Presentation Information
[S25-07]Re-evaluation on the interseismic slip deficit rate distribution along the Kamchatka trench
*Fumiaki TOMITA1 (1. IRIDeS, Tohoku University)
カムチャッカ沈み込み帯では,太平洋プレートが年間約8 cmの速度でオホーツクプレート(または北アメリカプレート)下に沈み込み,プレート間固着によって蓄積した歪みによって過去に繰り返し巨大地震が発生してきた.この沈み込み帯は,北・中央・南の3つのセグメントに分けられ、特に,南セグメントでは1737年(Mw9.2)・1841年(Mw9.0)・1952年(Mw9.0)にM9クラスの巨大地震が発生したとされる.
この南セグメントにおいて,2025年7月29日にMw8.8の巨大地震が発生した.震源は中央・南セグメントの境界付近で発生し,震源から南側にすべりが広がったとされている(USGS, 2025).1952年のイベントでは,深さ30–60 kmのプレート境界で大すべりが発生した可能性が指摘されている(Johnson & Satake, 1999)一方で,2025年のイベントの主破壊はこれよりも浅い深さ約30 km付近で起きたとされている(USGS, 2025).こうした2つのイベントの空間的な相補性を理解することは,この地域における巨大地震の発生サイクルや発生メカニズムについて検討する上で極めて重要である.しかし,1952年のイベントが本当にプレート境界の深部域で発生したかは,古いイベントであるためにその検討が困難である.
1952年のイベントがプレート境界の深部域で発生するためには,地震間にすべり欠損の蓄積が生じていることが予想される.カムチャッカ沈み込み帯での地震間固着の推定は,Bürgmann et al. (2005)によって2001年から2003年にかけてのGNSS変位速度を用いて行われている.しかし,使用可能なGNSS観測点が少ないため,感度の高い観測点周辺に地震間固着の強い領域が集中した分布になっていた.そのため,地震間すべり欠損の発生深度についての議論が困難であった.
本研究では、Bürgmann et al. (2005)と同じGNSS観測データを用い,すべり欠損速度分布の再推定を行なった.推定に,Tomita et al. (2021)によるボロノイセルによる小断層分割とReversible-jump MCMC(RJ-MCMC)法を組み合わせた手法を用いた.この手法では,分布の平滑性とボロノイセルの数についてのスパース推定が可能であり,観測点近傍に固着が集中する問題を回避できると期待される.プレート境界のモデルにはSlab2.0を用い,すべり欠損を推定するプレート境界深さの下限を90 kmとした.すべり欠損と地表面変位を結びつけるグリーン関数の計算には二層粘弾性構造における変形(Fukahata & Matsu’ura, 2006)を仮定し,弾性応答のみを考慮した弾性モデルと粘弾性応答を考慮した粘弾性モデルの2種類のすべり欠損速度分布を推定した.なお,粘弾性モデルにおける最適なリソスフェアの厚さは、WAICにより70 kmと決定した.
結果として,弾性モデル・粘弾性モデルともに,南セグメントでは海溝近傍から深さ60 km程度まで強い固着が存在していることが示され,Johnson and Satake (1999)の1952年地震時大すべり域では強いすべり欠損が生じていたと考えられる. なお,回復テスト(Recovery Test)の結果,本手法では深さ15–60 kmの固着は解像できるものの,海溝近傍(15 km以浅)やセグメント境界での固着状態は特定が困難であることが示された.しかし,南セグメントの深部での固着の存在は十分に解像できていると考えられる.
今回の推定結果に基づくと,地震間固着の観点からはJohnson and Satake (1999)で推定された深部で大すべりを起こすというモデルは許容可能であり,1952年イベントと2005 年イベントの主破壊域が相補的なものである可能性を間接的に支持している.すなわち,2025 年イベントで1952年のイベントで破壊された力学的固着域を部分的に再び破壊した可能性はあるが,それとは独立して1952年のイベントでは破壊されなかった別の力学的固着域を2025年イベントは破壊したと考えられる.もし仮に,1952年のイベントと2025 年イベントの主破壊域が相補的であった場合,カムチャッカ南部セグメントは,一つの大きなアスペリティではなく,複数の力学的固着パッチが存在することになる.そのため,それらが独立に破壊される場合だけではなく,同時に破壊され1952年のMw9.0を超える超巨大地震が発生する可能性も考えられる.
しかし,1952年のイベントと2025 年イベントの主破壊域の相補性についての議論は,それぞれの地震の主破壊域を様々な観測データから再検討する必要があり,現時点で結論づけることは難しい.また,この議論の促進には地震時の変動だけではなく,余効変動から求められる余効すべりも重要となると考えられる.例えば,1952年のイベントの力学的固着域が2025年の主破壊域のdowndip側にある場合,2025年主破壊域のdowndip側の余効すべりは顕著にならないことが期待される.こうした地震間・地震時・地震後の変動から総合的にカムチャッカ南セグメントでのプレート境界の空間特性が明らかになることを期待したい.
この南セグメントにおいて,2025年7月29日にMw8.8の巨大地震が発生した.震源は中央・南セグメントの境界付近で発生し,震源から南側にすべりが広がったとされている(USGS, 2025).1952年のイベントでは,深さ30–60 kmのプレート境界で大すべりが発生した可能性が指摘されている(Johnson & Satake, 1999)一方で,2025年のイベントの主破壊はこれよりも浅い深さ約30 km付近で起きたとされている(USGS, 2025).こうした2つのイベントの空間的な相補性を理解することは,この地域における巨大地震の発生サイクルや発生メカニズムについて検討する上で極めて重要である.しかし,1952年のイベントが本当にプレート境界の深部域で発生したかは,古いイベントであるためにその検討が困難である.
1952年のイベントがプレート境界の深部域で発生するためには,地震間にすべり欠損の蓄積が生じていることが予想される.カムチャッカ沈み込み帯での地震間固着の推定は,Bürgmann et al. (2005)によって2001年から2003年にかけてのGNSS変位速度を用いて行われている.しかし,使用可能なGNSS観測点が少ないため,感度の高い観測点周辺に地震間固着の強い領域が集中した分布になっていた.そのため,地震間すべり欠損の発生深度についての議論が困難であった.
本研究では、Bürgmann et al. (2005)と同じGNSS観測データを用い,すべり欠損速度分布の再推定を行なった.推定に,Tomita et al. (2021)によるボロノイセルによる小断層分割とReversible-jump MCMC(RJ-MCMC)法を組み合わせた手法を用いた.この手法では,分布の平滑性とボロノイセルの数についてのスパース推定が可能であり,観測点近傍に固着が集中する問題を回避できると期待される.プレート境界のモデルにはSlab2.0を用い,すべり欠損を推定するプレート境界深さの下限を90 kmとした.すべり欠損と地表面変位を結びつけるグリーン関数の計算には二層粘弾性構造における変形(Fukahata & Matsu’ura, 2006)を仮定し,弾性応答のみを考慮した弾性モデルと粘弾性応答を考慮した粘弾性モデルの2種類のすべり欠損速度分布を推定した.なお,粘弾性モデルにおける最適なリソスフェアの厚さは、WAICにより70 kmと決定した.
結果として,弾性モデル・粘弾性モデルともに,南セグメントでは海溝近傍から深さ60 km程度まで強い固着が存在していることが示され,Johnson and Satake (1999)の1952年地震時大すべり域では強いすべり欠損が生じていたと考えられる. なお,回復テスト(Recovery Test)の結果,本手法では深さ15–60 kmの固着は解像できるものの,海溝近傍(15 km以浅)やセグメント境界での固着状態は特定が困難であることが示された.しかし,南セグメントの深部での固着の存在は十分に解像できていると考えられる.
今回の推定結果に基づくと,地震間固着の観点からはJohnson and Satake (1999)で推定された深部で大すべりを起こすというモデルは許容可能であり,1952年イベントと2005 年イベントの主破壊域が相補的なものである可能性を間接的に支持している.すなわち,2025 年イベントで1952年のイベントで破壊された力学的固着域を部分的に再び破壊した可能性はあるが,それとは独立して1952年のイベントでは破壊されなかった別の力学的固着域を2025年イベントは破壊したと考えられる.もし仮に,1952年のイベントと2025 年イベントの主破壊域が相補的であった場合,カムチャッカ南部セグメントは,一つの大きなアスペリティではなく,複数の力学的固着パッチが存在することになる.そのため,それらが独立に破壊される場合だけではなく,同時に破壊され1952年のMw9.0を超える超巨大地震が発生する可能性も考えられる.
しかし,1952年のイベントと2025 年イベントの主破壊域の相補性についての議論は,それぞれの地震の主破壊域を様々な観測データから再検討する必要があり,現時点で結論づけることは難しい.また,この議論の促進には地震時の変動だけではなく,余効変動から求められる余効すべりも重要となると考えられる.例えば,1952年のイベントの力学的固着域が2025年の主破壊域のdowndip側にある場合,2025年主破壊域のdowndip側の余効すべりは顕著にならないことが期待される.こうした地震間・地震時・地震後の変動から総合的にカムチャッカ南セグメントでのプレート境界の空間特性が明らかになることを期待したい.

