講演情報
[P-072]バーニングマウス症候群における痛みの部位差への注目
○唐木 純一1、遠藤 眞美2、久保田 有香3、久保田 潤平1、多田 葉子1、柿木 保明1 (1. 九州歯科大学、2. 日本大学松戸歯学部障害者歯科学講座、3. アリーデンタルクリニック)
【目的】
バーニングマウス症候群(以下,BMS)は口腔内に異常所見を認めないにも関わらず,持続的な弱い痛みを特徴とする疾患であり,病因は解明されていない。本研究では舌に発症したBMSに焦点を当て,痛みの生じた部位に着目し関連要因を検討したので報告する。
【方法】
対象は九州歯科大学附属病院口腔環境科を受診した初診患者とした。受診時に回答する自記式質問紙から,年齢,性別,全身疾患,痛みを自覚している舌の部位(舌尖部,舌辺縁,舌中央,舌奥),口腔乾燥感,味覚障害などの口腔内症状,義歯の使用状態,全身疾患,服用薬剤の結果を抽出した。統計解析はSPSS28.0を用い,χ二乗検定ならびにt検定を用いた。p<0.05を有意とした。
【結果と考察】
対象者は922名で,平均年齢は66.2±13.9歳,男性216人,女性706人であった。舌の痛みを自覚している部位別の延べ人数は,舌尖部430人,舌辺縁298人,舌中央232人,舌奥112人であった。舌尖部では,年齢,性別,口腔内違和感,精神疾患,睡眠薬の服用に有意差を認めた。舌辺縁では,性別,睡眠時間,服用薬剤数,貧血,骨粗鬆症治療薬,鎮痛薬,下剤および睡眠薬の服用,舌中央では,睡眠時間,味覚異常,消化器官用薬,下剤および睡眠薬の服用,舌奥では,服用薬剤数,口腔内違和感,耳鼻科疾患,睡眠薬および抗うつ薬の服用に有意差を認めた。有意差を認めたすべての部位において痛みを訴えるのは女性が多かった。このうち,舌尖の痛みと精神疾患と,舌辺縁および舌中央の痛みと睡眠時間が負の関連を示し,他の項目は正の関連を示した。BMSの原因は心因的な要因が強いといわれていたが,本研究で舌尖部に痛みを感じている場合は精神疾患患者と負の関連を認め,精神疾患患者の方が痛みのないものが多かった。睡眠薬の服用はすべての部位との関連を認めた。特に,舌辺縁,舌中央の痛みについては睡眠時間との関連もみられた。BMS患者が対照群と比較して気分障害や睡眠の質が不良であるということは報告されているが(Adamo et al. 2017),痛みを自覚している部位によっては関連性が異なる可能性が示唆された。本研究結果から,BMSは部位によって要因が異なることが示唆された。BMSに関する報告は部位差を考慮されているものはほとんどないため,痛む部位を考慮に入れ,さらなる検討が必要であると考える。
【参考文献】
Adamo D, Sardella A, et al. 2017. The association between burning mouth syndrome and sleep disturbance: a case-control multicentre study. Oral Dis. 24(4):638–649.
九州歯科大学倫理審査委員会承認番号11-10
(COI 開示:なし)
バーニングマウス症候群(以下,BMS)は口腔内に異常所見を認めないにも関わらず,持続的な弱い痛みを特徴とする疾患であり,病因は解明されていない。本研究では舌に発症したBMSに焦点を当て,痛みの生じた部位に着目し関連要因を検討したので報告する。
【方法】
対象は九州歯科大学附属病院口腔環境科を受診した初診患者とした。受診時に回答する自記式質問紙から,年齢,性別,全身疾患,痛みを自覚している舌の部位(舌尖部,舌辺縁,舌中央,舌奥),口腔乾燥感,味覚障害などの口腔内症状,義歯の使用状態,全身疾患,服用薬剤の結果を抽出した。統計解析はSPSS28.0を用い,χ二乗検定ならびにt検定を用いた。p<0.05を有意とした。
【結果と考察】
対象者は922名で,平均年齢は66.2±13.9歳,男性216人,女性706人であった。舌の痛みを自覚している部位別の延べ人数は,舌尖部430人,舌辺縁298人,舌中央232人,舌奥112人であった。舌尖部では,年齢,性別,口腔内違和感,精神疾患,睡眠薬の服用に有意差を認めた。舌辺縁では,性別,睡眠時間,服用薬剤数,貧血,骨粗鬆症治療薬,鎮痛薬,下剤および睡眠薬の服用,舌中央では,睡眠時間,味覚異常,消化器官用薬,下剤および睡眠薬の服用,舌奥では,服用薬剤数,口腔内違和感,耳鼻科疾患,睡眠薬および抗うつ薬の服用に有意差を認めた。有意差を認めたすべての部位において痛みを訴えるのは女性が多かった。このうち,舌尖の痛みと精神疾患と,舌辺縁および舌中央の痛みと睡眠時間が負の関連を示し,他の項目は正の関連を示した。BMSの原因は心因的な要因が強いといわれていたが,本研究で舌尖部に痛みを感じている場合は精神疾患患者と負の関連を認め,精神疾患患者の方が痛みのないものが多かった。睡眠薬の服用はすべての部位との関連を認めた。特に,舌辺縁,舌中央の痛みについては睡眠時間との関連もみられた。BMS患者が対照群と比較して気分障害や睡眠の質が不良であるということは報告されているが(Adamo et al. 2017),痛みを自覚している部位によっては関連性が異なる可能性が示唆された。本研究結果から,BMSは部位によって要因が異なることが示唆された。BMSに関する報告は部位差を考慮されているものはほとんどないため,痛む部位を考慮に入れ,さらなる検討が必要であると考える。
【参考文献】
Adamo D, Sardella A, et al. 2017. The association between burning mouth syndrome and sleep disturbance: a case-control multicentre study. Oral Dis. 24(4):638–649.
九州歯科大学倫理審査委員会承認番号11-10
(COI 開示:なし)