講演情報
[P-064]高齢頭頸部癌患者の放射線治療における口腔健康管理の現状と課題
○橋本 富美1、柴田 翔吾1,2、遠藤 麻衣1 (1. 地方独立行政法人 神奈川県立がんセンター、2. 鶴見大学口腔リハビリテーション補綴学講座)
【目的】我が国の死因別疾患第1位は悪性新生物(癌)であり,近年の高齢者人口の増加に伴い悪罹患者の高齢化も顕著である.加齢に伴う心身,臓器機能,予備力低下,社会的要素も考慮し,放射線治療を行う症例も増加している.当科にて周術期等口腔機能管理を行った頭頸部放射線治療患者は42%を占めており,特に免疫力の低下する高齢者においては治療完遂のために,治療に関連して生じる口腔有害事象のための口腔健康管理が重要である.そこで頭頸部放射線治療を受けた高齢者の歯科衛生士が行った口腔健康管理の現状と課題について報告する【方法】2024年4月~12月に頭頸部放射線治療を行い,歯科衛生士が周術期等口腔機能管理の依頼を受けた226 名のうち,65 歳以上を対象とし,患者背景,併存疾患,口腔内状態,口腔有害事象について診療録をもとに後ろ向き調査を行った.【結果と考察】平均年齢75歳(65~91歳),男性40名,女性11名.化学放射線28例,放射線単独14例,緩和放射線3例,重粒子線6例.原発巣は,中咽頭10名,声門7名,下咽頭6名,上咽頭4名,喉頭・耳下腺・歯肉・上顎洞・鼻腔3名,顎下腺・舌・原発不明2名.併存疾患は,高血圧症26名,糖尿病12名,脳血管疾患9名,心機能疾患9名,呼吸器疾患3名.歯科定期健診実施者20名,重度歯周炎(PPD6㎜以上)25名と口腔衛生状態不良であった.散乱線防止等でマウスピースは28名で,照射部位や照射量によって必要となった.Gr2(CTCAEv3.0)以上の口腔粘膜炎18名,口腔乾燥39名,味覚障害15名で85%が口腔有害事象の出現により,経口摂取が困難となり,QOLが低下に繋がった.急性期有害事象はQOLを低下させるだけでなく疼痛や不安が継続することにより治療意欲低下にも繋がる.治療を遂行する上で適切な口腔衛生指導や疼痛コントロールを歯科医師に依頼すること,信頼関係を構築していくことが重要であった.歯科衛生士が加齢による身体・認知機能の低下,依存疾患や社会的背景に配慮し,放射線治療前より継続的に口腔健康管理を行ったことが,治療完遂の一助のなったのではないかと考える.頭頸部放射線後の晩期口腔有害事象の早期発見と予防のため,継続的な口腔健康管理が必要となる.そのため,地域歯科医院との連携の強化は今後の課題である. (COI開示:なし)(倫理審査対象外)