Presentation Information
[S25-12]Directionality of Atmospheric Lamb Waves and Fault Characteristics of Megathrust Earthquakes: 2025 Kamchatka and 2011 Tohoku Earthquakes
*Kensuke Nakajima1 (1. Faculty of Science, Kyushu University)
1. はじめに
2011年東北地方太平洋沖地震(Mw = 9.0, 以下「東北地震」)は顕著な大気ラム波を励起し、これに伴う気圧変動がカムチャッカ半島でも観測された(例えば Arai ほか 2011,GRL)。一方、2025年カムチャッカ沖地震(Mw=8.8, 以下「カムチャッカ地震」)の際には、日本国内での大気ラム波の明確な観測は無いようだ。この二つのイベントは共に大規模な津波を伴った海溝型巨大地震であり震源と観測点間の距離も同等であるので、地震の規模(Mw)の差異を考慮しても、ラム波観測の有無には説明を要すると思われる。両地震の注目すべき相違点として、 東北地震では顕著な断層運動が海底直下まで及んだのに対して(例えばKoketsuほか,2011,EPSL), カムチャッカ 地震では断層運動は深さ20km程度以上の比較的深い部分で生じたことが挙げられる(USGS, 速報Ver.3)。 本発表では、このような点を含めて、震源断層の特性が大気ラム波の励起特性、特に、遠方に伝播するラム波 の指向性をどのように支配するかについて理論的に考察する。
2. 手法
中島(JpGU, 2017, 2020 ほか)は、地震、津波を想定した大気下端の運動に対する圧縮性大気の線形応答を数値的に解き、大気ラム波の振幅が断層運動あるいは津波に伴う大気下端の速度や時定数ではなく鉛直変位と直接関係すること、および、励起後のラム波伝播が水平2次元の波動方程式で良く表現できることを 示した。ここでは、同様の水平2次元波動方程式をスペクトル法で数値的に解いてラム波の伝播を調べる。 励起源となる鉛直変位は震源断層の特性を様々に想定してOkada (1985,1992)の定式化に基づいて計算する。
3. 予備的結果
カムチャッカ地震の断層特性を簡略化したものとして、深さ35km、長さ200km、幅 60km、傾斜 20度、滑り10m の断層が10sで動くことを基準として想定した上で、そのパラメタを変更しつつラム波励起特性への影響を調 べた。予備的な結果は以下の通りである。
3.1 励起されるラム波の指向性
ラム波は断層の走向に直交する方向に極めて強い指向性をもって射出され、遠方での ラム波の振幅は方向によって10倍程度の大小があった。指向性の程度は断層運動による鉛直変位の水平分布の 縦横比が大きいほど顕著である。逆に言えば、顕著なアスペリティに伴う局在した変位があれば、指向性は 弱くなると予想される。
3.2 断層運動の継続時間の影響
カムチャッカ地震に準じて200s程度の時定数で断層を動かした場合、海溝に垂直な向きに射出されるラム波の 振幅は 2/3 程度に減少したが、海溝に沿った方向での振幅はやや増大した。
3.3 震源の深さへの依存性
震源が浅く断層が地表面あるいは海底に露出する場合、上盤の変位が極めて大きくなることが知られている。 実際、これに対応して、震源を深さ10km程度まで浅くすると、海底の鉛直変位、ひいては励起されるラム波 の振幅が2倍程度大きくなった。
3.4 断層の角度の影響
垂直な方向に射出される振幅はほとんど影響を受けないのに対して、海溝に沿った向きに射出されるラム波の振幅は断層面が低角になるほど減少する。特に、理想的な場合として断層面が水平である場合に振幅が完全 にゼロとなる。これは、海溝側の隆起と陸地側の沈降の構造が完全に対称的となり、cross trench 方向に 積分した鉛直変位(これが海溝沿い方向のラム波を励起する)がなくなるためであり、これは指向性を生じる新たな要素である。
4. おわりに
以上のうち、どの要素がどの程度、東北地震とカムチャッカ地震のラム波の観測状況に影響したか、その後の情報も含めて当日に議論したい。
2011年東北地方太平洋沖地震(Mw = 9.0, 以下「東北地震」)は顕著な大気ラム波を励起し、これに伴う気圧変動がカムチャッカ半島でも観測された(例えば Arai ほか 2011,GRL)。一方、2025年カムチャッカ沖地震(Mw=8.8, 以下「カムチャッカ地震」)の際には、日本国内での大気ラム波の明確な観測は無いようだ。この二つのイベントは共に大規模な津波を伴った海溝型巨大地震であり震源と観測点間の距離も同等であるので、地震の規模(Mw)の差異を考慮しても、ラム波観測の有無には説明を要すると思われる。両地震の注目すべき相違点として、 東北地震では顕著な断層運動が海底直下まで及んだのに対して(例えばKoketsuほか,2011,EPSL), カムチャッカ 地震では断層運動は深さ20km程度以上の比較的深い部分で生じたことが挙げられる(USGS, 速報Ver.3)。 本発表では、このような点を含めて、震源断層の特性が大気ラム波の励起特性、特に、遠方に伝播するラム波 の指向性をどのように支配するかについて理論的に考察する。
2. 手法
中島(JpGU, 2017, 2020 ほか)は、地震、津波を想定した大気下端の運動に対する圧縮性大気の線形応答を数値的に解き、大気ラム波の振幅が断層運動あるいは津波に伴う大気下端の速度や時定数ではなく鉛直変位と直接関係すること、および、励起後のラム波伝播が水平2次元の波動方程式で良く表現できることを 示した。ここでは、同様の水平2次元波動方程式をスペクトル法で数値的に解いてラム波の伝播を調べる。 励起源となる鉛直変位は震源断層の特性を様々に想定してOkada (1985,1992)の定式化に基づいて計算する。
3. 予備的結果
カムチャッカ地震の断層特性を簡略化したものとして、深さ35km、長さ200km、幅 60km、傾斜 20度、滑り10m の断層が10sで動くことを基準として想定した上で、そのパラメタを変更しつつラム波励起特性への影響を調 べた。予備的な結果は以下の通りである。
3.1 励起されるラム波の指向性
ラム波は断層の走向に直交する方向に極めて強い指向性をもって射出され、遠方での ラム波の振幅は方向によって10倍程度の大小があった。指向性の程度は断層運動による鉛直変位の水平分布の 縦横比が大きいほど顕著である。逆に言えば、顕著なアスペリティに伴う局在した変位があれば、指向性は 弱くなると予想される。
3.2 断層運動の継続時間の影響
カムチャッカ地震に準じて200s程度の時定数で断層を動かした場合、海溝に垂直な向きに射出されるラム波の 振幅は 2/3 程度に減少したが、海溝に沿った方向での振幅はやや増大した。
3.3 震源の深さへの依存性
震源が浅く断層が地表面あるいは海底に露出する場合、上盤の変位が極めて大きくなることが知られている。 実際、これに対応して、震源を深さ10km程度まで浅くすると、海底の鉛直変位、ひいては励起されるラム波 の振幅が2倍程度大きくなった。
3.4 断層の角度の影響
垂直な方向に射出される振幅はほとんど影響を受けないのに対して、海溝に沿った向きに射出されるラム波の振幅は断層面が低角になるほど減少する。特に、理想的な場合として断層面が水平である場合に振幅が完全 にゼロとなる。これは、海溝側の隆起と陸地側の沈降の構造が完全に対称的となり、cross trench 方向に 積分した鉛直変位(これが海溝沿い方向のラム波を励起する)がなくなるためであり、これは指向性を生じる新たな要素である。
4. おわりに
以上のうち、どの要素がどの程度、東北地震とカムチャッカ地震のラム波の観測状況に影響したか、その後の情報も含めて当日に議論したい。
