講演情報

[P-074]高齢者に対する口腔衛生状態の評価に関連する因子の検討(第2報)

○藤丸 果乃1、今里 僚介1、煙山 修平1、末永 智美2,3、金本 路2、植木 沢美2、吉野 夕香4、會田 英紀1 (1. 北海道医療大学歯学部 高齢者・有病者歯科学分野、2. 北海道医療大学在宅歯科診療所、3. 北海道医療大学病院歯科衛生部、4. 北海道医療大学病院医療相談・地域連携室)
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【目的】
 口腔衛生状態の悪化および嚥下機能に影響を与える基礎疾患の有無は誤嚥性肺炎のリスクとなることが知られている。簡易的に口腔衛生状態を評価できるTCI(Tongue Coating Index)は舌背上の微生物数と相関があることが報告されている。しかしながら,口腔乾燥および全身疾患を呈する高齢者では,TCIによる評価と微生物数との結果に乖離が認められることを本学会第35回学術大会で報告した。今回は、さらに症例数を増やして口腔乾燥に加えて基礎疾患がTCIと微生物数の相関に与える影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】
 施設高齢者35名(平均年齢85±6.38歳:男女比12/23名)を対象とした。舌背上の微生物数は細菌カウンタを用いて計測し,口腔機能低下症の基準値である3.162×10^06CFU /mL以上を口腔衛生状態不良と判断した。また,口腔乾燥は口腔水分計ムーカスを用いて評価した。さらに今回は,基礎疾患や既往歴の有無に関しても検討項目に加えた。

【結果と考察】
 TCIでは35名中28名が口腔衛生状態不良と判定され,細菌カウンタでは35名中26名が口腔衛生状態不良と判定された。一方,口腔水分計では35名中24名が口腔乾燥と判定された。また、TCIと細菌カウンタとの散布図を用いて,その相関係数を求めたところ,R²=0.25075となり,TCIの値と微生物数には弱い正の相関が認められた。TCIにより口腔衛生状態不良と判定された28名中5名が,細菌カウンタでは口腔衛生状態不良には該当しなかった。判定結果が一致しなかった5名のうち4名に口腔乾燥が認められた。 また,細菌カウンタにより口腔衛生状態不良と判定された26名中3名が,TCIでは口腔衛生状態不良には該当しなかった。判定結果が一致しなかった3名の中には口腔乾燥を有するものは見られなかった。さらに,TCIと細菌カウンタの結果が乖離していた8名のうち6名に認知症が認められたことから,認知機能の低下がTCIと微生物数の相関に何かしらの影響を与えている可能性が示唆された。

(COI開示:なし)(北海道医療大学予防医療科学センター倫理委員会 倫理審査承認番号第2023_10)