講演情報

[35]寧波旧子城における行政中枢空間の近代的再編-形態的慣性と交渉的適応に着目して

○JIN PANPAN1、中島 直人1 (1. 東京大学)

キーワード:

形態的慣性、旧子城、交渉的適応、寧波

中国近代都市の空間変容に関する研究は、外来資本による断絶的再編を論じる条約港研究を中心に蓄積されてきた。これに対し、府治や県治のような行政中枢が近代化の圧力にいかに応答したかは、なお十分に解明されていない。本研究は、寧波旧子城を対象に、史料にもとづく微視的な形態復元とスペースシンタックスによる定量分析を組み合わせ、1844年、1912年、1936年の三時点における街路網、街区構造、および旧官署の転用を跡づける。分析の結果、旧行政中枢の近代化は、既存の空間骨格を保持しながら機能を漸進的に置換していく「交渉的適応」として捉えられることを明らかにする。すなわち、街路と街区の構造は概ね維持され、水路と街路は選択的に調整され、大規模な官有街区は学校や公園などの公共施設へと転用された。本稿は、行政中枢の近代化を全面的な置換ではなく選択的な空間再編として位置づけ、条約港以外の中国近代都市を捉えるための分析枠組みを提示する。