特別講演
「作業療法実践と研究」

五百川 和明氏
福島県立医科大学保健科学部作業療法学科
2021年 福島県立医科大学保健科学部作業療法学科 教授,学科長
日々の作業療法の実践では様々な疑問が生じる.とりわけ,目の前の対象者にはどのような作業療法が有効なのかについては,多くの作業療法士が抱く疑問であろう.この疑問を解決する方法としては,①先輩や同僚等に相談する,②関連する診療(作業療法)ガイドラインや書籍,論文等を探して読む,③学会や研修会,講習会に参加し情報を得る,といったことが挙げられる.これらで得た知見をもとに,より良い介入を検討し,実践していく.このプロセスを繰り返し経験することを通して,徐々に治療効果の高い作業療法実践が可能となっていくと思われる.
臨床疑問の解決の一つに研究がある.研究とは現状分からないことを調べ,検証し,明らかにすることである.研究を行うには高いハードルがあると感じるかもしれないが,実は,日々の臨床疑問解決のプロセスが研究の一部である.即ち,臨床疑問を解決するための検討により,「対象者におけるAの課題に対してはBよりCの介入の方は効果があるのでは...」「対象者の症候DにはEとFが関係しているのではないか...」といった考えが創出される場合がある.そして,その後の臨床実践で得られた対象者の変化等から,その考えの確からしさを検討するといった具合である.つまり,実は作業療法の臨床実践と研究は非常に近い関係にある.
しかしながら,やはり研究を行うにはルールと一定のプロセスが求められる.当然のことではあるが,研究対象者の権利は最大限守らなければならない.また,研究に関連する人たちの利益のためだけの研究は避けなければならない.研究プロセスでは,臨床上の疑問を研究疑問に仕立て,文献をレビューし,研究仮説の検証のための研究デザインと方法を設定する必要がある.そして,研究実施のための計画書を作成し,倫理上の問題がないかの審査を受け,承認を得る.ここでようやく実質的な研究を実施することが出来る.
研究はその結果を公表することが重要である.結果を公表することで,同じ疑問を抱いている者に有益な情報をもたらすことができる.また,研究は他者の意見や批判を受けることで,さらなる発展がある.研究結果を公表せず,他者の目に触れることがなければ,それは単なる自己満足であり,結果として対象者へのより良い作業療法実践に結びつかない可能性が高い.公表の方法として学会発表がある.福島県作業療法学会のみならず,東北作業療法学会,そして日本作業療法学会等,作業療法士には多くの発表の機会があり,福島県作業療法士会会員も積極的に取り組まれている.この学会発表は大変価値があることではあるが,このレベルでは学術的には不十分である.即ち,論文化が求められる.研究では他者の批判や審査を受け,研究方法と結果を精査し,得られた知見を注意深く検討し,論文として世の中に公表することが重要である.福島県作業療法士会は今年度,学術誌「福島県作業療法学」を創刊した.本学術誌では査読という審査で採択された場合に論文が公表される.会員諸氏には日々の作業療法実践での疑問の解決の一つに研究を位置付け,対象者への作業療法実践の向上を目的にした研究成果の公表を期待している.
配信期間:2021年10月24日(日)から11月7日(日)11月14日(日)
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