Presentation Information
[S24-04][Invited]Development of a long-term forecast of crustal earthquakes using geodetic observation data
*Takuya NISHIMURA1 (1. Kyoto University)
1995年兵庫県南部地震を契機として設置された地震調査研究推進本部(以下,地震本部)により,日本国内の大地震の長期予測は精力的に進められてきた.兵庫県南部地震のような地殻内で発生する震源の浅い大地震(以下,内陸地震)の長期予測について,地震本部では主要活断層帯の長期評価と活断層の地域評価という2通りの評価を実施している.主要活断層帯の長期評価については,日本全国のM7.0以上の地震を発生させる活断層帯の評価が一通り終了し,確率論的地震動予測地図の作成にも活用されている.一方,活断層の地域評価については,評価手法の策定から15年以上経過した2025年現在でも,日本列島の半分程度の地域しか公表されておらず,今後も時間がかかることが予想される.さらに,これらの活断層評価では,既知の活断層から離れた場所で発生する内陸地震や活断層で発生する想定最大規模より小さな内陸地震が対象となっておらず,2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)や2018年大阪府北部の地震(M6.1)のような被害地震が対象外となっているという課題がある.
このような背景のもと,2024年8月9日には地震本部政策委員会調査観測計画部会により,「内陸で発生する地震の新たな調査観測について」がまとめられ,内陸地震の長期予測手法の高度化のためには,①地震観測網により得られた地震活動データ,②歴史・考古資料の調査に基づく地震活動履歴等の情報,③活断層調査で得られる地震の発生履歴等の情報,④測地観測・測量データ(GNSS、InSAR等) といった情報を活用して評価を行う必要性が示された.また,グローバルな地震を対象とした長期予測の研究では,測地データや地震活動データを含む複数のデータや手法を統合した予測を行うことで,より高精度な地震長期予測モデルを構築できることが示されている(Strader et al., 2018).このような課題に対する研究を促進するために,2025年8月には地震本部からの委託研究「活断層等内陸で発生する地震の評価手法の高度化に関する調査研究」が開始されている.
筆者らは,日本列島を対象とした測地観測データを用いた内陸地震の長期予測手法について研究を行なってきた.Nishimura(2022)では,GNSSデータなどの測地観測から得られるひずみ速度を用いた簡易な地震発生予測手法を整理し,西日本に過去に発生した内陸地震の分布と相関があることを示した.この手法を用いて日本列島のM6以上の内陸地震発生確率の試算を行うと(Fig. 1;Nishimura and Shishikura, 2025),新潟-神戸ひずみ集中帯や伊豆半島,九州中央部などで30年間にM6以上の地震の発生する確率が1%を超えていることがわかった.同様の手法を用いた試算は,トルコやチベット高原南部(Wei et al., 2023),台湾(Neha et al., 2025)でも行われているが,これらの試算を通して,現在,測地観測データから換算される地震モーメント速度は,過去の大地震の地震モーメント速度よりも大きく,両者の比の地域依存性も大きいことがわかった.今後,委託研究の中でも測地データを用いた内陸地震の長期評価手法の高度化を進めていく予定であり,講演では内陸地震の長期予測に関する現状の成果と課題について紹介する.
参考文献
Neha, Chuang, R.Y., Nishimura, T., Lee, Z., and Gao J., Earth Planets Space 77:125, 2025.
Nishimura, T., Earth Planets Space, 74:58, 2022.
Nishimura, T., and M. Shishikura, J. Dis. Res., 20, 125-132, 2025.
Wei, C.M., Meng, G.J., Wu, W.W., Chen, X.L., Zhang, M., Zhao, G.Q., Dong, Z.H., and Yang, Y.C., Bull. Seismol. Soc. Am., 114, 258-277, 2024.
このような背景のもと,2024年8月9日には地震本部政策委員会調査観測計画部会により,「内陸で発生する地震の新たな調査観測について」がまとめられ,内陸地震の長期予測手法の高度化のためには,①地震観測網により得られた地震活動データ,②歴史・考古資料の調査に基づく地震活動履歴等の情報,③活断層調査で得られる地震の発生履歴等の情報,④測地観測・測量データ(GNSS、InSAR等) といった情報を活用して評価を行う必要性が示された.また,グローバルな地震を対象とした長期予測の研究では,測地データや地震活動データを含む複数のデータや手法を統合した予測を行うことで,より高精度な地震長期予測モデルを構築できることが示されている(Strader et al., 2018).このような課題に対する研究を促進するために,2025年8月には地震本部からの委託研究「活断層等内陸で発生する地震の評価手法の高度化に関する調査研究」が開始されている.
筆者らは,日本列島を対象とした測地観測データを用いた内陸地震の長期予測手法について研究を行なってきた.Nishimura(2022)では,GNSSデータなどの測地観測から得られるひずみ速度を用いた簡易な地震発生予測手法を整理し,西日本に過去に発生した内陸地震の分布と相関があることを示した.この手法を用いて日本列島のM6以上の内陸地震発生確率の試算を行うと(Fig. 1;Nishimura and Shishikura, 2025),新潟-神戸ひずみ集中帯や伊豆半島,九州中央部などで30年間にM6以上の地震の発生する確率が1%を超えていることがわかった.同様の手法を用いた試算は,トルコやチベット高原南部(Wei et al., 2023),台湾(Neha et al., 2025)でも行われているが,これらの試算を通して,現在,測地観測データから換算される地震モーメント速度は,過去の大地震の地震モーメント速度よりも大きく,両者の比の地域依存性も大きいことがわかった.今後,委託研究の中でも測地データを用いた内陸地震の長期評価手法の高度化を進めていく予定であり,講演では内陸地震の長期予測に関する現状の成果と課題について紹介する.
参考文献
Neha, Chuang, R.Y., Nishimura, T., Lee, Z., and Gao J., Earth Planets Space 77:125, 2025.
Nishimura, T., Earth Planets Space, 74:58, 2022.
Nishimura, T., and M. Shishikura, J. Dis. Res., 20, 125-132, 2025.
Wei, C.M., Meng, G.J., Wu, W.W., Chen, X.L., Zhang, M., Zhao, G.Q., Dong, Z.H., and Yang, Y.C., Bull. Seismol. Soc. Am., 114, 258-277, 2024.

