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[S25-08]The 2025 Kamchatka Earthquake: Anomalously short Recurrence Interval and its Implication
*Yukitoshi FUKAHATA1, Yuji Yagi2, Ryo Okuwaki2, Tomohiro Takagawa3, Shinji Toda4 (1. Kyoto University, 2. University of Tsukuba, 3. Port and Airport Research Institute, 4. Tohoku University)
2025年7月30日にカムチャツカ半島沖でM9に迫る地震が発生した.PDTI法(Potency Density Tensor Inversion; Shimizu et al. 2020)を用いて遠地実体波を解析したところ,最大すべり量がおよそ12 mに達し,9 mを越えるすべり域もカムチャッカ半島南部から千島列島北部沖の主として浅部の広範囲に広がっていることが分かった.同地域では, 1952年に今回の地震とほぼ同じ規模(M8.8~9.0)の巨大地震が発生している.しかしながら,この地域のプレート収束速度は約8cm/yrで,前回の地震から今回の地震発生までの期間(73年間)のプレート収束量は高々約6mに過ぎない.つまり,大滑り域における今回の地震の滑り量は,1952年以降のプレート境界における滑り遅れ量よりも明らかに大きい. この滑り量の不整合を説明するために,まず,前回の地震と今回の地震とで滑り分布が相補的,つまり,前回の大地震時にあまり滑らなかった領域が今回大きく滑ったということが考えられる.実際,Johnson and Satake (1999)は,津波データの解析から,1952年の地震では,比較的に深い領域が滑ったと主張しており,本研究で推定された大滑り域の位置と大きく異なる. しかし,MacInnes et al. (2010)によると,近地の津波の遡上高を説明するためには,2025年の地震と同様に,破壊域南部の浅い領域がむしろ大きく滑っている必要がある.更に,遠地においても,1952年と2025年の津波波形は実は良く似ている.つまりは,1952年の地震と2025年の地震の滑り分布は決して相補的ではなく,むしろ基本的に似ていると考えられる.その場合,前述の2025年地震の滑り量と1952年以降の滑り遅れの蓄積量との食い違いを,どのように考えるべきだろうか. 地震は一般に蓄積された応力を解放する現象であり,解放される応力は通常蓄積された応力の一部に過ぎない.プレート境界地震について言えば,それはプレート境界に蓄積された滑り遅れを解放する現象であり(Reid 1910),解放されるすべり遅れは通常は蓄積されたものの一部に過ぎない.そこで,今回の大地震は,前回の地震以降で蓄積された約6mの滑り遅れに加えて,前回の地震後にも残っていたすべり遅れ分についても一緒に滑ったと考えれば辻褄が合う. 今回の地震のように,通常期待されるよりも著しく短い時間間隔で地震が繰り返した例は,実はこれまでにいくつも報告されている.例えば,茨城県北部では,同一の断層でM6クラスの地震がわずか5.8年で繰り返したことが報告されている(Fukushima et al. 2018).2011年東北沖地震後で余効変動の活発な時期であるとしても,活断層地震の再来間隔が約1000年かそれ以上であるのと比較して,圧倒的に短い.2014年長野県北部神城地震についても,同様の地震が1714年に起きていたとされ(Takahashi and Toda 2021),これまた活断層で発生する地震としては異様に発生間隔が短い. さらには,地震発生の時系列が良く知られている南海トラフ地震やParkfield 地震においても,地震の周期性は良くない.南海トラフ地震は,最短の繰り返し間隔は90年である一方, 200年以上間隔が開いたこともある.Parkfield地震についても,大きさはほぼ一定だが,発生間隔は12年〜38年と3倍以上にばらついている.さらにまた,サンゴ礁やトレンチ調査等に基づく古地震の研究でも,地震の発生が決して周期的ではなく,しばしば間隔が大きく開いたり或いはクラスタしたりすることが指摘されてきた.これらの現象は,断層間の相互作用の要因が大きいとも考えられてきたが,今回のカムチャツカ地震の場合には,隣接領域で近年大地震も発生しておらず,その短い再来間隔の主因とすることは難しい.そのため,先に説明したような滑り遅れ量の大きな変化が基本的役割を果たしていると考えられる. そして,このカムチャッカの1952年と2025年の地震のように,もしも地震の開始時や終了時における滑り遅れ量が,地震のたびごとに大きく変化してしまうものだとしたら,time predictable model も slip predictable model (Shimazaki and Nakata1980)も明らかに当てはまらない.そういった謂わば不都合な真実を認めた上で,地震の長期予測に取り組んでいく必要があるだろう.
