki et al. (1999), Science, DOI: 10.1126/science.286.5441.927
- Hayashi and Morita (2003), GJI, https://doi.org/10.1046/j.1365-246X.2003.01892.x
- Marzocchi et al. (2020), GJI, https://doi.org/10.1093/gji/ggz541
- Morita et al. (2006), JGR, https://doi.org/10.1029/2005JB003860
- Wyss et al. (1997), JGR, https://doi.org/10.1029/97jb01074
20世紀後半から2011年頃にかけて、伊豆半島東方沖では地下からの火山性流体の貫入に伴う群発地震が断続的に発生していた(Aoki et al., 1997; Hayashi and Morita, 2003; Morita et al., 2006)。本研究では、2006年および2009年に発生した同地域の群発地震のうち、規模の大きい6地震(Mw 3.9-5.6)について震源時間関数の解析を行った。さらに、その特徴と過去の群発地震活動との位置関係、b値の空間分布との関連を議論した。
2. 震源時間関数解析
本研究では、まず解析対象地震付近で発生した複数個の小地震(Mw3.4-3.9)の波形を経験的グリーン関数計算の候補として選定した。これらの小地震には、解析対象地震と異なるメカニズム解を持つものを意図的に含めている。これらの小地震の観測波形に幾何減衰の効果を考慮して振幅補正を行った波形を、経験的グリーン関数とした。なお、これらの小地震の規模を考慮すると、破壊継続時間は0.2秒前後であると推測される。次に、各観測点での解析対象地震の東西・南北成分波形に対して、S波到着の前1秒〜後9秒の計10秒間を切り出し、0.1Hzから1.0Hzのバンドパスフィルターをかけて解析対象波形を準備し、0.05秒ずつずらした40個の時間窓を用いて、震源時間関数の解析を行った。使用した観測点数は地震ごとに異なるが、最小でも8観測点(16成分)あり、相模湾内の観測波形も用いているため、震源の周りを囲む観測点配置となっている。
3. 破壊の複雑性と過去の群発地震活動
震源時間関数の解析結果をFig. 1aに示す。解析した6地震のうち、2006年に発生した2地震は複雑な破壊過程を持っていた一方、残りの4地震は比較的単純な破壊であったことが明らかになった。さらに、複雑な破壊過程を示した2地震は、過去数十年間において群発地震が発生していない領域で起こった地震であるのに対し、単純な破壊過程を示した4地震は、過去の群発地震領域に隣接する、または内部に含まれることが明らかとなった。これらの事実は、破壊の複雑性が過去の群発地震活動に伴う破砕の成熟度に依存していることを示唆している。なお、意図的に解析対象地震と異なるメカニズム解を持つ地震波形から準備された経験的グリーン関数を用いると、解析対象地震の観測波形が再現できないこと、また、複雑な破壊過程を示した2地震が単純な破壊過程を持っていたと仮定してsynthetic waveformを計算すると、variance reductionが大幅に悪化することも確認できた。これらの事実は、本研究の解析結果の信頼性を示している。
一般に、詳細な物理的背景はまだ未解明な点が残るものの、地震活動のb値と破砕度に相関があることが報告されている(例えば、Wyss et al., 1997)。本研究では、解析対象6地震の破壊の複雑性とb値の空間分布の関係についても議論を試みた。Fig. 1bは、1995年から2010年に伊豆半島東方沖で発生したMj2.0以上、30km以浅の地震を用いて、領域を緯度経度0.02度ごとに区切り(以後、セルと表記する)求めたb値の空間分布を示している。なお、地震数が少ないと信頼性の高いb値を求められないため(Marzocchi et al., 2020)、80個以上の地震が含まれるセルのみ、値を色を付けて表記している。地震活動が活発なセルほど低いb値を示し、過去の研究結果と調和的な特徴が見られたが、解析6地震の破壊の複雑性との明瞭な相関は見られなかった。
謝辞:本研究では、防災科学技術研究所の運用するK-net観測点の地震波形データと、気象庁の一元化震源およびP, S検測値を使用しました。また、科研費20K04078および東京海上各務記念財団の補助を受けています。
参考文献:
- Aoki et al. (1999), Science, DOI: 10.1126/science.286.5441.927
- Hayashi and Morita (2003), GJI, https://doi.org/10.1046/j.1365-246X.2003.01892.x
- Marzocchi et al. (2020), GJI, https://doi.org/10.1093/gji/ggz541
- Morita et al. (2006), JGR, https://doi.org/10.1029/2005JB003860
- Wyss et al. (1997), JGR, https://doi.org/10.1029/97jb01074

