Presentation Information
[S24-02][Invited]Development of strong motion seismology triggered by the 1995 Kobe earthquake
*Kojiro IRIKURA1 (1. Aichi Institute of Technology)
はじめに:「強震動地震学」すなわち”strong motion seismology”)とは、最も簡潔に表現すると“a science and technology based on strong motion data and the earthquake disaster records near earthquake sources”と定義される。大地震が起こったとき、震源周辺の建築物や土木構造物は強い揺れによって破壊され、大きな被害が引き起こされる。震源近傍の強い揺れが強震動と呼ばれ、この強震動評価に関する科学と技術が強震動地震学である。地震は断層運動で引き起こされること、地震による揺れは、震源となる断層面でのすべり分布、震源から観測点にまでの伝播経路の地層構造、それに観測点直下の地盤構造によって理論的に評価できることは1995年の地震以前に地震研究者の間ではよく知られていた。さらに、震源を取り巻く地域で地震動の精密な観測がなされれば、地震時の断層面でのすべり分布はインバージョン手法により評価可能であることは知られていた。しかしながら、インバージョンのために必要不可欠な高密度強震動観測は1995年以前に日本では殆どなされてなかった。一方で、超高層建物、長大橋、大規模オイルタンク、原発、などの重要な構造物は、大地震による強い揺れでも決して壊れないことが要求されている、国際的にも重要構造物の設計のためには強震動予測が必要不可欠とされるようになっていた。一方で、強震動の物理学的評価は当面困難という考えが支配的で、大地震のときに別の場所で観測された強震動の統計的な解析や“模擬地震動”などの解析法を用いて、設計用の強震動が評価されていた。Californiaでは大地震を引き起こす活断層の存在が良く知られているところがあったため、断層近傍に強震計を設置して、実際に観測に成功し、断層運動に依る強震動の生成に関して先駆的研究が行われていた。
1995年兵庫県南部地震の強震動:この地震は上記のような時代背景の下で生じた。この地震が発生した時、日本における強震動の観測体制は極めて貧弱な状態だった。しかし、神戸・大阪という大都市の近くで生じたため、公的機関に依る強震動観測は少なかったが、民間による強震動観測が少なからずなされていた。中でも、民間会社や大学研究者の集まりである関震協は1994年末に大阪・神戸地域に10台の強震計を設置し観測を開始していた。その中の1つ神戸大学観測点は六甲断層系の極近傍にあり、1995年1月17日の地震の強震動の測定に成功した。実際の強震計記録は、これまで強震記録として出回っていたような複雑なものではなく、極めて単純なパルス形状の波形であった。阪神地域では、デジタルの強震計は極めて少なかったが、数台のアナログ強震計が設置されていた。中には紙ベースものもあったが、個人的努力でデジタル化され、強震動記録を用いた震源インバージョン解析が初めてなされ、きわめて興味ある結果が得られた
強震動予測レシピ:1995年兵庫県南部地震を含む日本およびカルフォルニアの内陸地殻内地震およびの震源インバージョンの結果を収集して、断層すべりの不均質性について統計的解析が行われた。その結果、地震モーメントと破壊域のスケーリング則に加えて、断層内のすべり分布の不均質性の統計的解析で断層内にもう一つの不均質性(例えば、強震動生成域)が発見され、そのスケーリング則の存在が確かめられた。強震動予測レシピは、これらのスケーリング則を相補的に用いて震源モデルを構築し、それによる強震動を評価するための方法論である。断層モデルは、地質学的フィールド研究の成果を取り入れて巨視的断層パラメータの推定と強震動の評価のための微視的断層パラメータで構築される。予測された強震動の検証には工学的に作られてきた距離減衰式が用いられる。 レシピが提案された時点(入倉・三宅, 2001)では、内陸地殻内地震でMw6.8より大きい地震は1995年兵庫県南部地震(Mw 6.9)のみであったが、その後、2016年熊本地震(Mw 7.1)さらに2024年能登半島地震(Mw 7.6)など1995年兵庫県南部地震をはるかに上回る大地震が発生し密な強震動記録が得られた。これらの強震動記録を用いて、レシピの改良がなされ、その方法論の有効性が確かめられてきた。
今後の展開:方法論の信頼性を高めるには、日本国内のみならず海外の大地震の精度良いデータを収集し、有効性の検証が必要である。さらに、国際的な評価や批判を受ける必要がある。USAのカルフォルニアのSCEC (Statewide California Earthquake Cente)に構築されている広帯域地震動プラットフォームは、ユーザー自身がVerificationとValidation(手法検証と結果の妥当性確認)が行えるシステムづくりを目指している。米国で開発されたGP法(Graves and Pitarka, 2010)と日本のレシピよるシミュレーション結果が比較検討されている。GP法は、すべり分布がk-2の形状を有するランダム震源モデルで、破壊速度やライズタイムも一定のバラツキをもつ方法である。この結果では、2つの方法は、震源モデルは大きく異なるが、シミュレーション結果のgoodness of fit (ln data/model)は1σの範囲内でよく一致している(Pitarka et al., 2018)。今後さらなる展開が期待される。
1995年兵庫県南部地震の強震動:この地震は上記のような時代背景の下で生じた。この地震が発生した時、日本における強震動の観測体制は極めて貧弱な状態だった。しかし、神戸・大阪という大都市の近くで生じたため、公的機関に依る強震動観測は少なかったが、民間による強震動観測が少なからずなされていた。中でも、民間会社や大学研究者の集まりである関震協は1994年末に大阪・神戸地域に10台の強震計を設置し観測を開始していた。その中の1つ神戸大学観測点は六甲断層系の極近傍にあり、1995年1月17日の地震の強震動の測定に成功した。実際の強震計記録は、これまで強震記録として出回っていたような複雑なものではなく、極めて単純なパルス形状の波形であった。阪神地域では、デジタルの強震計は極めて少なかったが、数台のアナログ強震計が設置されていた。中には紙ベースものもあったが、個人的努力でデジタル化され、強震動記録を用いた震源インバージョン解析が初めてなされ、きわめて興味ある結果が得られた
強震動予測レシピ:1995年兵庫県南部地震を含む日本およびカルフォルニアの内陸地殻内地震およびの震源インバージョンの結果を収集して、断層すべりの不均質性について統計的解析が行われた。その結果、地震モーメントと破壊域のスケーリング則に加えて、断層内のすべり分布の不均質性の統計的解析で断層内にもう一つの不均質性(例えば、強震動生成域)が発見され、そのスケーリング則の存在が確かめられた。強震動予測レシピは、これらのスケーリング則を相補的に用いて震源モデルを構築し、それによる強震動を評価するための方法論である。断層モデルは、地質学的フィールド研究の成果を取り入れて巨視的断層パラメータの推定と強震動の評価のための微視的断層パラメータで構築される。予測された強震動の検証には工学的に作られてきた距離減衰式が用いられる。 レシピが提案された時点(入倉・三宅, 2001)では、内陸地殻内地震でMw6.8より大きい地震は1995年兵庫県南部地震(Mw 6.9)のみであったが、その後、2016年熊本地震(Mw 7.1)さらに2024年能登半島地震(Mw 7.6)など1995年兵庫県南部地震をはるかに上回る大地震が発生し密な強震動記録が得られた。これらの強震動記録を用いて、レシピの改良がなされ、その方法論の有効性が確かめられてきた。
今後の展開:方法論の信頼性を高めるには、日本国内のみならず海外の大地震の精度良いデータを収集し、有効性の検証が必要である。さらに、国際的な評価や批判を受ける必要がある。USAのカルフォルニアのSCEC (Statewide California Earthquake Cente)に構築されている広帯域地震動プラットフォームは、ユーザー自身がVerificationとValidation(手法検証と結果の妥当性確認)が行えるシステムづくりを目指している。米国で開発されたGP法(Graves and Pitarka, 2010)と日本のレシピよるシミュレーション結果が比較検討されている。GP法は、すべり分布がk-2の形状を有するランダム震源モデルで、破壊速度やライズタイムも一定のバラツキをもつ方法である。この結果では、2つの方法は、震源モデルは大きく異なるが、シミュレーション結果のgoodness of fit (ln data/model)は1σの範囲内でよく一致している(Pitarka et al., 2018)。今後さらなる展開が期待される。
