講演情報

[P-066]調理の頻度と自立喪失の関係における性差について:LEDO 研究

○清水 潤1、富永 一道1,2、齋藤 寿章1,2、前田 憲邦1、井上 幸夫1、矢野 彰三2,3、安藤 雄一4 (1. 一般社団法人島根県歯科医師会、2. 島根大学地域包括ケア教育研究センター、3. 島根大学医学部臨床検査医学講座、4. 国立保健医療科学院)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
 後期高齢者における調理の頻度と健康寿命の関係については,十分に解明されておらず,性差に関する情報も限られている。そこで,本研究の目的は,島根県後期高齢者歯科口腔健康診査(以下LEDO健診)受診者を対象として,調理の頻度と自立喪失の関係を男女別に明らかにすることとした。
【方法】
 本研究では,R1~R3年にLEDO健診を受診した20679名から医療・介護保険情報より自立喪失に関するデータを統合した12884名(男性5698人,平均年齢78.80歳,標準偏差±2.94歳)を分析対象とした。アウトカムを自立喪失(要介護2以上及び介護認定前の死亡)と定義した。調理の頻度(しない,時々,毎日)は,質問紙によって調査した。男女別に調理の頻度に対して,基本属性,口腔機能,既往歴のクロス集計を行った。主要解析では,自立喪失を目的変数として,調理の頻度3群(しない,時々,毎日;参照群)を投入したCOX比例ハザードモデルを実施して,ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を計算した。共変量は,男女別にクロス集計で有意だった変数をもとにModel1;調整なし,Model2;基本属性,Model3;基本属性,口腔機能,既往歴を調整した。
【結果と考察】
 自立喪失の発生割合は男性339/5698(5.95%),女性306/7186(4.26%)であった。平均観察期間はそれぞれ21.05±9.89か月,21.06±9.96か月であった。クロス集計で有意だった変数は,男性で年齢,高血圧,パーキンソン病,アルツハイマー病だった。女性では年齢,歯数,客観的咀嚼能力,主観的咀嚼能力,連続三回嚥下積算時間,高血圧,糖尿病,脳血管障害,虚血性心疾患,腎不全,関節症,脊椎障害,骨折,骨粗鬆症,パーキンソン病,アルツハイマー病,その他神経系,うつ病,統合失調症,肺炎,誤嚥性肺炎,低栄養,貧血,失禁,多剤内服薬など多くの疾患や状態と有意に関係していた。主要解析の結果,男性ではModel3で自立喪失との有意な関連が確認されず,女性では,“調理しない”; 3.25 ( 2.33-4.54),“時々調理”;2.50 (1.89-3.32)と関連していた。女性において調理の頻度が少ないことが,自立喪失の危険因子となっていた。
(COI:開示なし)
(島根大学医学部医学研究倫理委員会承認番号20220723-1)