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[S24-07]Crustal Structure at the Segment Boundary between the Middle and Southern parts of the Hinagu Fault Zone

*Yasuhira AOYAGI1, Hidenobu TAKAHASHI1 (1. CRIEPI)
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1.はじめに
 内陸地震のハザード予測においては,活断層の破壊区間の想定が重要である。長大な活断層系の場合には,断層幾何や活動履歴等に基づいて,複数のセグメントに区分されるのが一般的である。現状では,セグメント境界で破壊が停止することが確実でない場合には,全体が一括して破壊されることを想定する場合も多い。しかし,そのような連動型大地震の再来間隔は個別セグメントのものに比べて有意に長いため,地震ハザード予測においては,全長を評価することが必ずしも安全側の評価につながらない。適切なハザード評価を行う上では,できるだけ多くの指標を合理的に説明しうる,蓋然性の高いセグメント区分を行うことが必要と思われる。そのため,我々は破壊を停止させるセグメント境界部の地下構造の特徴抽出を進めている。本発表では,近い将来の大地震発生の可能性が懸念されている,日奈久断層系のセグメント境界における地下構造の特徴に基づいて,両者の連動可能性について展望したい。

2.日奈久断層帯の地震活動
 日奈久断層帯は,全長80 km に及ぶ長大活断層であり,北から高野-白旗区間,日奈久区間,八代海区間に区分される(地震調査研究推進本部,2013)。2016年熊本地震(Mw7.0)では,布田川断層に加えて日奈久断層帯の北部(高野-白旗)区間で破壊が生じた一方,日奈久断層の中部(日奈久)区間や南部(八代海)区間には破壊が連動しなかった。しかし,2016年熊本地震後には,日奈久断層中部において地震活動が活発化しており,新たな大地震の発生が懸念されている。Nanjo et al.(2019)は,日奈久断層帯周辺の地震活動度の変化に基づいて,日奈久断層中部が次の破壊開始点になる可能性を指摘している。

3.稠密微小地震観測とトモグラフィ解析
 我々は,2022 年10~2023 年8 月,日奈久区間と八代海区間のセグメント境界を中心とする八代海沿岸に,約5 km 間隔で計30 点の臨時観測点を設置して稠密微小地震観測を行った。観測期間中に気象庁一元化震源カタログにおいて対象地域に震源が求められている4336個の地震を対象として,winシステム(卜部・束田,1992)でP波,S波到着時刻を検測した。P波とS波の到着時刻が10観測点以上で得られた地震に対して,周辺にある定常観測点の検測値も統合した上で,1次元速度構造モデルに基づく暫定的な震源決定をhypomh(Matsu’ura & Hirata, 1987)で行った。この結果,震源が1 km以内の誤差で求まった1422個の地震に関する走時データを用いて,tomoDD(Zhang & Thurber, 2003)によって3次元地震波トモグラフィ解析を行った。解析空間は日奈久断層帯の走向方向に長軸を持つ80 km×36 km で,水平格子間隔は4 km である。深さ方向には,上部地殻を2.5 km 間隔に分割した。また,Coulomb3.3(Toda et al., 2011)を用いて,推定された両断層セグメントの形態から,連動のしやすさを検討した。

4.得られた成果
 日奈久断層帯沿いには, P 波,S 波速度構造ともに深さ5 km 以上に達する低速度領域が分布し,セグメント境界で顕著な変化が認められた。すなわち,日奈久区間では,断層直下~北西側に幅の狭い低速度帯が分布する一方,八代海区間では断層の南東側に幅の広い低速度帯が分布する(図)。両者はセグメント境界付近で向きを変えている。また,断層帯を横断する深度断面から,日奈久区間では幅の狭い低速度帯が鉛直~高角北西傾斜で認められるのに対し,八代海区間では幅の広い低速度帯が漏斗状に分布する(図)。
 並走する日奈久断層帯のうち,変位量が最も大きいメイントレースは最北(図中断面上部の一番左の▼)の断層である(岡村ほか,2019)。その断層は,日奈久区間では鉛直~高角北西傾斜,八代海区間では漏斗状の低速度帯の北縁に沿って南東側に傾斜していると推測される。また,発震機構から推定される応力場(Matsumoto et al., 2015)から,日奈久区間では右横ずれ,八代海区間では右横ずれと正断層が合わさった変位センスが想定される。
 二つの断層セグメントが逆傾斜の場合,日奈久区間の破壊は隣接する八代海区間の北部の断層活動を抑制させる傾向がΔCFFから認められた。このように,両セグメントは地下で逆傾斜かつ変位センスが異なり,走向も変化することから,地震時には破壊の停止部となる可能性が指摘できる。
 なお,このセグメント境界付近では,深部微動が時空間的に集中して発生している(高橋ほか地震学会2023,添付図の×印)。また,本大会では,高橋ほかが通常地震の精密な震源分布について報告する予定である。