講演情報

[P-076]地域在宅療養患者における歯科衛生士の居宅療養管理指導の調査報告

○金子 信子1 (1. 宝塚医療大学保健医療学部口腔保健学科)
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【緒言】日本の高齢化率は2024年で29.3%となり,今後も上昇する.自宅にて療養している患者も増え,それに伴い歯科衛生士による居宅療養管理指導も年々増加している.歯科衛生士の居宅療養管理指導は,口腔健康管理が主で,全身状態の把握,介護者に対する指導・支援,栄養指導等であり,多くの報告がなされている.しかしながら,これらの報告は症例報告が多く,歯科診療所としての報告は少ない.さらに,訪問先は高齢者施設や病院といった生活や療養上の制限がある場合が多く,患者が住み慣れた自宅に訪問した報告は限られている.歯科診療所が実施した歯科訪問診療において,自宅に訪問した歯科衛生士の居宅療養管理指導内容を振り返ることにより,自宅で療養している患者が歯科衛生士に期待することは何かを明らかにできる可能性があると考えた.そこで今回は,自宅で過ごす患者が歯科衛生士に求めている事柄を明らかにすることを目的とし,大阪市内の歯科診療所における居宅療養管理指導を調査した.【対象および調査内容】対象は,2019年6月~2023年3月の期間に歯科訪問診療後に歯科医師の指示によって居宅療養管理指導を実施した自宅療養中の患者46名(平均年齢78.4(13.3)歳)とした.調査項目は診療記録をもとに,歯科訪問診療の依頼内容,管理指導期間,経口摂取の希望が散見していたため摂取状況レベルFILS(Food Intake LEVEL Scale)とレベル別の具体的実施内容とした.【結果】歯科訪問診療の主な依頼内容は,食支援39名,口腔健康管理6名,口腔乾燥症の対応1名であった.管理指導期間の中央値は257.0(四分位範囲:81.5-689.8)日であった.FILS1~3(非経口摂取)は19名(1;16名,2;0名,3;3名)で,全員が経口摂取を希望していた.患者の希望に沿い,歯科医師が嚥下検査・評価を実施したのち,経口摂取を可能にするための支援を継続して行った.FILS4~6(経口摂取と代替栄養)は5名(4;0名,5;2名,6;3名)で,安全に経口摂取を維持するための提案を行った.FILS7~10(経口摂取のみ)は22名(7;3名,8;7名,9;3名,10;9名)で,食事介助や食形態の相談と対応を行った.【考察】自宅で療養している患者においては,病院や施設と比べて食事の制限が低く,患者の病態や希望に併せた食形態や食事介助の長期にわたる支援が歯科衛生士に求められていると考えられた.
(COI 開示:なし)
(日本老年歯科医学会倫理審査委員会 承認番号:2023-3)