Presentation Information
[S23-15]Stress Monitoring of the 2025 Earthquake Swarm off the Tokara Islands Using Focal Mechanism Solutions
*Kazutoshi IMANISHI1, Suguru Yabe1, Aitaro Kato2, Hiroshi Yakiwara3 (1. Geological Survey of Japan, AIST, 2. ERI, University of Tokyo, 3. Kagoshima University)
2025年6月21日から、トカラ列島近海で非常に活発な群発地震活動が発生している。この群発地震は宝島から悪石島の海域に広がり、震度1以上を観測した地震が2000回を超えるなど、周辺地域の地震活動としては近年まれに見る規模となっている。また、この活動に同期して顕著な地殻変動も観測されており(地震調査委員会, 2025)、マグマや流体、ゆっくりすべりなどとの関連が示唆されている。
本研究では、Terakawa et al. (2016) が2014年御岳山噴火の際に適用し、その有効性を実証した応力モニタリング手法を用いて、この群発地震活動における地下応力状態の変化を評価した。通常、地震は対象地域の応力場(基準応力場)と調和した姿勢をもつクラックで発生するため、ミスフィット角(観測されたすべり角と基準応力場から計算されるすべり角の差)は小さくなる。しかし、ゆっくりすべりやマグマの貫入などで基準応力場が乱れると、異なる姿勢のクラックが動きやすくなり、ミスフィット角は大きくなる。したがって、ミスフィット角の時間平均を求めることで、応力場の時間変化を可視化できる。
基準応力場として、1997年7月~2024年6月20日までに発生した深さ20 km 以浅の地震のF-net解を用い、Michael (1984)の方法により推定した。その結果、北西ー南東方向に最小主応力軸を持つ、正断層と横ずれが共存する応力場が得られた。この応力場から計算されたミスフィット角の平均値は7°であり、この値は、地震が基準応力場から逸脱した応力場で発生したかどうかを判断する際のしきい値となる。次に、群発地震発生以降のF-net解に対し、前述の応力場を用いてミスフィット角の平均値を10イベントの移動平均で計算した。その結果、群発地震開始の6月21日から26日頃(フェーズ1)、および6月29日~7月7日頃(フェーズ2)にかけて、ミスフィット角がしきい値を明瞭に上回った。7月8日以降(フェーズ3)はメカニズム解の数が少ないため判断が難しいが、ややしきい値を上回る状態が続いているようにも見える。気象庁一元化カタログを用いた地震の日ごとの発生個数を見ると、ミスフィット角が大きくなる各フェーズの時期と地震発生数の多い時期が同期していることがわかる。これは、地震が何らかの応力変動により引き起こされ、応力場が局所的に擾乱したことでミスフィット角の大きい地震が多発したと解釈できる。また、各フェーズの発生時期は、詳細に推定した震源の時空間分布の特徴や地殻変動のパターン(地震調査委員会, 2025)とも対応している。当日の発表では、これらの特徴を説明し得る応力駆動源について報告する予定である。
謝辞:解析には防災科研F-net解、気象庁一元化カタログを使用しました。記して感謝いたします。
参考文献
Michael, A. J. (1984) Determination of stress from slip data: faults and folds, J. Geophys. Res., 89, 11517–11526.
Terakawa, T., Kato, A., Yamanaka, Y., Maeda, Y., Horikawa, S., Matsuhiro, K., & Okuda, T. (2016). Monitoring eruption activity using temporal stress changes at Mount Ontake volcano. Nature Communications, 7, 10797.
地震調査委員会 (2025) 2025年7月の地震活動の評価, https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2025/2025_07.pdf
本研究では、Terakawa et al. (2016) が2014年御岳山噴火の際に適用し、その有効性を実証した応力モニタリング手法を用いて、この群発地震活動における地下応力状態の変化を評価した。通常、地震は対象地域の応力場(基準応力場)と調和した姿勢をもつクラックで発生するため、ミスフィット角(観測されたすべり角と基準応力場から計算されるすべり角の差)は小さくなる。しかし、ゆっくりすべりやマグマの貫入などで基準応力場が乱れると、異なる姿勢のクラックが動きやすくなり、ミスフィット角は大きくなる。したがって、ミスフィット角の時間平均を求めることで、応力場の時間変化を可視化できる。
基準応力場として、1997年7月~2024年6月20日までに発生した深さ20 km 以浅の地震のF-net解を用い、Michael (1984)の方法により推定した。その結果、北西ー南東方向に最小主応力軸を持つ、正断層と横ずれが共存する応力場が得られた。この応力場から計算されたミスフィット角の平均値は7°であり、この値は、地震が基準応力場から逸脱した応力場で発生したかどうかを判断する際のしきい値となる。次に、群発地震発生以降のF-net解に対し、前述の応力場を用いてミスフィット角の平均値を10イベントの移動平均で計算した。その結果、群発地震開始の6月21日から26日頃(フェーズ1)、および6月29日~7月7日頃(フェーズ2)にかけて、ミスフィット角がしきい値を明瞭に上回った。7月8日以降(フェーズ3)はメカニズム解の数が少ないため判断が難しいが、ややしきい値を上回る状態が続いているようにも見える。気象庁一元化カタログを用いた地震の日ごとの発生個数を見ると、ミスフィット角が大きくなる各フェーズの時期と地震発生数の多い時期が同期していることがわかる。これは、地震が何らかの応力変動により引き起こされ、応力場が局所的に擾乱したことでミスフィット角の大きい地震が多発したと解釈できる。また、各フェーズの発生時期は、詳細に推定した震源の時空間分布の特徴や地殻変動のパターン(地震調査委員会, 2025)とも対応している。当日の発表では、これらの特徴を説明し得る応力駆動源について報告する予定である。
謝辞:解析には防災科研F-net解、気象庁一元化カタログを使用しました。記して感謝いたします。
参考文献
Michael, A. J. (1984) Determination of stress from slip data: faults and folds, J. Geophys. Res., 89, 11517–11526.
Terakawa, T., Kato, A., Yamanaka, Y., Maeda, Y., Horikawa, S., Matsuhiro, K., & Okuda, T. (2016). Monitoring eruption activity using temporal stress changes at Mount Ontake volcano. Nature Communications, 7, 10797.
地震調査委員会 (2025) 2025年7月の地震活動の評価, https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2025/2025_07.pdf
