Presentation Information
[S23-16]Transient crustal deformation synchronous with the 2025 earthquake swarm off the Tokara Islands
*Yutaro OKADA1, Yusaku Ohta2, Miku Ohtate2, Yoshiaki Ito2, Mako Ohzono3, Shigeru Nakao4 (1. International Research Institute of Disaster Science, Tohoku University, 2. Graduate School of Science, Tohoku University, 3. Institute of Seismology and Volcanology, Faculty of Science, Hokkaido University, 4. Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University)
群発地震は明確な本震を持たない地震系列であり、マグマの貫入や流体の移動などの過渡的なイベントに伴って発生する例が数多く報告されている。トカラ列島近海では、M 5以上の地震を含む群発地震活動が、繰り返し観測されており(地震調査研究推進本部, 2025)、直近のイベントは、2025年6月後半に開始し、約1カ月継続した。活発な群発地震活動は、過渡的な地殻変動と同期して観測される場合がある。地殻変動観測は、非地震性の変動も捉えることができるため、群発地震の駆動源の解明への貢献が期待される。そこで本研究では、トカラ列島近海における群発地震を駆動源の解明を目的として、国土地理院が設置したGNSS基盤観測網であるGEONETに加え、ソフトバンク株式会社が設置したGNSS観測局のデータを統合解析した。
本研究では、GipsyX Ver 2.3(Bertiger et al., 2020)の精密単独測位法を用い、7地点のGNSS観測局における2019年11月から2025年7月までの日座値を解析した。2024年12月から2025年5月までのデータから算出した変位速度を差し引いた時系列と地震活動を比較した結果、2021年4月、2021年12月、2023年9月、および2025年6月から7月の群発地震活動に同期した非定常変動が複数観測局で確認された(図1)。2021年から2023年に発生した群発イベントは、小宝島~悪石島間の海域で発生したものであり、これらに同期した地殻変動は、小宝島と悪石島の観測局における変動が特に顕著であった。振幅や方位はイベントごとに多少異なるものの、小宝島で北東方向、悪石島で南西方向の水平変位が観測され、その変位量はいずれも1 cmを超える(図1)。
2025年イベントにおける地震の震源位置と地表変位パターンは、これまでのイベントのものと異なる様相を示す。2025年6月20日から7月1日までの期間(Phase 1)では、震源分布と地殻変動パターンが2021年から2023年までに確認された過去イベントと類似していた。続く7月2日から3日までの期間(Phase 2)では、これまでの小宝島~悪石島間の地震活動に加えて、小宝島南西に位置する宝島の北側でも活発な地震活動が観測された。これに同期して、宝島では南南西方向の、小宝島では北北西方向の5 cmを超える変位が観測され、悪石島では南西方向の変位が継続していた。その後、7月4日から17日の期間(Phase 3)には、宝島北側の地震活動が静穏化するとともに、宝島での変位振幅が減少した。一方、小宝島~悪石島間の地震活動は継続し、Phase 1と類似した地表変位が小宝島と悪石島で観測された。
本研究では、2025年イベントに着目し、各Phaseにおいて観測された地表変位を説明する矩形断層モデル(Okada, 1992)を、グリッドサーチと非線形最小二乗インバージョン(Matsu’ura & Hasegawa, 1987)の組み合わせにより推定した(cf. Takagi et al., 2019)。非地震性変動に焦点を当てるため、F-net CMT解からOkada (1992)の解析解で算出した変位を、観測変位から差し引いたデータを用いた。モデリングの結果、Phase 1およびPhase 3の地殻変動は、小宝島と悪石島の間に位置する北西傾斜の断層における正断層すべりで説明可能であり、推定された規模はそれぞれMw 6.47、Mw 6.30であった。また、Phase 2では、Phase 3と同様の正断層すべり(Mw 6.22)に加えて、宝島~小宝島間の東北東傾斜の断層におけるMw 6.45の左横ずれすべりが発生したと考えられる。
以上より、2025年にトカラ列島近海で発生した群発地震の駆動力として、非地震性すべりの存在が示唆される。一方、全てのPhaseにおいて、開口クラックを力源とするモデリングも行ったが、カイ二乗誤差やAICの比較の結果、上述のモデルがより妥当であるという結論となった。これらの結果は、より深部におけるマグマ貫入が、地震活動と非地震性すべりの駆動源であった場合でも、島嶼部の限られたGNSS観測網では、マグマ貫入そのものを捉えることは困難であることを示す。
謝辞
本研究では、国土地理院により提供されたGNSSデータと、ソフトバンク株式会社およびALES株式会社により「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みの下提供されたGNSSデータを解析に使用した。また、本研究を実施するにあたり、公益財団法人上廣倫理財団、文部科学省 科学研究費助成事業(特別研究促進費)、および「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」の支援を受けた。記して感謝申し上げる。
本研究では、GipsyX Ver 2.3(Bertiger et al., 2020)の精密単独測位法を用い、7地点のGNSS観測局における2019年11月から2025年7月までの日座値を解析した。2024年12月から2025年5月までのデータから算出した変位速度を差し引いた時系列と地震活動を比較した結果、2021年4月、2021年12月、2023年9月、および2025年6月から7月の群発地震活動に同期した非定常変動が複数観測局で確認された(図1)。2021年から2023年に発生した群発イベントは、小宝島~悪石島間の海域で発生したものであり、これらに同期した地殻変動は、小宝島と悪石島の観測局における変動が特に顕著であった。振幅や方位はイベントごとに多少異なるものの、小宝島で北東方向、悪石島で南西方向の水平変位が観測され、その変位量はいずれも1 cmを超える(図1)。
2025年イベントにおける地震の震源位置と地表変位パターンは、これまでのイベントのものと異なる様相を示す。2025年6月20日から7月1日までの期間(Phase 1)では、震源分布と地殻変動パターンが2021年から2023年までに確認された過去イベントと類似していた。続く7月2日から3日までの期間(Phase 2)では、これまでの小宝島~悪石島間の地震活動に加えて、小宝島南西に位置する宝島の北側でも活発な地震活動が観測された。これに同期して、宝島では南南西方向の、小宝島では北北西方向の5 cmを超える変位が観測され、悪石島では南西方向の変位が継続していた。その後、7月4日から17日の期間(Phase 3)には、宝島北側の地震活動が静穏化するとともに、宝島での変位振幅が減少した。一方、小宝島~悪石島間の地震活動は継続し、Phase 1と類似した地表変位が小宝島と悪石島で観測された。
本研究では、2025年イベントに着目し、各Phaseにおいて観測された地表変位を説明する矩形断層モデル(Okada, 1992)を、グリッドサーチと非線形最小二乗インバージョン(Matsu’ura & Hasegawa, 1987)の組み合わせにより推定した(cf. Takagi et al., 2019)。非地震性変動に焦点を当てるため、F-net CMT解からOkada (1992)の解析解で算出した変位を、観測変位から差し引いたデータを用いた。モデリングの結果、Phase 1およびPhase 3の地殻変動は、小宝島と悪石島の間に位置する北西傾斜の断層における正断層すべりで説明可能であり、推定された規模はそれぞれMw 6.47、Mw 6.30であった。また、Phase 2では、Phase 3と同様の正断層すべり(Mw 6.22)に加えて、宝島~小宝島間の東北東傾斜の断層におけるMw 6.45の左横ずれすべりが発生したと考えられる。
以上より、2025年にトカラ列島近海で発生した群発地震の駆動力として、非地震性すべりの存在が示唆される。一方、全てのPhaseにおいて、開口クラックを力源とするモデリングも行ったが、カイ二乗誤差やAICの比較の結果、上述のモデルがより妥当であるという結論となった。これらの結果は、より深部におけるマグマ貫入が、地震活動と非地震性すべりの駆動源であった場合でも、島嶼部の限られたGNSS観測網では、マグマ貫入そのものを捉えることは困難であることを示す。
謝辞
本研究では、国土地理院により提供されたGNSSデータと、ソフトバンク株式会社およびALES株式会社により「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みの下提供されたGNSSデータを解析に使用した。また、本研究を実施するにあたり、公益財団法人上廣倫理財団、文部科学省 科学研究費助成事業(特別研究促進費)、および「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」の支援を受けた。記して感謝申し上げる。

